名曲776 「あしたのジョー」【尾藤イサオ】[あしたのジョー]
ーー昭和アニソンのレベルの高さに跪くーー
【あしたのジョー OP主題歌 尾崎イサオ】
「あしたのジョー」は好きな作品である。またいつものようにひとつまみなわけであるのだが、何が私の心を引きつけたかというと、昭和時代特有の描写や放送禁止用語の羅列である。もういまじゃ放送できないだろう。ここでは割愛するが、いやまあすごいのだ。あっ、私は放送禁止用語マニアである。
主題歌はうたえモンの影響で小さい頃から楽勝で知っていた。幼稚園のころには1番をフルで歌えたくらいである。尾藤イサオの真似もよくした。歌い終わったあと「ジョーーーーー!」って叫んだり、「ジョウ……」ってつぶやいたり。ただ、そこまでが子ども時代。2番以降を知ったのは大人になってからだった。
というのも、恐らくテレビで2番以降を歌ったことがないのではなかろうかと。当時の昭和アニソンにしては長めの3分半。尺の都合もあるだろうが、歌詞にちょっと不適切気味な表現が混じっているのである。
「親のある奴は くにへ帰れ 俺とくる奴は 狼だ」
2番の出だしがこれである。ちょっと令和目線だと時代遅れ感が否めないが、これほど熱い歌詞はない。どんなスポコンの曲でも。
3番にいたっては「少年院」というワードが出てくる。これは原作に則っているから仕方がないのだが、それでも堂々と隠さず歌うのはやはり当時の時代だ。いまじゃ隠喩にされているだろう。だからこそ熱いのだが。
有名な話では「ルルル…」の部分は本来歌詞があったそうだが、尾藤イサオがど忘れして、ルルルと歌ってしまったところ、それが採用されたと。これもまた昭和だし、何よりその改変が本当に秀逸なのである。そこでどれだけ多くの男が涙を流したか。ジョーの苦しい背景が伝わるし、多くのスポーツマンにあるつらい何かを思い起こすトリガーになっているのだ。
唯一無二といってもいい究極の完成度を誇る昭和アニソンの史上最高傑作級といっていいだろう。個人的にはもっと好きな曲が多いのでそこまでの評価はしていないが、恐らく100年後もこの曲を超えるボクシングソングは出てこないと思う。尾藤イサオを起用したのもよかった。あのダミ声は水木一郎やささきいさおには出せないのである。