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名曲199 「サボテンの花~ひとつ屋根の下より~」【財津和夫】

ーー平成史に残る伝説のイントロと煌びやかな歌声ーー

【財津和夫:サボテンの花 「ひとつ屋根の下」主題歌】

 私のプレイリストには1軍なるものがある。選ばれし伝説の神曲群であり、なかなか更新されない言わば殿堂入りというやつである。その中からピックアップしたのがこの「サボテンの花」。高校生の頃に出会ったのだが、「青春の影」でチューリップを知り、次いで財津和夫を調べると度肝を抜かれる傑作と出会ったのである。この曲がなければチューリップを深追いしなかったかもしれない。

 ちなみに今回は「サボテンの花」ではあるが、正確にはドラマ主題歌のリメイク版を推しているので注意。原曲もいいがリメイク版はよりサウンドが充実しているように感じるのだ。

{ほんの小さな出来事に 愛は傷ついて 君は部屋をとび出した 真冬の空の下に}

 夏に風鈴が似合うように、この曲は初夏にぴったりである。美しいイントロが涼しい。しかし歌詞を見ると真冬というワードが出てくる。本来、この曲は冬の歌なのだ。

{編みかけていた手袋と 洗いかけの洗たくもの シャボンの泡がゆれていた 君の香りがゆれてた}

 淡々と情景を描く。そしてサビだ。

{絶えまなく降りそそぐ この雪のように 君を愛せばよかった 窓に降りそそぐ この雪のように 二人の愛は流れた}

 実はこの「降りそそぐ」は当初「溶けてゆく」だったらしい。しかしレコーディングで財津和夫自身が間違えて歌ったのをそのまま通されて現在の形になったようだ。あしたのジョーのようである。

 ともあれ神のサビだ。失恋の曲とはとても思えない前向きで希望のあるメロディーが美しい。

{君が育てたサボテンは 小さな花をつくった 春はもうすぐそこまで 恋は今終った}

 サボテンの花を見て、春の訪れを感じる。現代人に欠けている要素がまた美しさを表しているではないか。

{この永い冬が終るまでに 何かをみつけて生きよう 何かを信じて生きてゆこう この冬が終るまで}

 以前から書いているが、暗い歌詞+明るいメロディーが私は大好物である。この曲もまさしくその構成なのだ。ラストの締め方もいい。ラララ……と反芻する演出は遠い昔の回想が流れているのか、いつまでも忘れずにいる美しい思い出なのか。その気持ちはずっと見守り続けてきたサボテンにしかわからないのだろう。

          【今日の名歌詞】

君が育てたサボテンは 小さな花をつくった 春はもうすぐそこまで 恋は今終った


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