名曲914 「踊ろよベイビー1962」【桑田佳祐】

ーー頭空っぽにして歌いたいロックンロールーー

 動画がない。それは悲しみの一語に尽きるが、ぜひともSpotifyで検索していただきたいなと思っている。

 この曲は取り上げづらかった。なぜかというと動画がないからでなく、私の楽しくも苦い思い出が蘇るからである。社会人になってすぐの年、場所はカラオケだった。

 当時お付き合いしていた方とのカラオケで、私が最後に入れた曲がそれだった。私はこれが持ち歌のひとつで、今までの歌った疲労をすべてこれに込めて、がなり声でちょっと桑田佳祐っぽく歌うのが好きだった。

 すると今までの声とは違い、テクニックもへったくれもないその様子に、相手は笑ってくれたのだ。そしてもしかしたらこの曲を知っていたのかもしれないのだが「は~いい曲」と言ってくれたことを覚えている。

 カラオケにはいかにも素人(俳優なんだろうけど)によるMVが流れる。いつもはまったく気にしないし覚えることすらないのだが、この曲のそれは非常によかった。

 まさに1962年チックな古い味のある構成に、それでいて味のある配役者が、こうレコードとかフラフープとかで盛り上がってダンスしているのである。これは一層熱量を上げた。数少ない傑作MVではないかと密かに踏んでいる。

 メロディーと構成(短めなのだ)、にくい表現力を持ち合わせている歌詞の点で文句なしの名曲である。桑田佳祐の声質も非常にマッチしていて、これ以上の適任はいないだろう。

 いまはもうそのお付き合いしていた方とは離れてしまった。それ以来、ほんのり悲しみを抱えながらも名曲なので歌うのである。特にカラオケでは最強ソング。ぜひとも皆さん、あの映像を見てくださいな。ジョイかダムかは忘れたので悪しからず。

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