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N009 友部正人/一本道

 友部正人の「一本道」は、1972年4月にベルウッド・レコードからリリースされたシングルであり、彼の音楽キャリアを象徴する代表曲の一つです。この楽曲は、フォークソング全盛期の日本において、詩的な歌詞とシンプルなメロディで多くのリスナーに深い感銘を与えました。

このシングルは、友部正人がURCレコードからのアルバム『大阪へやって来た』でデビューした直後に発売されたもので、彼にとって唯一のシングル作品でもあります。

「一本道」は、友部正人がギターとハーモニカで弾き語るシンプルな構成が特徴です。詩的かつ叙情的な歌詞は、都会生活の孤独や無力感を描写しながらも、その中に希望や再生の兆しを感じさせます。特に「どこへ行くのかこの一本道、西も東もわからない」というフレーズは、多くの聴衆に共感を呼び起こしました。歌詞には阿佐ヶ谷駅や中央線といった具体的な地名が登場し、当時の東京の風景や若者たちの心情を映し出しています。また、友部自身が感じていた東京での孤独感や不安が色濃く反映されており、そのリアリティが楽曲全体に深みを与えています。

この楽曲は、多くのアーティストに影響を与えました。長渕剛は高校生時代にラジオでこの曲を聴き、「あの寂寥感がたまらず、一晩中眠れなかった」と語っています。また、吉田拓郎は「『一本道』を聴いたとき、『こいつになりたい』と思うほどジェラシーを感じた」と述べており、その芸術性が同業者からも高く評価されていることが分かります。
坂本龍一や井上陽水、詩人谷川俊太郎なども友部正人の才能を認めており、「一本道」は単なるフォークソングではなく、一種の詩的作品として評価されています。

基本情報

リリース日: 1972年4月
レーベル: ベルウッド・レコード
作詞・作曲: 友部正人
収録形式: シングルレコード(B面「まちは裸ですわりこんでいる」)
録音スタジオ: モーリ第2スタジオ
制作: アート音楽出版
ミキサー: 吉野金次
ジャケットデザイン/写真: 田中注臣
吉野金次によるミキシングは、フォークソング特有の温かみと親密さを引き出しており、友部正人の歌声とギター演奏を際立たせています。

参加ミュージシャン

ボーカル/ギター/ハーモニカ: 友部正人
B面「まちは裸ですわりこんでいる」演奏メンバー
ベース: 細野晴臣
ドラム: 松本隆
マンドリン: 高田渡
これらの豪華なバックメンバーは、日本フォーク界やロック界で後に大きな影響を与える存在となります。特に細野晴臣と松本隆は、その後YMOやはっぴいえんどなどで活躍しました。

チャート成績

「一本道」はフォークソングというジャンル特有の性質上、商業的なチャート記録には残らないものの、リスナーやアーティスト間で高い評価を得ており、日本フォーク史における重要な楽曲として位置付けられています。

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