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Low Cost but HighEnd Sound Systemの構築~その11 スピーカーの自作(CHN719の制振処理、吸音材調整、f0共振制御板の調整、インシュレーター追加)

前回は、取り急ぎ吸音材を入れ、安価なFR10-8を取付け、軽荷重用のインシュレーターを使って、試聴しました。ハイエンドオーディオショウで聴くような音になったと述べましたが、よく聴くと粗っぽさもあり、改善の余地がありそうです。真面目に調整することにします。

ユニットの変更と制振処理

今回は思い切ってユニットをMarkaudio CHN719に変更することにします。
そのまま組み込むだけでは、FR10-8を超える音質にすることが出来ません。
そこで、FR10-8と同等の制振処理を施します。
① ワッシャを使ってDumpinng Wallを取付け
②  フランジ部分の補強
処理後を以下の写真に示します。

CHN719の制振処理

白い部分は、エポキシパテ。剛性アップと振動の抑制を図っています。

吸音材調整・f0共振制御板の調整

もう少し柔らかめにしたいと考え、吸音材として羊毛60%のフェルトを追加。
f0共振制御板は穴の数を多めにとってあるので、そのままではf0共振制御が弱いはず。低音の周波数特性がほぼシミュレーター通りであったが、経験上、f0共振制御がうまくいくと、低音がシミュレーターの計算結果よりも伸びる傾向がある。そこで、穴を1個塞ぐこととした。これで穴の総面積は、SDの1.6倍程度となり、経験値1.2~1.5倍と同程度の面積となる。

f0共振制御板の穴を1個塞ぐ。
羊毛60%のフェルトを追加
フロントパネルの部分にもキルト芯を貼付け
キャビネットの背面側の吸音材(キルト芯)

新たなインシュレーターの製作

3Dプリンターで製作したキャビネットは一般的なスピーカー(~5kg)と比べてかなり軽い(2kg)ことが特徴。軽荷重用のインシュレーターでも軽すぎてインシュレーターの効果が小さいように感じます。
このような軽いスピーカーには、スパイクタイプのインシュレーターが良いと考え、3Dプリンターで製作します。
以下にインシュレーターのメッシュデータを示します。

スパイクのメッシュデータ

スパイク受けのメッシュデータ

インシュレーターの組立
スパイクは両面テープを使ってキャビネットに貼り付けます。

スパイクの底面に両面テープ貼付け
フロントに1個、リアに1個を貼付け

滑り止め用に、スパイク受けの底面にクッションゴムを貼付け

スパイク受けを設置場所に置き、その上にスピーカーを載せ、設置完了。

試聴

低音の明瞭感、力感が素晴らしい。低音の伸びも良く、聴感上は50Hz程度まで出ている。6Lのキャビネットとは思えないほどです。
音全体のキレ、解像度も素晴らしいが、きつく感じる事がなく、長時間聴いても疲れないと思う。
FR10-8と比べると、解像感は同程度だが、歪感が少なくなめらな感じです。
試聴に使っているアンプは、
「Low Cost but HighEnd Sound Systemの構築~その3 パワーアンプ」
で製作したアンプを使って試聴しているので、ハイエンドオーディオショウで聴く音とは単純に比較できないが、スピーカー単体では肩を並べるところまでいっているのではないかと思う。

3Dプリンターで製作するスピーカー最終版

これまで6回にわたって、3Dプリンターで製作するスピーカーについて記載してきましたが、前回のメッシュデータでも細かな改善すべき点がありました。それらを反映したデータ、その印刷設定、組み立て方をまとめます。

メッシュデータと印刷設定

以下のデータの著作権はあくまで山本雄一に属しますので、
”個人で楽しむ”または”教育に使う”以外の使い方をする場合は、山本雄一まで連絡下さい。

① フロントパネル
 なべタッピング3×20mmを使う形状からさらタッピング3×20mmを使う形状に変更しました。(ねじ穴部のオーバーハング部分の印刷を改善するためです。)ねじの差し込みが容易なように穴の大きさも変更しています。

印刷設定
充填率 25%、インフィルパターン ハニカム、積層ピッチ 0.28mm
フィラメント PLA

② リアパネル
 なべタッピング3×20mmを使う形状からさらタッピング3×20mmを使う形状に変更しました。(ねじ穴部のオーバーハング部分の印刷を改善するためです。)ねじの差し込みが容易なように穴の大きさも変更しています。

印刷設定
充填率 25%、インフィルパターン ハニカム、積層ピッチ 0.28mm
フィラメント PLA

③ ボディ
上述調整を反映し、f0共振制御板の穴の数を変更。意図しないオーバーハング部分が発生していたため修正。

印刷設定
充填率 20%、インフィルパターン ジャイロイド、積層ピッチ 0.28mm
フィラメント PLA

④ ダクト
ねじの差し込みが容易なように穴の大きさを変更しています。

印刷設定
充填率 25%、インフィルパターン ジャイロイド、積層ピッチ 0.28mm
フィラメント PLA

⑤ FR10押えリング(再掲載)
変更箇所はありません。

印刷設定
充填率 40%、インフィルパターン ハニカム、積層ピッチ 0.28mm
最上表面のアイロニングON
フィラメント PLA

なお、上述はPrusa Sliceを使用した設定であり、CURAを使用する場合は、インフィルパターンにハニカムがないので、グリッドに変更しても問題はないと思います。印刷時間が伸びても良ければ、積層ピッチをもっと細かくした方が表面がきれいになると思います。

組み立て方

スピーカー端子は、以下を使っています。ベストなものではありませんが、普通に使えます。
M4ねじのもので、板厚8mmに使えるものであればKOKです。

スピーカー端子(Amazonより)

① リアパネルにスピーカー端子を取付け。
② スピーカーケーブル 2芯1.25sq の作成
  筆者はビニールキャブタイヤケーブル VCTF 2×1.25sqを使用
  長さは0.4mほど
  端末は、
  スピーカー端子側:ファストン端子(サイズ205、メス)
  CHN719の場合
   ユニット端子側: + (サイズ205、メス)
            ー (サイズ205、メス)
  FR10-8の場合
   ユニット端子側: + (サイズ205、メス)
            ー (サイズ110、メス)
  スピーカー端子にケーブルを接続してください。
③ 吸音材の取付
  上述の記載を参照ください。
④ ダクトのリアパネルへの取付
  トラス3×12で4か所固定。
⑤ リアパネルのボディへの取付
  上下を注意してください。f0共振制御板の穴が少ない側(上側7)と
  ダクト側(上側)が一致するようにしてください。
  さらタッピング3×20、8本で取付けてください。
⑥ フロントパネルのボディへの取付
  さらタッピング3×20、8本で取付けてください。
⑦ ユニットの取付
  トラスタッピング3×10(黒)又は3×12,16(黒)、
  CHN719であれば付属のねじにて取付けます。
  CHN719はそのまま取付けてください。
  FR10の場合は、FR10の上からFR10押えリングを共締めしてください。
設置の際には、上述で製作したスパイクとスパイク受けを使うと良いでしょう。

命名

今回の3Dプリンターで製作したスピーカーは、
型番:S-PLA06L
なのだが、出来が良いので、以下のように命名しようと思う。
 Sq Prism(エスキュープリズム)


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