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【アーカイヴ】第145回/的場文平さんの手作りSDカードプレーヤーが、さらに進化!![村井裕弥]
的場文平さんは、「これだ!オーディオ術~お宝盤徹底リサーチ~」の準レギュラーだ。今年5月の分まで数えると、計12回も出てくれている。もちろん、そんな人はほかにいない。
テーマはもちろん、手作りSDカードプレーヤーを使ったハイレゾ再生。高価なネットワークプレーヤーやUSB DACを超える音楽再生を手作りでめざす技術系オーディオ愛好家なのだ。
先日パート3(4月19日~5月9日放送予定)を収録したが、第1週は「的場さんのテーマ曲」とでも呼ぶべきベートーヴェン:三重協奏曲で始まった。オイストラフ、ロストロポーヴィチ、リヒテルがソロを弾くカラヤン盤(1969年録音)を、彼はいつもかけるのだ。
クラシックファンなら誰もが知る有名盤だが、「オーディオチェックにこれを使う」という方は珍しいのではないか。しかし、的場さんのSDカードプレーヤーでこれを再生すると、無限のニュアンスあふれ出してくるのだ。
ちなみに彼が持ってくる音源は、CDのリッピングデータ。しかし、そのありきたりのデータを彼が選んだSDカードにコピーして再生すると、「よくできたハイレゾ」並の音が聞こえてくるから、もう舌を巻くしかない。
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それがなぜかについては第103回で考察したが、もう1度挙げておく。
○ SDカードは、デジタルデータを安定的に出力するのが得意
(しかも、特に音がよいといわれているソニー製SDカード“for Premium Sound”を採用)。
○ コーリアンボードが、適度な制振性を持つ。
○ パーツとパーツは、メーカー製ではありえないしっかりしたケーブルで結ばれている
(それもソケットでなくハンダ付け)。
○ パーツ同士をできるだけ離して取り付けている。
○ ふたがない(渦電流が起きない・共振しない)。
○ 電源部が恐ろしく充実している
(十分過ぎる容量だけでなく、デジ・アナ分離など、考えられる限りの手はすべて打ってある)。
○ 最上級マスタークロックで制御している。
○ デジタルデータをSDカードに移し終わったあとは、パソコンの電源をOFFにできる。
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これはもう、よい音が出て当たり前なのではないか。
2016年夏のパート2直前には「マスタークロックを最新最上位パーツに変更」。今回収録したパート3前には「DACチップを最新最上位パーツに変更」。これらによる音質向上が、前述三重協奏曲でしっかり確認できるから、もう畏れ入るしかない(どのように変わったかについては、番組内で語っているので、省略させていただく)。
的場さんご持参の音源をかけたあとは、筆者が『Net Audio』vol.25で推奨したハイレゾを再生。
○『Day Breaks』ノラ・ジョーンズ(Blue Note)
○『The Popular Duke Ellington』デューク・エリントン(RCA)
○『茶間旅行(おちゃのまりょこう)』さてん(赤坂工芸音研)
○『7月2日レコーディング・ライブ』鈴木祥子(BEARFOREST)
○リスト:ピアノ協奏曲第1番 長富彩(ピアノ)
ロレンツォ・ヴィオッティ指揮大阪交響楽団(Onebitious Records)
○J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 中木健二(キングレコード)
いずれも音楽的内容・録音ともに高く評価したから推奨した作品だが、的場さんのSDカードプレーヤーで再生すると、聴いたことがない音楽情報が、泉のように湧き出すから、ひたすら無言で聴き入ってしまう(くやしいが、自分はこれらの作品を正しく評価できていなかったことになる)。
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収録を終え帰宅したが、『Day Breaks』や『The Popular Duke Ellington』をかける気にはなれなかった。惨めな思いをするに決まっているからだ。
何百万円もするネットワークプレーヤーあるいはUSB DACを購入すれば、それなりに音質改善されるだろうが、あの手作りSDカードプレーヤーと同じ音が出るわけではない(DACチップはまだしも、あのマスタークロックは市販機にはとても採用できない価格なのだと聞いている)。
そもそもパーツを近接配置して、ソケットでつなぎ、筐体内に閉じ込めた時点で、あの音は出なくなるのだろう。
4月19日(水)からの放送をぜひ聴いていただきたいが、ここでビッグニュース! 3月12日(日) 損保会館で第2回MJオーディオフェスティバルが開催されるが、的場さんの参戦が決定(502号室11:00~11:25と14:55~15:20)。手作りSDカードプレーヤーの音を聴く絶好のチャンスだから、関東地方にお住まいの方は、ぜひ駈け付けていただきたい!
(2017年2月20日更新) 第144回に戻る 第146回に進む
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音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。