【アーカイヴ】第157回/「コスパ最高」などという言葉ではとても表せないAMP-KUMAMOTOの凄み[村井裕弥]
「マイ電柱」の出水電器が、毎月大田区西蒲田で試聴会をおこなっている。主役はALLION A10というプリ・メインアンプ。税別120万円はけしてお安くないが、これだけでペア300万円クラスのスピーカーが伸びやかに歌い出すのだから、コスパはかなり高い(わが家ではペア600万円クラスのスピーカーを鳴らしているが、それでも力不足を感じることはない)。
今年になってからは、聴き比べ企画も始めた。そうすることによって、ALLION A10のよさも、比較対象機のよさも際立つに違いないと考えたからだ。そのあたりのプロデュースと出演交渉は、筆者が担当。
まずはマックトンXX-5000とMS-2000。翌月はSarp(旧ヒット開発研究所)LTC101055S。3回目はバクーンプロダクツ(SATRI) PRE-5410mk3とAMP-7511A。どの回も製作者ご本人が来場されたから、技術解説や製作秘話も大いに盛り上がった。
バクーンプロダクツ永井氏が「あっと驚くこと」を提案されたのは、そんな技術解説がラストに差し掛かった頃。 「皆さん。きょうはこのAMP-KUMAMOTOという新製品も持ってきたんです。少しの時間でいいから、聴いていただきたいのですが、よろしいですか?」
驚いた! 打合せになかったからではない。100万円以上もするアンプのあとで、13万円のアンプを聴いてほしいというのだ。そんなことをしたら、上級機と比べられて、みじめな印象だけが残るのではないか!?
しかし、AMP-KUMAMOTOの音は、予想とまるで違っていた。同じ人が作っているのだから、PRE-5410mk3+AMP-7511Aに音調が似るのは当然だが、「安物の臭い」がまったくしないのだ。しなやかさと力強さを併せ持ち、音像くっきり。
小音量再生でも音がやせず、分解能が落ちることもない。「個性や演出で聴かせるタイプ」ではないから、音源の中にふくまれる細やかな情報が歪められることもない。入っているものだけが、ストレートに放出される。
このAMP-KUMAMOTO、実は熊本地震のチャリティ・アンプなのだという。
「ひとりでも多くの方に買っていただきたいから、できうる限りのコストダウンに挑戦しましたが、クォリティは犠牲にしません」
13万円のうち1万円が義援金で、ヴィンテージ・オーディオ喫茶「オーディオ道場」と平成音楽大学に寄付されるとも聞いた。コストダウンのため、販売は直販のみ。
くわしくは、バクーンプロダクツ(電話096-249-2046)に直接お問い合わせいただきたい。
(2017年6月20日更新) 第156回に戻る 第158回に進む
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音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。
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