Low Cost but HighEnd Sound Systemの構築~その2 プリアンプ
なぜプリアンプが必要か
「低コスト高音質を狙うのであれば、プリアンプは必要ないのでは?」
と思う方は多いと思います。たしかに、パワーアンプにボリュームが付いていれば普通に良い音で鳴らせます。しかし、安価なパワーアンプ(AB級、D級のパワーアンプICを使ったアンプ)で使用しているアンプICの入力インピーダンスは10kΩ~50kΩ程度です。低い入力インピーダンスでは、ボリュームの音質への影響が大きくなります。一方、オペアンプの入力インピーダンスは数MΩ程度になるので、オペアンプを使ったプリアンプではボリュームの音質への影響が小さくなり、結果的には音質向上します。
ちなみにプリメインアンプと名を打ったアンプは、入力段にオペアンプを使っている場合が多いようです。
今回は、市販の低コストプリアンプをオペアンプ交換で高音質なプリアンプにします。
プリアンプの構築
ベースとなるプリアンプの選定
できるだけ安価にするよう単機能(ボリューム機能のみ)のプリアンプをベースにします。
Case1では、真空管を使ったFX-AUDIO-のTUBE-00J(¥3540)をベースにします。FX-Audio-は日本で設計・中国で製作しているメーカーでローコストで高音質な製品群を販売しています。TUBE-00Jは真空管の温かみのある音色が楽しめます。
トーンコントロールはついていませんが、PCを音源にするのであればソフトイコライザーで自由にバランスを変更できるので使用上は問題ないかと思います。
他にも
真空管が異なるTUBE-01J(¥5320)
トーンコントロールのついたTUBE-03J(¥6390)
もあり、好みで選んでよいと思います。ただし、
TUBE-03Jはオペアンプを2個使っているので、オペアンプ交換にはそれだけ費用が掛かるのが注意点です。
交換オペアンプの選定(電子回路を不得意な方は読み飛ばしてください。)
TUBE-00Jの入力構成は、基板表面のみをみると
カップリングコンデンサ→ボリューム→オペアンプ(標準はNE5532)
となっているように思います。真空管は電流増幅に使われているのでしょうか・・・。
この構造であれば、バイポーラトランジスタ入力のオペアンプでも、FET入力のオペアンプでも問題なさそうです。
というわけで以下が候補です。
① MUSES8820 (¥400) バイポーラトランジスタ入力、2回路入り
比較的安価で周波数帯域(GB)は狭め。
バランスも良く解像度、クリアネス等、音質は価格以上。
②MUSES02D(¥3400)バイポーラトランジスタ入力、2回路入り
MUSES8820の高音質バージョン。高価ですがそれだけの価値があります。
ムジカノートの試聴室メインシステムのプリアンプには、
このオペアンプを使っています。
懐具合がよければこのオペアンプがお勧め。
③OPA827(デュアル化、DIP化したもの、¥2680) JFET入力
かつて孤高のオペアンプといわれたOPA627を低コスト化し
若干低価格になったもの。音質的にはOPA627と酷似しているらしい。
OPA627は入手性が悪くなっているので、実質後継機種か。
コスト面・音質面でMUSES02Dと同レベルのオペアンプ
④OPA1655(デュアル化、DIP化したもの、¥1000) JFET入力
OPA1656の1回路版
周波数帯域(GB)が大きくオーディオ用オペアンプとしては
スペック面で現在最高性能といえます。
兄弟のOPA1656は2回路入りになります。
秋月電子通商で入手できる方を掲載しました。
音質面は期待したいですが、発振しやすいらしい。
使ってみないと正常動作するかどうかわりません。
⑤OPA1622(DIP化、8PIN化キット、¥700) バイポーラトランジスタ入力
バイポーラトランジスタ入力オペアンプとしては
周波数帯域(GB)は大きく、FET入力オペアンプを凌ぐ。
音質も良いらしい。
⑥LM4572(¥368)
⑤と同じく周波数帯域(GB)は大きく、FET入力オペアンプを凌ぐ。
次のLME49720とは性能は同じですがバランスが少々異なるようです。
評判も良く安価なオペアンプの中では音質に期待できます。
⑦LME49720NA(¥825)バイポーラトランジスタ入力
⑤と同じく周波数帯域(GB)は大きく、FET入力オペアンプを凌ぐ。
評判も良く比較的安価なオペアンプの中では期待できます。
⑧LME49860MAX(DIP化、8PIN化キット、¥1700)
バイポーラトランジスタ入力
手持ちには同等性能のLME49860NAがあり、交換した経験があります。
派手さはありませんが、色付けがなく、抜けも良く、
解像度も高いオペアンプです。
LME49720よりもよりハイファイらしいです。
オペアンプ単体はLME49860NAのSOP版(表面実装タイプ)です。
まずは低コストを徹底したいので、①を試します。システム全体のバランスが重要なので、システムの音質が定まってきてから、他のオペアンプへの交換を検討することにします。
オペアンプ交換作業
既に真空管を取付けてしまっている場合は、真空管を取り外します。
その後、背面のなべねじ(プラスねじ)を外します。
次に前面の六角穴付きねじを外します。
前面からパネルごと基板を抜き出します。
オペアンプ交換前後での試聴・感想
標準のオペアンプNE5532のまま鳴らしてみます。
真空管特有の温かみのある音です。バランスは良い、しかしもう一つキレがなく、解像度に不満があります。音色は真空管の特性が出ていますが、音質はNE5532に依存しているように思います。値段を考えると十分良い音なのですが、不満の残る音です。
次にオペアンプをMUSES8820に交換して鳴らしてみます。
真空管特有の温かみのある音はそのまま、キレ・解像度が増します。急に高級感のある音になりました。
まだ、ハイエンドにはまだ遠い気がしますが、パワーアンプとの兼ね合いではかなり良い音になるような気がします。
②や③のオペアンプに交換すると、間違いなくハイエンドの音に近づくようことが出来るように思います。