(音楽話)37: Carmen McRae “Everything Must Change” (1982)
【不変な普遍】
Carmen McRae “Everything Must Change” (1982)
2021年も始まり、ここでのジャズ初めをどれにしようかと悩みました。どうせならゴージャスに、でもしっとり、ムーディで穏やかな音と声が聴きたい。というわけで私の大好きなジャズ・シンガーのひとり・Carmen McRae、しかもライヴ、しかも日本での伝説的な野外フェスでの映像を。
Carmenについて多くは語りません。これは1982年、別府国際ジャズフェスティバル(又の名を「城島(キジマ)ジャズイン」)での歌唱。当時60歳(92年逝去)。曲は”Everything Must Change”、74年にRandy Crawfordがヒットさせた曲を、Carmenはアドリブを入れながら完全に自分のモノにして圧巻の歌世界を創っています。
なにより、Carmenのヴォーカリゼーションの引き出しの多さ、フェイク、ヴィブラート、言い換え、全てがカッコ良過ぎます。まさに円熟、匠の域。元々とても心地好い声質を持っている彼女ですが、その艶やかで包容力の高い声は年齢を重ねて益々深まっていたように思えます。
(最後の「ドーモォ!」もかわいい)
万物変化していくものという曲は進むにつれて、その虚しさや寂しさをも内含して嘆きのように放たれていきます。後半、我慢できなくなった若いバンドたちの迸る感情が溢れますが、その空間を完全に支配して宥めるかのように抑揚をコントロールするCarmen、まさに女帝。
そして最後には、変わらぬ想いを秘かに抱き続けた主人公の「言えない想い」が滲んできます。何事も移りゆくものだけど、不変/普遍なものだってある。「雨は雲から降ってくるし 太陽は空を照らす」ように、私の(あなたへの)想いも変わらないのよ…深読みし過ぎかもしれませんが、私にはそう聴こえます。
変わるものと変わらないものは、人それぞれ。そんな取り止めのないこと、答えのないことに、混迷する今、思いを馳せてみるのも一興かもしれません。
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なんだって 変わらなきゃならないのよ
全てそのままなんて ないんだから
誰だって 変わらなきゃならないのよ
誰もそのままなんて あり得ないんだから
若者は 歳を取るし
長年の謎は 解き明かされる
だってそれが 時間の流れなんだから
何だって誰だって 変わらずにはいられない
人生って そんな大したことは起きないわ
それはほぼ 間違いないわよ
でもね…
雨は雲から降ってくるし
太陽は空を照らす
囀る鳥は いつか飛んでいくもの
冬はやがて 春になるんだし
傷ついた心は いつかは癒える
でも決して すぐなんてことはないの
そう、なんだって変わっていくものよ
若者は 歳を取るし
謎は解き明かされる、解き明かされるの
だってそれが 時間の流れなんだから
何だって誰だって 変わってしまうものよ
人生って そんな大したことは起きないわ
それはほぼ 間違いないわよ
でもね…
雨は雲から降ってくる
太陽は空を照らしてくれる
そして囀る鳥は いつか飛んでいくんだから
だからね…
雨は雲から降ってくるし
太陽は空を照らす
(Carmen McRae “Everything Must Change” 意訳)
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