Low Cost but HighEnd Sound Systemの構築~その9 スピーカーの自作(3Dプリンターで製作したキャビネットの鳴き対策&試聴・調整)
3Dプリンターで製作したキャビネットの印象
かなり剛性の高いキャビネットの印象です。
フロントバッフルは剛性が非常に高い印象ですが、ここまでの厚み(24mm)は不要かなと感じます。
背板は厚み一定の12mmとしましたが、たたくとかなり鳴きます。
ボディ内のf0共振制御板もかなり鳴いています。
これらの鳴き対策を行わないとまともな音にはならないでしょう。
Damping Wall技術の紹介
一般的には、HighEndスピーカーは、非常に大きな開発コストや人数をかけ、有限要素法の動解析などにより振動解析を行い、鳴りにくいキャビネットを作っているものと思います。小規模の会社や個人ではとてもまねできません。しかし、MusicaNoteでは解析をしなくとも強力な制振が可能な技術を開発しました。
Damping Wall技術は、MusicaNoteの基幹の技術の一つで、キャビネットや、スピーカーユニットのフレームの鳴き止めを行う強力な制振技術です。
ここでは、積極的にDamping Wall技術を適用してキャビネットやユニットの鳴き対策を実施します。
動作原理
構造は簡単で、キャビネットの内面や、スピーカーユニットのフレームに「Damping Wall」となる板(板状のものなら何でもよい)をダンプ用の両面テープ(ブチルゴム系両面テープが良い)を貼り付けるだけです。
Damping Wallとキャビネット等の壁それぞれは異なる振動が発生しているはずなので、ダンプ材は、引きはがされないように伸び縮みしながら、振動を抑え込もうとします。
実装方法
本格的にスピーカーに適用するには、Damping WallとしてMDFをキャビネットの全内面貼り付けるのだが、小さい面や複雑な形状の面には、ワッシャ等をDamping Wallに使うと良い。
ダンプ材には、ブチルゴム系の両面テープが良い。しかし、ブチルゴム系の両面テープは高価なので、
全天テープ(日東電工等)
を使う。建築の防水処理に使うテープながら、両面テープ代わりに使え、Dampinng Wallの貼付け用ダンプ材に適している。
ここで、鳴きの大きい箇所に全天テープを両面テープとして、ワッシャを貼り付ける。
スピーカーユニットへもDamping Wall技術を適用できる。
キャビネットを軽くたたくと盛大に鳴っていましたが、かなり抑制できました。
スピーカーユニットにもうまく適用すると、音の解像度が上がり、安価なユニットも高性能なユニットに変わります。
吸音材無しで試聴してみる
とりあえず安価なユニットVisaton FR10-8(Damping Wall取付済み)を組み込んで試聴してみる。
取付穴はカタログに記載したサイズにしたのだが、少々小さく、ユニットが少し浮いた状態で固定している。(この点は改善が必要。)
最初は硬く荒い感じの音で、どうかなと思ったが、2時間ほど聴いているとこなれてきた。そこからの音の印象は以下である。
① 高域に癖がある。特にバイオリンの高域側に強い響きが乗る。
② 低域のこもったようなモコモコした音が乗る。
③ 低域の量感不足。
バイオリンの高域端は2kHz付近である。
キャビネット内は、約16cm×約16cmのサイズ(内面は平行にならないようにしているが・・・)であり、2kHz付近の定在波が立ちやすい。
このことから、①の原因は、定在波の発生と考えられる。②も同様であると思われる。吸音材取付けが必須であることが分かった。
吸音材の取付け
とりあえず、保管していた切れ端を使う。
フロント側の側面にキルト芯(10cm角ぐらい)を貼付け、
背面側の側面に、羊毛60%のフェルト(10cm×5cm程度の三角形)を貼り付ける。
吸音材取付け後に試聴いてみる
高域の強い響きも消え、低域のモコモコも消えました。全体に透明感が増し、解像度も高い。木製キャビネットとは異なり、明瞭さが際立ち、かといって硬い音ではない。中高域はとても安価なユニットとは思えない高級な音です。
但し、低域の量感が低すぎます。100Hzから急速にレベルが落ちています。
とりあえず音源(PC)のイコライザーを使って低域をブーストし試聴します。
普通のバスレフスピーカーの場合、イコライザーで低域をブーストすると、音が濁り低域はモコモコした音になることが多いのですが、
このスピーカーは、音崩れもなく、透明感が高いままで低域のブーストが利いて高級な音になります。
f0共振制御板が思惑通りの動さではないですが、f0共振は抑えているように思います。
次回は、低域の量感不足の原因考察と対策検討とその実施について記載します。
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