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(音楽話)41: U2, Bruce Springsteen and Patti Smith “Because The Night” (2009)

【謳歌】

U2, Bruce Springsteen and Patti Smith “Because The Night” (2009)

2009年「Rock & Roll Hall of Fame / ロックの殿堂 25周年記念ライヴ」でのワンシーンから。米国ニューヨークのMadison Square Gardenで開催された豪華ライヴ(10/29・30開催)の大トリを務めたU2が、Bruce SpringsteenPatti Smithをステージに招き入れて演奏したパフォーマンスです。

それぞれの経歴は長くなるので触れませんが、Bruceは1973年、Pattiは75年にメジャー・デビューして各々の熱狂的ファンに支えられてきた大御所SSWですし、U2は80年のデビュー以降生真面目に音楽探求し続けてきたモンスター・バンド。Bruce・Pattiの二人は米国、U2はアイルランド出身なのに、結果的にU2が一番アメリカ的(ショービズ的)なポジションにいるのはなんとも不思議な光景ですが、大先輩の後ろでちゃんと演奏するメンバー、特に邪魔をせずに歌っているBonoは微笑ましく見えます…まぁ見方を変えるとPattiとBruceが完全にU2を食ってるんですが笑

Bruceが作曲、Pattiが作詞した”Because The Night”は78年、Patti Smith Groupがリリースしたもの。これには裏話があります。

原曲はBruceが自身のアルバム「Darkness on the Edge of Town」(1978)用に書いたのですが、歌詞がどうしても埋められない。するとそのレコーディングでエンジニアだったJimmy Lovine(当時売れっ子エンジニア)が「その曲、Pattiにあげたらどうだい?」と勧めます。アルバム・リリースの期限との兼ね合いで収録見込も立たなかったためBruceはそれを承諾、Pattiにこの曲を提供しました。
実はJimmy、当時Patti Smith Groupのアルバム・プロデュースも担当していて、しかもそれが彼にとって初のプロデュース作品。ヒット曲がほしい!と思っていた中、Bruceの曲があれば話題になるかも…つまりちょっと下心もあってBruceのボツ曲を譲り受けたわけです。そこに乗っかったPattiは、当時の彼女の恋愛事情をそのまま盛り込んだ歌詞を添えて直接的なラヴ・ソングに仕立てました。これがUS Billboardで最高位13位のヒットに…良かったねJimmy。

Pattiの歌声は個性的で僅かに微妙なピッチ。それが魅力ですがそれ以上にオーラが凄過ぎ。鋭い視線や口元の微笑み、手の長さ、髪のボサボサ具合…なんなんでしょう、対面したらチビってしまうかも。BruceもまさにThe Bossの異名通り堂々たるステージング。一度歌い出すと説得力ダダ漏れな歌声はズルいったらありゃしない。そして曲後半での感情的ギターソロ…テクニックではなく心に鋭角に突き刺さります。それらを支えるThe Edgeの控えめギター(ソロも丁寧)、確実性重視なAdamのベース、派手なことはしないけど音色だけでそれとわかるLarryのドラムス…あれ?もしかしてU2って最高レベルのバック・バンドになれるんじゃない?(失礼) この映像で一番仕事してないのはBonoだったりしますが、彼なりのアジテーターぶりを発揮。やはりこの男、真面目ですね。

2009年当時、Patti・62歳、Bruce・60歳。U2は48-49歳。パワフル、の一言。若かりし日の思い出をアオハルな歌詞で、時が経った本人たちが歌い上げる。それがとても眩しい。

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