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Ülo Krigul『Liquid Turns』|#今日の1枚

エストニアといえば合唱だ。それを証明するために『我が祖国、我が至福と歓喜』(国歌でもある)や『我が祖国、我が愛』を原点として語るのは簡単なことだけれど、それらの曲の先に広がった豊かな音世界はまだまだ存在するんだよな、と改めて認識させられる一枚。

エストニアの作曲家・Ülo Krigul(ウロ・クリグル)によるアルバム。水や湖、液体、霊、光といったおおよそ人間にはコントロールできない素材をテーマに作品を書いている。

無伴奏もあるが、特に気になるのはやはり1曲目の《Vesi ise》。エレクトロニクスと人間の声ってここまで同体化するんだな。エストニア・フィル室内合唱団の技量もさることながら、エレクトロニクスの音も合唱パートを担っているようで、全体でサウンドの浮遊的な揺らぎを描き出していておもしろい。そしてなんだかスピリチュアルな雰囲気を感じる。電気を消して聴くのはちょっと怖そう。

リリースによれば、この曲についてクリグル本人が「瞑想習慣とコンサート・ミュージックの中間領域に位置する」と語っているらしい。アコースティック×エレクトロニクスのサウンドということで、少しポスト・クラシカルのジャンルを想起したけど、そこに収まるのは少し違う気がした。やっぱり「水」って人の手でうまく操ることのできない、実存が認め難いような存在であって(個人的な意見だけど)、どこか霊感も漂わせていて。それが耽美的なものとして音楽になったんだな、という印象を持った。

以下こぼれ余談というか、疑問。国や人種、宗教によって「水」に対する価値づけってまったく違うんだろうな。日本のような島国と、ヨーロッパにある内陸国とでも、全然違いそう。エストニアは湖の国らしいけど、どういう価値観を持っているのだろうか。

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