(ライヴ体験記)07: saya配信ライヴ feat. TOKU@京都ライブスポットRAG (Jun. 13 2021)
【音と歌と音楽に酔う】
【saya × TOKU JAZZ 配信スペシャルライブ】
先月から忙しくなったせいか、生活習慣が変わってしまった。ほぼ、テレビを観ていない。観るのはお決まりのルーティーンのみ。動画もほぼ観ていない。音楽は専らお気に入りだけ。少し縮こまり気味な日々で、ほぼ100%リモート勤務のため家から出ない日が2,3日なんてザラ。仕事以外での他人との接触もほぼ無い。
お?これ、怖いな。
人間とのリアルな接点が無くなっていくということは、極端な話、自分を人間たらしめる意義も認識も承諾も要らない…もしかして私は、もう、人間では無いのかもしれない、なんて思うこともたまにあったりする。仕事で話してる相手が実は全て幻想なんでわ?なんて思ったりもする…いや、病んでるというほどのものじゃないですよ笑 いつも通りです。
そんな私に入ってきたニュース。タイミングよくsayaの配信ライヴ、しかもゲストはTOKU、そしてジャズ仕様…楽しみにしていた。しかし。
(素人風情が何言ってると思われるだろうが)今回、sayaやTOKUが何度も口にした「ジャズって敷居高く無いですよ〜」という言葉は、非常に重く感じてしまった。なぜならこの世界が、いかに矮小で凝り固まっているかを表していると思うし、彼らの努力が未だ実っていないことを物語っていたからだ。
音楽や芸術に敷居の高い・低いなど存在しない。高尚な音楽も下劣な音楽も存在しない。クラシック=高尚、荘厳とか思っている方がいるのだとしたら、ジャズ=小難しい、キザとか思っている方がいるのだとしたら、遅くはない、彼らの音に耳を傾けるべきだ。いかにそのような考え方がまさに「阿呆の一つ覚え」であるか、わかるはずだ。
sayaがジャズを基盤としていたことは周知だったし、これまでもライヴで様々な楽曲を歌っている。その中、今回のライヴは“Cheek to Cheek”、”New York, New York”という肩慣らし、音慣らしを経て、いきなりのギア・チェンジ“As Time Goes by”という展開。日本人も好きな楽曲のひとつではあるが、ここまでゆったりと、中低音を効かせ、自由に音の間を行き来し、軽やかにシンプルな愛の言葉の数々を呟くsayaは珍しい。塩入のピアノも泣けてくるフレージングの嵐。ノッケから気持ち良い。
そして、TOKUの登場。“Parttime Lover”、声を聴いて一発で分かる彼の歌声は、私には毎回ズルいとしか思えない。しかも年数を重ねて益々熟成された和製ウィスキー(ワインではない)の芳醇さを湛える…これは酔う。
しかも。間奏のフレンチホルン一音目で完全に心を持ってかれる。「カッケェ…!」と大声で言ってしまった。このジャズver.、岡沢のベース主体で進むアレンジがこれまた異常にセクシーなのに、そういう音にありがちな鼻につく感覚は皆無。ベースのアタック感や音の伸ばし方が絶妙だからか。岡沢の匠さ。続く”Moon River”ももう、月に映る静かな川の流れなぞ想像できない。月が酔っているし、月明かりが酔っているし、川面が酔っている。恍惚。
sayaが戻っての二人の競演“Fly Me to the Moon”。TOKUのリードによって大きく羽根を拡げるsaya。お互いのスキャットが色の違う感情を投げているようで非常に興味深い。次に演奏した“Ave Maria”の景色は…今まで聴いてきたものとは全く異なっていたのが衝撃で思わず聴き入る。TOKUのホルンが大地や風といった自然を表しているかのような雄大さを、sayaのヴィブラート全開な歌声が想いや願いや祈りといった人間を表しているかのよう。優雅。
このセトリの中入れてきたオリジナル”こもれび”…このスケール感は一体どうしたというのだろう?塩入のピアノが全体を包みながら、sayaの深い声が耳に届かずに脳内に沁みていく。前述のヴィブラートといい、やはり彼女の歌は確実に、次のステージに入ったことは間違いない。
濱田のドラムス・アレンジが、これまであるようでなかった”メランコリア”の新たな姿=悲しく弾む音像を描く秀逸さ。”窓のない列車”はもう今後、saya以外誰も歌えないだろう。誰かが歌おうと思えば必ずぶつかる大きな山=物語への没入感と感情の迸りは、世界観の咀嚼だけでは不十分。声の揺れも音外しも計算外、しかしそれが物語に恐ろしいくらいの隠し味となる。まさに一期一会。素晴らしい。
