名曲495 「心の旅」【チューリップ】
ーーフォークといえばの代表曲。一点の曇りもない完成品ーー
【チューリップ 心の旅 1972】
フォークソングは1960年代後半から1970年代前半を中心に大流行した。私も基本的には好きだが、政治色の強いものや皮肉をうたったものは苦手である。歌を利用して自分の意見をポップに表現しようとするのはよくない。だが、それも時代を反映していた。当時の政治がらみの歴史を知ると、ぞっとする。
今回紹介するのは私が好きなほうのフォークソングである。チューリップは財津和夫で有名だが、聞いてみると「おやっ」と思った方も多いのではないか。実はまだ財津和夫はメインボーカルではなかった。代わりに姫野達也が担当している。
声の質を比べてみると、どうも姫野達也バージョンのほうがしっくりくる。甘いボイスはいかにも女性を落とせそうな威力だ。なので柔らかい。この柔らかさが心の旅の魅力であろう。一気に万人受けすることになった。
{あーだから今夜だけは 君をだいていたい あー明日の今頃は 僕は汽車の中}
これぞまさしくザ・フォーク。フォークの中のフォークというサビである。このnoteでは過去に「岬めぐり」や「東京ハッスル男」などいくつもフォークの名作(後者は違うか)を取り上げてきたが、この曲のサビを超えるものはそうそうない。
出だしからいきなりサビで始まるのも高いポイント。個人的にはこのおかげで大ヒットしたのではないかと踏んでいる。
{もしも許されるなら 眠りについた君を ポケットにつめこんで そのまま連れ去りたい}
{愛に終わりがあって 心の旅が始まる}
歌詞も地味ながらいい。メロディーを支える骨子の部分がおろそかでは名曲といえぬ。財津和夫の作詞作曲センスがとことん光る。
それにしても昭和を思い起こす内容だ。汽車もいまではほとんど走っていないし、寝台特急を利用するのは今じゃ一部のリッチな方である。当時ならではだ。今ではお金のない若者は夜行バスになるのではないか。大荷物はないだろうから……。
ちなみにこの曲は続きがあり、悲しきトレインでの曲もあるのである。それはまた来年に書くとしよう。忘れていなければ。
【今日の名歌詞】
愛に終わりがあって 心の旅が始まる