(音楽話)13: Postmodern Jukebox feat. Morgan James “It’s a Man’s, Man’s World” (2014)
【温故知新】
Postmodern Jukebox feat. Morgan James “It’s a Man’s, Man’s, Man's World” (2014)
数年前、YouTubeでたまたま見つけたとある動画に私は釘付けになりました。それは女性シンガーがジャジーな編成のバンド・サウンドに乗せてAerosmithの”Dream On”を歌っていたものでした。
“Dream On”
特にリズム・セクションの音鳴りの素晴らしさ。通常弦楽器(クラシック楽器)が入ると低音域はチェロやコントラバスなどの音色=まろやかで少し輪郭の丸い音になりがちですが、これは原曲がAerosmith。しっかりビートを効かせないとのっぺりした曲になってしまう。それを理解した上での音の鳴り方を調整しているのは明らか。ていうか、私的にはスネアのリムショットの音色が泣きそうに好きなんですが笑
彼らはPostmodern Jukebox、通称PMJ。2011年、ピアニスト/アレンジャーのScott Bradleeが立ち上げた音楽集団というか彼のプロジェクトです。楽曲によってScott以外のメンバーが入れ替わる自由な編成の中、古今東西の著名な楽曲をジャズやスタンダードなアレンジに仕立ててカヴァーするという、非常に興味深い取り組みを続けています。これまでBillie Irish、Lizzo、Demi Lovato、Jonas Brothers、Ed Sheeran、Post Maloneなどなど、最新の音楽たちを次々と料理していますが、他にもWhitney Huston、Blondie、The Police、ELO、Nine Inch Nails、Coolioなどの往年ヒット曲、意外なところではなんとBABYMETALまで…!
米国や欧州ではライヴ・ツアーもやっていますが(コロナ禍で今はお休み中)、主戦場はデジタル。YouTube動画の再生回数は累計15億回以上、チャンネル登録者は500万人以上という人気コンテンツぶり。当然ですが私も熱心な視聴者です。
PMJのおかげでユニークなシンガーに出会うこともしばしば。今回の動画で歌っているMorgan James(前述”Dream On”も彼女の歌唱)は、81年米国アイダホ州ボイジー生まれ。モータウン・レコードの創始者・Berry Gordyに見初められ、ミュージカル女優としてキャリアを積みながらシンガーを志したようです。2012年にデビューし、”Call My Name”(Princeのカヴァー)が本人に気に入られたというエピソードを持っています(Princeが、自分の曲をカヴァーしたシンガーを褒めるのは異例中の異例です)。
”It’s a Man’s, Man’s, Man's World”は、ご存知James Brownが1966年に発表し大ヒットしたもの。これをPMJ流「Orchestral Funk」ヴァージョンにアレンジ。ハープ、チェロ、ベース、ドラムス、ピアノというユニークな編成で、リズムは確かにファンクに揺れているものの、チェロが別のメロディを奏で、ハープが煌びやかさを演出し、ピアノが全体を支える。とても不思議、でも否応なしにテンションが上がるサウンドに、エモーショナルで正確なMorganのヴォーカルが堂々と乗っかります。彼女の声は実にスケールが大きく、少々大仰なアレンジの方がしっくり来るくらい。カッコいい。まさに初心に帰って「故きを温ねて新しきを知る」。新旧音楽の融合の楽しさを教えてくれるこうした音楽は本当に尊いと思うし、素晴らしい。YouTubeに沢山落ちてますので、是非お楽しみください。
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