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(音楽話)33: Billy Joel “Got To Begin Again” (1971)

【諦念】

Billy Joel “Got To Begin Again” (1971)

Billy Joel。説明不要。日本でも大変人気の高いSSWですし、来日公演も何度かありました。私も1991年、東京ドーム公演を観に行きました(後日TVでも放映されました)。ライヴでは確か”さくら、さくら”を”My Life”の前に演奏してましたっけ。彼はソロ・デビューまで苦労があって(バンドに参加→売れず→ユニット結成→売れず)、デビュー前には既に鬱病になっていたあたり、とてもシンパシーを感じます。

デビュー作「Cold Spring Harbor」(1971)。このアルバム、なぜかレコーディング音源の再生速度を上げられたままマスタリング処理してリリースされ、結果ほとんど売れませんでした。そして彼は完全に人間不信に陥り鬱病が悪化したと言われています…そりゃそうですよねぇ…。その後ニューヨークからロサンゼルスに居を移して心機一転、2作目「Piano Man」(1973)が生まれ、同名曲がヒットすることになります。
(「Cold〜」は彼の経歴から一時期消されたくらい黒歴史化しましたが、83年に回転数などを修正したリマスター版が再リリースされています…彼にとって余程悔しく心残りだったのでしょう)

Got To Begin Again”は、このアルバムの最後に収められたバラードです。アルバムが全体的にちょっと暗めというか内省的な歌詞が多い中で、この曲は一際、絶望的に暗い曲です。脱力、無気力、諦念、空虚さすら感じさせますが、それはつまり、当時の彼が自己実現しきれていなかった(そして結果もついてこなかった)裏返し、と言えるかも。でもメロディはとても美しい。彼の弾くピアノだけのサウンドは、歌詞の暗さに対して僅かな光にさえ聴こえてきます。

暗くてすみません。今日は溜息しか出てこないもので。

+++++++++

僕は今ね 道の果てにいるんだ
ここからどこへ 行けばいいっていうんだい?
いつだってこうなることなんて 分かってた
今も見通しは 全く立たないままだっていうのに

言葉はとっくに尽くされたし 預言だって果たされた
でも僕はまだ どこへ行けばいいか決めかねてる
そうさ一日ずっとこうして そして眠るだけ
でも明日また起きて 思い知るんだきっと

また始めなきゃならない
どう始めればいいか 僕にはもう分からないけどね
そうさまた 始めなきゃならないんだ
もうキツいんだ…

頭を起こしてから しばらく経つけど
どうせまた 希望の光に目が眩むにきまってる
ずっと時間をかけて 方法を考えてきたけど
現実はいつだって 僕にはあまりに驚きでしかないよ

明日を夢見ては 今日には生贄になってしまう
単に時間の無駄だって ことなんだろうね
顔に投げつけられる真実が 目の前にあるのに
僕はまだこの心持ちから 抜け出せないでいる

また始めなきゃならない
どう始めればいいか 僕にはもう分からないけどね
そうさまた 始めなきゃならないんだ
もうキツいんだ…もういいよ…

(Billy Joel “Got To Begin Again” 意訳)

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