新・オーディオ入門19 MIカートリッジ
MMカートリッジとMCカートリッジに続き、MIカートリッジをご紹介します。MIはムービング・アイアン型を意味します。スタイラス(針)から感知レバーによって本体に伝えられた音楽の波形による振動は感知レバーに取り付けられた小さな鉄片に伝わります。鉄片を真ん中に、片側にはマグネットが本体に固定され、別の側にはコイルが固定されています。マグネットからコイルへと向かう磁束線を遮る位置にある鉄片が振動することでコイルに電気信号が発生する仕組みです。
MIカートリッジは、MMカートリッジやMCカートリッジよりその構造上優れている点があります。微小な振動を本体に伝える感知レバーはできるだけ軽くする必要があるのですが、MMカートリッジでは感知レバーにマグネットが取り付けられていますので振動系の質量が増えてしまい、繊細な音が出にくくなります。
これを改良したのがMCカートリッジで感知レバーにはコイルが取り付けられているだけで軽量化には成功していますが、MCカートリッジには問題点も多くあります。まずは、感知レバーに十分な巻き数のコイルを使用することができないため出力電圧はMMカートリッジの1/10しかありません。
また、コイルから電気信号をとりだすための電線が感知レバーの動きを妨げてしまいます。MCカートリッジは、機械で大量生産することが困難で割高です。
MIカートリッジはMMカートリッジとMCカートリッジの良い所取りです。出力電圧は高く、安価でありながら、音質は繊細でノイズの影響を受けにくくなっています。
MIカートリッジは1950年代にMCカートリッジを実用化させた米国グラド社によって開発されました。カートリッジに電線を接続する4本の端子は赤、青、緑、白に色分けされていますが、これはグラド社の社内規格が全世界に広がったものです。現在グラド社では自身が開発したMCカートリッジはもはや製造しておらず、進化したMIカートリッジのみを製造しています。当社試聴室の標準カートリッジはMI型のグラド社・ステージシルバー3が使用されています。
このカートリッジは10Hz~55KHzと超広帯域で、その帯域は最新のサンプリング周波数96KHzのハイレゾ音源をも上回ります。