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【アーカイヴ】第127回/サウンドアクセラレーターが、ダイナミック型スピーカーの世界を変える!![村井裕弥]

 長崎県諫早市に、オーディオラボというメーカーがある。行ったことはないが、サイトを見ると、自ら「ガレージメーカーでございます」と名乗り、アンプなどを作って販売しているようだ。

 そのオーディオラボが作ったアクセサリーに、サウンドアクセラレーターというのがある。1個20,000円のSA1と1個40,000円のSA3の2種がメインだが、いずれも本体から3本の銀線が出ていて、うち2本をスピーカーユニットの入力端子に取り付け、残り1本をスピーカーユニットのフレームにハンダ付け。

 そうすることで、スピーカーの音が楽器の音に進化するのだという。サイトには「大型ホーン、ドライバーのホーン鳴き、大音量時のうるささ、歪み感が全く有りません。透明感、広がり。分離、全てにおいて、生っぽくなります。大口径のウーファーが軽く動くようになり、超低域まで楽々と再生します。うっとうしさ、こもり、箱なり、ダクトの共振音、全て解消されます」とも書かれている。

サウンドアクセラレーター SA1
2本はスピーカーユニットの入力端子に、
もう1本はフレームに取り付ける

 「いくらなんでも大げさだろう」と思ったが、本当にそうなったらうれしい。しかし、わが家で常用しているスピーカー、ルーメンホワイトは片チャンネル5本のユニットを使っているから、左右で10個のサウンドアクセラレーターが必要になる。SA3だと40万円か。最初からこれはキツいから、FALの平面振動板ユニットC90N50を使った自作フルレンジ・スピーカーシステムで試すことにした(これなら2個ですむから)。

FAL C90N50​をマウントした自作スピーカー・システム
サウンドアクセラレーター装着例

 ――驚いた。もちろん長所がたくさんあるから、このスピーカーを使っているのだが、自作箱に入れているため、気になるところがないではなかった。後面開放型なので、ストレスフリーに景気よく鳴るところはよいのだが、大太鼓やジャズベースの大音量再生は若干雑…。だから「箱を閉じて、適度な背圧をかけてやる必要があるな」と感じていたのだ。

 しかし、サウンドアクセラレーターを取り付けると、その雑味が消えた! それもスカッと鳴り切り、直後ピタッと止まる。鈴木裕さん流にいうと「立ち上がりのよさはそのままに、音のしゃがみが改善された」そういう変化だ。

 先ほどふれた「スピーカーの音が楽器の音に」もウソではないなと感じられる。もちろん楽器の音と完全にイコールになるわけはないが、何歩か楽器の側に近づくのは間違いない!

 fレンジ・Dレンジともに拡大。情報量も増え、演奏や歌唱の微妙なあやもより聴き取りやすい。何よりありがたいのは、「音が特定の方向に変わる」というのでなく、「録音現場ではこう鳴っていたのだろうな」と感じられるほうに変化すること(これは、録音現場に居合わせた何枚かのCDで確認もした)。

 ケーブルなど各種オーディオアクセサリーの試聴が楽になったことも書き添えておこう。「あ、これは変なくせがある」「妙な味付けでごまかしている」そういうことが、ほんの数秒でわかるようになるのだ。

 しかし、なぜこのように改善されるのか。オーディオラボやサウンドデンのサイトによると、マグネットとボイスコイルを組み合わせて音を出す以上、どうしても逃れられない歪みがある。その歪みを取り除くから、音がよくなるのだという。

オーディオラボ(諫早市)
サウンドデン(広島市)に常設されている試聴機。
サウンドアクセラレーターONとOFFを瞬時に切り替えられる

 なるほど。立ち上がりとしゃがみが改善されること、機械臭さが後退し楽器の音に近づくこと、録音現場で聴いた音に近づくことなど、すべて納得。

 広島のサウンドデンは、このサウンドアクセラレーターに着目し、全国で取り付け作業を請け負っているが、スピーカーのブランドや値段に関係なく、音質改善されるのだという。逆にいうと、「どんな高級なスピーカーも、マグネットとボイスコイルで音を出す限り、宿命的な歪みから逃れられなかった」「必ずそれに足を引っ張られていた」ということになる。

 試聴はオーディオラボやサウンドデンで可能(サウンドデンには、ON/OFF切り替えスイッチの付いたスピーカーが常設されているらしい)。

 ハンダ付けに自信がある方なら、ご自分で取り付けられるが、フレームへのハンダ付けが厄介な場合もあるから(ここが導通しないと無意味)、まずは電話で相談してみてはいかがか。

(2016年8月20日更新) 第126回に戻る 第128回に進む


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村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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