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【アーカイヴ】第124回/Conclusionの新電源PS-12VRを自宅試聴した[村井裕弥]

 Conclusion(コンクルージョン)。港北ネットワークサービスのオーディオ・ブランドだ。代表作はミュージックバード専用チューナーC-T1CS、ルビジウムを使った外部クロック・ジェネレーターRB-2などだが、この夏「音楽を奏でるための電源ユニットPS-12VR」(税込48,600円)が仲間入り。要するに、ミュージックバード・チューナーのACアダプターをこれに替えると、俄然音質が向上するという製品。ロングセラー機CDT-1AMとその後継に当たるCDT-3AFDに対応しているから、過半数のリスナーが、このPS-12VRを使えることになる。

 技術的な解説は、港北ネットワークのサイトに載っているから、ぜひお読みいただきたい。乱暴に要約すると、1984年に発売されたNECのプリ・メインアンプA-10II(歴史的名機)に搭載されたリザーブII電源をリファインして、現代によみがえらせたもので、一般的な電源が持つ宿命的な欠点をクリア。そのため、聴感上のザラツキ感や歪感が消え、見通しの良い音場が得られるのだという。
 さて、チューナーのACアダプターをPS-12VRに替えると、どのような音が聴けるのか。その音について感じたことを詳述してもよいのだが、比較する相手がいないとわかりにくかろう。実は3月にこれの試作機を中心に自宅試聴していて、そのときのメモが残っているから、まずそれから紹介することにしよう。

Conclusion PS-12VR


Conclusion C-T1CS

 そのとき試聴に使用したチューナーはCDT-3AFD。外部DACは使わず、アナログ出力をプリアンプにつないだ。

【ACアダプター①】
○ 全体的に響きが安っぽい。
○ 他機種よりデジタルノイズ臭い音。
○ アコースティック楽器が、まるで打ち込みのような雰囲気で再生される。
○ 低音が、わざとらしい。鼓膜を押す圧迫感でしかない。
○ 音量を上げづらい。
○ 長時間の試聴もつらい。

【ACアダプター②】
○ 刺激感はそれなりに少ない。ナチュラルといえば、それなりにナチュラル。
○ 陰翳が薄い。
○ 音色もどことなく薄い。ひどく悪くはないのだけれど、全体的に響きが安っぽい。
○ 「演奏者の真剣度」が低く感じられる。

【オーソドックスなトランスを使ったアナログ電源 2万円台】
○ アナログライクな音。ここまでのどれとも異なる音調。なめらかかつまろやか。
 よい意味のねっとり感(特に低域)。
○ 古い録音は古い録音らしく、新しい録音は新しい録音らしく再生してくれる。
○ 雰囲気描写が巧み。

【港北ネットワーク試作機】
○ 静けさがまったくの別物。
○ 品位が段違い(電源だけの違いとは思えない)。
○ ピアノはピアノらしく、ヴァイオリンはヴァイオリンらしく、自然な音色で再生される。
○ とても聴きやすいが、ハイを丸めたり、Dレンジを狭くしたりした音ではない。
○ レンジ感がより広く、立ち上がりもより急峻。それなのにうるさくないのだ。
○ 大音量再生・長時間試聴のストレスを感じない。どんどんボリュームを上げたくなる。

 4か月前は、こんな感じだった。いま手元にあるのはPS-12VRだけだから、あの試作機との違いを厳密に比較することはできないが、他の電源をきょう改めて聴き、そのあとでPS-12VRを聴くと、「さらに差が拡がった」「試聴機の水準を確実に超えた」という印象。さすが港北ネットワークだ!

他機と同じようにまとめてみると、
【港北ネットワークPS-12VR】
○ 試作機は「聴きやすい」「雑味がない」それでいて「クォリティが高い」という印象であったが、
 「高音質であること」をより強くアピールする音調。
○ 映像でいえば、照明がより明るくなり、その分ピントが深くなり、立体感が増したかのよう。
○ 他機種と比べると、「明瞭度アップ」「直接音の実在感アップ」「抑揚がより大きく、積極的に演奏している」。
○ 毎日残業で、深夜にしか聴けないという人にはありがたい傾向。小音量でも細部がボケない。
 「奏者が何をねらって弾いているか」が実にわかりやすい。

 「照明がより明るくなる」「明瞭度アップ」が気になる方は、チューナー天板の振動を止める、ケーブルを交換する等で調整するといった手法で、メリットだけを享受することができる。
 CDT-1AMあるいはCDT-3AFDをお使いの方は、まず貸出機を申し込んでみてはいかがか。3日間の自宅試聴が可能だが、最初の5分間で勝負はあっけなく付く。それくらいわかりやすい違いなのだ!

(2016年7月20日更新) 第123回に戻る 第125回に進む 


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村井裕也(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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