(音楽話)108: Echobelly “Today Tomorrow Sometime Never” (1992)
【永遠の問い掛けは】
2024年9月。英国、いや世界中のメディアがザワついた「Oasis再結成」。
NoelとLiamのGallagher兄弟を中心とした、1993年にデビューした5人組英国バンドは、ウケないと思われていた米国でもバカ売れし90年代後半に世界を席巻。"Live Forever""Whatever""Wonderwall""Don't Look Back In Anger""Let There Be Love"など、今の40-50代の方ならどれか必ず聴いたことがあるであろうヒット曲を量産しました。しかし2009年、兄弟喧嘩の末にNoelがバンドを脱退して突然の解散。Liamや残ったメンバーはBeady Eyeとして、Noelはソロ・プロジェクトNoel Gallagher's High Flying Birdsとして活動を続けますが、Oasisほどの知名度・成功は得られませんでした。
その間も兄弟はお互いの悪口を言い合い、度々出てくる再結成の噂話は幻と消えました。しかし言うても兄弟です、水面下では連絡取ったり実家でハチ合わせしたりしてるんだろうとは思ってました。
それが2024年、(2025年にOasisとしてライヴを数本やると発表しただけですが)再結成をアナウンス。一説によるとこの再結成、決定打は彼らの母親だったらしく「いつまでも兄弟で歪みあって…いいかげんにしなさい!」と怒られたんだとか…然もありなん笑 兄弟以外のメンバーが誰になるのかはわかりませんが、Gallagher兄弟が一緒に演る=Oasis、ということなんでしょう。
そんなOasisが席巻した90年代半ば〜後半、英国でブリット・ポップと呼ばれる音楽トレンドが生まれました。ラッデイズムと呼ばれる荒くれ者で不良っぽい言動を前面に出していたOasisと、インテリ中産階級でアートスクール臭とシニカルさをもったBlurは、人気度・実力度共に抜けていて分かり易すぎるくらいの対立構造を作り上げてました。実際仲悪くて殴り合いしたり、シングル同日発売対決!なんて煽ったりもしてましたっけ。
それ以外にも、耽美で強烈なグラムロックを鳴らしたSuede、英国伝統の簡潔メロディの正統継承者Cast、80年代ニューウェーヴを取り入れたMenzwear、まるで日本のビジュアル系バンドのようだったMansun、プリミティヴだけど美メロな3ピースバンドSupergrass、忘れちゃいけない国民的「踊れないダンスミュージック」を鳴らしたPulpなど、綺羅星のように素晴らしいバンドが次々と出てきました。
そこにちょっと変わったバンドが加わります。それがこのEchobellyでした。
1992年、インド系のSonyaとスウェーデン人のGlennを中心に結成され、心の奥底から叫ぶようなSonyaの中音大きめなヴォーカルと彼女の書くマイノリティとしての自身を投影した歌詞、深いエコーが心情を表すかのように響くGlennのギターとバンド・サウンドは、当時の私に強烈に刺さりました。
なにより、Sonyaのビジュアルがとてもキュートで…でもその目は強い意思と決意を感じさせ、「(大学に入るまでロックを聴いたことがなかった)私にとってこのバンドは必然だった」という話は、ロックというものの存在理由の一端を感じさせるに足るエピソードでした。
(彼らはその後アルバムを何枚か出し、現在もSonyaとGlennの2人で活動は続けているようです)
"Today Tomorrow Sometime Never"は1994年発売のデビュー・アルバムの1曲目です。初めて聴いた時、「いつか私の味方になってくれるの?なってくれないの?ねぇどうなの?どうなのよ!?ガッカリさせないでよ!」というブリッジに、鈍器で後ろから頭を打ち抜かれたような衝撃を受けたことを今でも覚えています。
前述の歌詞を一過性のもの、一時の思春期的な発露として片付けることもできるかもしれませんし、当のSonya自身もそう思っているかもしれません。でもこの歌詞を当時マトモに食らってしまった私は、あの時からその問い掛けへの回答を今だにできていない気がしています。
誰かの味方になるということは、決して軽はずみにできるものではない…歳を重ねれば嫌が上でも理解するものです。誰かの期待に応えることは、相当な覚悟と、慈愛と、パワーがなければできないし、そこには非常に多くの責任と忍耐を必要とするからです。
私は今でも時々、この曲を聴いては問い掛けています。
おまえは誰かの味方になれているかー?
Sonyaの問いに真っ直ぐに「はい」と答えたい。そんな人間でありたい。
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