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(音楽話)106: 高橋真梨子 “遥かな人へ” (2016)

【財産】

説明不要、高橋真梨子。彼女の歌声を嫌いな方、ほとんどいないのではないでしょうか。誤解を恐れずに言うと、美声ではありません。熱唱・絶唱するタイプでもありません。でも、心の奥底に簡単に届いてしまうかのような通る声であり、どこかに慈愛と温もりを感じる声。まさに唯一無二、日本が大事にしなければいけない「財産」です。無形文化財。

1949年広島生まれ。両親は被曝に遭い、福岡に移ってからは厳しい家庭環境だったようですが、歌手を目指し16歳で上京。事務所意向のアイドル路線を本人は辞退して福岡に戻り地道に歌手を目指していたところ、1972年にスカウトされペドロ&カプリシャスに加入(初代ヴォーカルは前野曜子←私大ファンです)。"ジョニィへの伝言""五番街のマリーへ"が大ヒットし、世間での認知が拡がりました。1978年にソロに転向後、"for you…""桃色吐息""はがゆい唇""ごめんね…"などがヒットしましたが、彼女はシングルが大ヒットするというよりはアルバムが売れるシンガーという認識が強く、ご本人も「シングルの売れない高橋真梨子です」と自虐MCをすることもあるとか。それでも、数々の名曲は様々なシンガーに歌われています。

"遥かな人へ"は1994年の冬季五輪、リレハンメル・オリンピック(ノルウェー。スキージャンプ男子団体、原田選手の無念→4年後長野五輪の大ジャンプ、て覚えてますか?)のNHK放送テーマ曲として取り上げられ、卒業式ソングとしても当時多く取り上げられました。極めてシンプルな曲構成とメロディ。それだけに、歌詞が余計沁み込んできます。

この映像は2016年のライヴの模様だそう。発売から20年以上後にもかかわらず、この伸びやかさ。軽くて力んでいない歌唱なのに、やはり慈愛の念はしっかりと感じられる。彼女を見る度に感じるこの慈しみは一体なんだろう?と思っていたのですが、最近ようやくわかりました。高橋真梨子は、菩薩様です。
悟りを求めるだけでなく、自らもまた修行に励む者。聴く者を温かく包みながら、そのための鍛錬を怠らない。正直、決して若いとはいえない熟成の年齢な彼女なのに、迸るエネルギー、光、力は若々しい。不断の努力を続けているに違いありません(そうでなければ人間ではありません←失礼)。

タイムレスな歌は、派手ではないけれど、ずっと心に残り続ける。それを体現している曲だと思います。一度は生で聴いてみたいなぁ…

むかしふたり住んだ 街によく似てるね
いつか見た太陽 Bright背中を指さす
道は別れるけど ひたすら強くなれ 命のシルエット

人を愛するため 人は生まれた
苦しみの数だけ やさしくなれるはず

今ひとつドラマが 始まっても終わっても
孤独な鳥たちが Flyきらめき飛び立つ
せめて海をこえて 気持ちだけ伝えて 涙は語れない

この白い街並 春が来たとき
瞳をかすめていく それぞれの場面が
人を愛するため 人は生まれた
傷つき敗れても やさしくなれるはず

誰もがつかみたい 夢はあるけど
ジェラシーかくせない ときめきの瞬間
人を愛するため 人は生まれた
苦しみの数だけ やさしくなれるはず

高橋真梨子 "遥かな人へ"

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