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N001 吉田拓郎/流れる

吉田拓郎の「流れる」は、1975年にリリースされたシングル「となりの町のお嬢さん」のB面に収録されています

拓郎特有の文語調で練り上げられた歌詞と、フォーク調ながらも独自性を持つアレンジが特徴的です。日常的な口語的表現を得意とする拓郎の作品とは一線を画しています。

この曲には、激動の時期(※)を乗り越えた彼の覚悟や内面世界が反映されており、「静けさ」や「孤独」をテーマに、自身の内面を深く掘り下げた楽曲です。「静けさを愛し、黙り込むことの強さと美しさ」を描いた詩的な作品であり、当時の拓郎の心情が色濃く反映されています。

歌詞には、「いずれは元の闇の中に消え去るのみ」といったフレーズがあり、生きることへの哲学的な視点が込められています

レコード会社 フォーライフ
アレンジ 松任谷正隆
リリース日 
1975年9月25日

松任谷正隆 ピアノ
駒沢裕城  ペダル・スティールギター

駒沢裕城のペダル・スティールは「泣いているような音色」と評され、この曲の情感を深める重要な役割を果たしています
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今は黙って 風の音を聴け
木の葉の舞う季節を 季節を知れ
想い出すな 荒野の朝を
包みかくしてしまえ 静けさの中に

座り込んだ男を見よ
つかみ取った夢をにぎり
テレ笑いでウソだと言うのみ

立ち向えば言葉が荒れ始める
古き時代の強者(つわもの)どもが
生きるすべなど教えにやって来る
明日は今よりも 死せる時なんだ

いずれはもとの闇の中へ
答えも無く 消え去るのみ
恥かしさを こらえられるか

今は黙って 風の音を聴け
今は黙って 水面(みなも)に浮かべ
今はただ 静けさを愛せばよい
---(※)
1973年、吉田拓郎は「婦女暴行致傷」の疑いで逮捕されましたが、不起訴処分となった事件がありました。女性が親や婚約者から叱責されることを恐れ、とっさに虚偽の告訴をしたことが発覚。部屋に鍵はかかっておらず、暴行や怪我の事実もありませんでした。この事件は、警察権力やマスコミ報道のあり方について議論を呼びました。不起訴処分であっても「無罪」と同等であることが一般には理解されにくい状況や、有名人への偏見的報道が問題視されました。吉田拓郎自身、この経験を通じて「表現の自由」や「自己防衛」の重要性について深く考えるようになり、その後の活動にも影響を与えたとされています。

1975年9月の『吉田拓郎のオールナイトニッポン』月曜1部の生放送で、四角佳子との離婚を発表。週刊誌に虚偽の報道をされる前に自分の言葉で真実を伝えたいという意図から、離婚理由やマスコミ批判について約2時間にわたって語りました。この発表は深夜の生放送で行われたため、放送後にマスコミが押し寄せ、大きな騒動となりました


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