名曲364 「哀しみのスパイ」【小林麻美】
ーー幻想的ですらある胸打つメロディーと世界観ーー
【小林麻美 哀しみのスパイ (1984)】
世界史を勉強していると、ロシアという大国について見方が変わってくる。
ロシアは好きだ。何がいいとかは別にないのだが、ちょっとクールな感じ、触ったら火傷しそうな感じが惹かれるのかもしれない。寒い地域で雪と共存している姿を思い浮かべ、冬すらも浮かべてしまう。
そろそろ冬が近づいてきた。そこで今回は冬のロシアにまつわる曲を。1984年の曲なので同世代にはまったく通じないが、知る人ぞ知る神曲である。
{モスクワはグレイの雨 忍び寄るたそがれ 帰る国を失くすひとを 声を殺し抱きしめ}
作詞は松任谷由実。テーマはスパイだ。スパイといえばロシアを連想させる。その安直さは詩の世界で重要である。変に凝って受け手を困惑させてはいけない。
{私を知らないと云って あなたを知らないと云うわ つめたく逸らした瞳が 哀しければいい}
スパイは果たしてスパイそのものと受け取っていいのか。これも考察要因だ。これが比喩とすると非常に面白い。
作曲は玉置浩二。相変わらずメロディーメイカーとして最上位に君臨するが、特にこの曲は質が高く思える。歌詞の雰囲気とマッチし過ぎて、本当に別々に作ったのか疑問を抱くほど。ドラマチックな演出のピアノ?が好きだ。
{冬近い街の So lonely night かけよる幻 You hold me tight ひきはらう部屋を見まわし 遠い日々を探す}
ひっそりと姿を消し去るスパイのよう。この世界観はたまらない。ちなみに
{キイ・ワードはラフマニノフ}
この歌詞もいい。もちろんラフマニノフはロシアの音楽家だが、恐らく互いにとって共通の合言葉があったのだろう。そのチョイスが秀逸。これがね、ボルシチとかじゃ駄作と化す。
小林麻美はサムネイルやMVを見る限り冷酷な感じも受けたのだが役作りだとすればまさに役者でもあるなあと。歌唱力は言わずもがな。深追いする価値のある存在と感じた。
【今日の名歌詞】
私を知らないと云って あなたを知らないと云うわ つめたく逸らした瞳が 哀しければいい
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