音楽療法の勉強で迷っている方へ:1つ目「音楽療法は広い」
執筆:小沼愛子
「音楽療法の勉強中です」という方々に沢山お会いしてきました。その学びの形は、自分で勉強されているという方、何らかのコースを受講中の方、専門学校や大学に在籍する方、留学して学んでいる方、と、実に様々です。
私自身も「常に学び中」と言える立場で、これがずっと続くのだと考えています。自分のように、プロになっても学び続ける人達にも沢山出会い、共に楽しく学べる仲間がいることをとても幸運に感じています。「学びは楽しい」と心から思いますし、「楽しい学びでなくてはいけない」とも思いますし、「楽しい学び」は、音楽療法や関連領域での仕事を続けるにおいて大切なことだと考えています。
最近、「学校やコースで音楽療法を学んでいる(もしくは学びたい)けれど、先生や授業の質の低さに納得がいかないから辞める(もしくは辞めようかと迷っている)」という話や相談を聞くことが増えました。
架空の例を作って表現すると、「自分は音大でピアノ科を出た。音楽療法の先生はピアノがあまり上手くない。こんな人から学びたくない」といった感じの話があり、そのようなコメントがSNSにも上がっている状態です。
そう思ってしまう気持ちは理解できるのですが、「え?その理由だけで音楽療法の勉強をすべて止めてしまうの?」と思います。
通常、音楽療法についての学習内容はかなり広範囲に渡ります。ピアノ演奏だけではなく、歌唱だけでもなく、心理学だけでもなく、障がいの知識だけでなく、色々な知識とスキルが必要とされる仕事(なはず)です。
迷っている方にお伝えしたことの一つ目は、「ひとりの先生が音楽療法のすべてのエリアにおいて知識とスキルを極めているわけではない」という点です。これはごく単純に、「すべてのエリアについて極めるのはほぼ不可能なことだから」と理由でそう言い切れます。私自身、そのような完璧な音楽療法士に出会ったことは一度もありません。これは、国内でも、国外でも、有名とか大御所と言われる音楽療法士や教授でも同じです。
そして、これは音楽療法だけでなく、世の中のほとんどの分野に当てはまることですので、音楽療法士だけがダメ、ということではありません。
たった一度「尊敬できない先生に出会ってしまったから」いう理由で音楽療法全体を見下したりジャッジすることは残念に感じますし、それで勉強を止めるのは勿体無いと思います。本来、音楽療法は奥が深く、学問としても楽しく、実践は本当にやりがいのある分野です。
もちろん止めるのは個人の自由ですが、ほんの一部の情報や経験から音楽療法自体を嫌ったり見下したりしないでいただきたい、と思いながらこのシリーズを書き始めました。少しずつ続きを書いていく予定ですので続きもお読みください。
次号へ続く→#2「迷子多きエンドレスな道。楽しく本質を学ぶ方角に行こう」
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