オリジナル“魅惑の小夜曲”を、featuring TOKUという贅沢はライヴならでは。ホルンが入るだけで曲がより優しくなり、キラキラ感が増すから不思議なものだ。そして濱田のドラムスが光る。サビのリズム展開、ハイハットとスネアの組み合わせ、エッロイ。そして本編最後は”雪の降る街を”。塩入のジャズ・アレンジが日本の郷愁をモノトーンに彩る…雪景色なのに彩るって変な表現だが、聴いてわかる、その彩り。まさに塩入の面目躍如。
アンコール”美女と野獣”での、TOKUとsayaの声が溶け合う様は非常に恍惚感溢れていて、最後を飾るに相応しいカタルシス。サウンド全体の滑らかさと清らかさが耳に心地良い形で、ライヴ終了。
この配信ライヴを観た方々に問いたい。これを観てもまだ「ジャズは敷居が高い」と言いますか?まさにバリアフリーでジャンルを行き来しながら、それぞれの音楽性を持ち寄って鳴らされる音空間に、敷居を求める必要などないと確信したはずです。
たかが音楽。音が鳴って、歌っているだけです。その表現方法が異なるってだけです。それだけなのに、こんなに無数の感情や風景や音像が表されていくーーー楽しんだ、それだけで良いってことです…なぁんて、偉そうに失礼しました。
<その他所感>
・全体的なサウンドの印象なのだが、もう少しだけリヴァーブをかけてもよかったと思いました。視聴者が会場にいる錯覚をもっと音響面でも起こしてほしいし、そのためにももう少しだけ、会場の反響音としての響きがほしいなぁと。贅沢言ってすみません。
・配信で、楽曲名を終始出し続けるのは野暮です。さらっと出してその後は消してほしいかな。
・マイクスタンドを畳む(スタンドの高さを落とす)際、勢いよくやるのでsayaさんが指を挟まないか気が気でなりませんでした…もぅ…気をつけてください〜&「ジャズの人たちはみんな冷たかった」の暴露は衝撃的でした笑
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演者の皆様、会場スタッフの皆様、配信関係者の方々、お疲れ様でした。カメラを11台も駆使しての配信ライヴは、観る度に進化している様がわかります。工夫があちらこちらに…ありがとうございました。
TOKUさん、ズルいです全てが笑 6/15火は磔磔ですか…超至近距離なライヴ、至極羨ましい。
sayaさん、7/7バースデー・ライヴ&8/22配信ライヴ、引き続き定期的なライヴ開催ですね、期待してます。
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saya x TOKU Jazz配信スペシャルライブ
(2021/06/13@京都RAG)
https://www.ragnet.co.jp/livespot/26261
Members:
saya (Vo)
塩入俊哉 (Pf) 岡沢茂 (Ba) 濱田尚哉 (Ds)
+
TOKU (Vo, Fh)
1 Cheek to Cheek
2 New York, New York
3 As Time Goes by
4 Parttime Lover*
5 Moon River*
6 Fly Me to the Moon+
7 Ave Maria+
8 こもれび
9 メランコリア
10 窓のない列車
11 魅惑の小夜曲+
12 雪の降る街を+
13 Beauty and the Beast/美女と野獣+
無印 saya (w/塩入、岡沢、濱田)
* TOKUソロ (w/塩入、岡沢、濱田)
+ 全員
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saya
YouTube “チャンネルsaya”
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塩入俊哉
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岡沢茂
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濱田尚哉
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