Low Cost but HighEnd Sound Systemの構築~その10 スピーカーの自作(再検討・再製作・試聴)
前回の反省
前回3Dプリンターで作成したキャビネットでは
① 100Hz以下の音量レベルが低く、想定したバスレフ動作になっていない。
② 背板の剛性が低く、スピーカー端子の振動が大きく鳴ってしまう。
でした。
考察1
f0共振制御板がキャビネット容量を分断し、バスレフの動作が正常に動いていない可能性がある。f0共振制御板の穴面積が小さいと考えられる。
f0共振制御板の穴は、フロントバッフルに投影された面積が空気の流動に効くのではないかと考える。よってフロントバッフルへの投影面積がsdの1.2~1.5倍程度となるような穴面積にする。(f0共振制御板が45度程度斜めなため)
すこし大きめに穴面積をとり、最終的には音を確認しながら、穴の一部をふさいでいくと最適化が可能と考える。
考察2
バスレフダクトの入口(キャビネット内)の位置が、キャビネット内の空気を有効に活用できる位置ではない。つまり、f0共振制御板で区切られた空間の中央付近にバスレフダクトの入口を持っていくべきである。
考察3
背板の厚みを12mmから15mmに増やし、梁を設けることとする。さらに背面部分のインフィルパターンをジャイロイドからハニカムに変更し背板の剛性を上げることとする。
また、奥行き方向をできるだけ増やさずにキャビネット容量を増やすため、フロントバッフルの厚み24mmを20mmに減らし梁を設けることとした。これで十分な剛性を発揮できるはずである。
次のキャビネットの具体化
(3Dプリンターender3 V2 neoで)製作可能な範囲内でバッフルサイズを大きく、
184mm×184mm → 200mm×200mm
に変更し、前回よりも若干大きめのキャビネット容量にする。また、バスレフダクトは背面に設け、取換可能とする。
以下に新しいキャビネット図面を以下に示す。なお、図面のフロントバッフルは、Visaton FR10-8とMarkaudio CHN719の両方を使えるようにしている。
なお、ユニットフレームの剛性向上を目的としたFR10-8用ユニット押えも製作する。
製作
上述図面で製作を開始。
ender3 V2 neoでは、
ボディ1個に3日間、フロントバッフル1個、リアパネル1個それぞれに2日間の印刷時間が必要です。幸い停電検出機能はついているので、停電があっても再開可能のはず。
トラブル発生
フロントバッフル、リアパネル、ダクトは問題なくプリントが完了。
問題はボディで、以下の写真のように、途中でずれが発生。Y軸を駆動するステッピングモーターの脱調が発生したものと思われる。
この対策は、別の記事に記載します。たぶん3Dプリンターのノウハウ集かなんかで・・・。
とりあえず組立
ずれが発生したボディでも問題なく使えると考え、そのまま使用。
ダクトのリアパネルはの取付は、トラスタッピング 3×10で取付け。
吸音材はポリエステル綿(キルト芯)のみを使い、前回と同様の量・箇所に貼付。Dumpping Wallは無し。
フロントバッフル、リアパネルのボディへの取付は、なべタッピング3×16で取付け。ユニットは、手持ちのVisaton FR10-8(Dumpping Wallを施したもの)。FR10押えリングごとユニットをトラスタッピング3×10で取付ける。
メッシュデータ
上述で製作したキャビネットのメッシュデータを以下に示します。
以下のデータの著作権はあくまで山本雄一に属しますので、
”個人で楽しむ”または”教育に使う”以外の使い方をする場合は、山本雄一まで連絡下さい。
試聴
低音はしっかりと出ていて、低音の周波数特性も、ほぼシミュレータ通り。
計画は成功といえる。キャビネットが軽いので軽荷重用のインシュレーターは必須である(フロント1個、リア2個で3点支持)。今回の試聴では、3Dプリンターで作成したインシュレーターを使用した。まずは吸音材の調整、f0共振制御板の穴面積の調整を行わず試聴する。
音質
これまで、木製キャビネットのスピーカを聴いてきたが、全く異なる次元の音である。とにかく、全域を通して分解能が高く、情報量が多い。特筆すべきは、低域での力強さ・クリアさ・分解能・情報量で、ハイエンドオーディオショウで聴くレベル。数十万レベルの市販スピーカをはるかに凌いでいるのではないか。中高域もフルレンジにありがちな荒い感じが少なく、とても2800円/個(コロナ渦前は¥1000台/個だったのだが・・。)のユニットを使っているとは思えない。
ユニットに施したDumpping Wallの効果だけでなく、材質(PLA)と構造にからくるキャビネット剛性の高さが利いているのだろう。
評判の良いMarkaudio CHN719に交換してみるのが楽しみである。
スーパーツィータとの組合せ
普通のスピーカーを一気にハイエンドに近づけるアイテムがスーパーツィータです。MusicaNoteでは、3種類のスーパーツィータ製品を出しています。
S-STW01 広帯域のハードドームユニットを搭載。再生は~40kHz
S-STW101 ハイル型ユニットを1基/chを搭載。再生は20kHz~150kHz
S-STW201 ハイル型ユニットを2基/chを搭載。再生は20kHz~150kHz
どれも性能の割には低価格です。
①S-STW01との組合せ
全体にキレが増し、明瞭感が向上。低音も明瞭感が増すため、量感も増えたように感じる。
②S-STW101との組合せ
S-STW01の効果が更に向上し、別次元の音になる。
まさしく、ハイエンドオーディオショウでよく聴くレベルの音。キャビネット容量が6Lしかないため重低音はあまり出ないが、低中高域のキレ・クリア感は、市販の100万円クラスのスピーカーの音を超えているように感じる。
③S-STW201とは組み合わせていない。おそらく、S-STW101より滑らかで柔らかみが増すと思います。
まとめ
① 3Dプリンターでのスピーカーキャビネット製作し、シミュレータ結果(周波数特性)と良く一致した。(聴感上)
② 3Dプリンターで作成したスピーカーキャビネットは、木質系キャビネットと比較して、音質が良い
③ バスレフダクトの入口(キャビネット内部側)は、 f0共振制御板と別れた空間の中央付近となりように配置すると良い。
④ 3Dプリンターで製作したキャビネットにDumpping Wallは不要。
⑤ 廉価ユニットにはDumpping Wallが効果的。
⑥ 軽いキャビネットには、軽荷重用のインシュレーターが必須。
⑦ f0共振制御板の穴サイズ・数の調整、吸音材の調整は次回以降で行う。
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