新・オーディオ入門50 プリアンプ編 プリアンプを使用する意義
『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。
プリアンプはなぜ使用するのか?と思われる方もあるかと思います。現在多くの方が使用するシンプルなライン入力のみのプリアンプでは、その機能は入力機器の切り替えと音量調節の2つしかありません。オーディオファンの中には入力機器はCDだけだという方もあるかと思います。また、パソコンのハードディスクにリッピングした音源を再生し、あとはインターネットラジオ、パソコンのDVDドライブでDVDとCDは再生する・・・ということでしたら入力機器はパソコンだけです。そのような場合、プリアンプで使用する機能は音量調節だけです。更には、ボリュームを搭載したパワーアンプを使用して音量調節ですら必要ない・・・ということもあるかもしれません。ひと昔前には、シンプル・イズ・ベストといって、むしろプリアンプなどない方が良いという乱暴なことを書いたオーディオ誌もありました。プリアンプを使用する意義は入力機器の切り替えと音量調節のためではなく、『音楽信号をパワーアンプのために最適化する』ことにあります。音楽信号の電圧レベルやインピーダンスをパワーアンプが受け入れる最適値に調整し、スピーカーやリスニングルームの環境に最適化させることこそ重要なのです。古いパワーアンプをお使いの場合、プリアンプを使用しないでUSB-DACを直接接続すると信号レベルがオーバーして歪んでしまったり、インピーダンスが合わなくて低音が不足したりすることもあります。また、小出力のパワーアンプは利得も低く設定されていることが多く、十分な音量が確保できないことも。プリアンプにトーンコントロール機能があれば積極的に活用してみることをお勧めします。最新のトーンコントロール回路は低歪・ローノイズで、使用したからと言って音の鮮度が落ちることは考えられません。むしろバランスの悪い音をトーンコントロールを使用しないで我慢している様は、良い音楽を聴くというオーディオ本来の目的から外れてしまうことにもなりかねません。