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新・オーディオ入門46 プリアンプ編 トーンコントロール

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

最近のプリアンプでは搭載されることが減ってしまいましたが、プリアンプの機能の中で最もありがたいのがトーンコントロールです。 トーンコントロールは音の周波数帯域を低域・高域の2つまたは低域・中域・高域の3つに分割し、それぞれに独立して増減させる調整を可能にしたものです。 1980年代までのプリアンプには必ず搭載されていた機能ですが、当時のトーンコントロールは歪も多くノイジーなもので、 CDが発売されると、使用しない方が良いという声が多くなりました。 最新のトーンコントロールでは、電子回路技術の発達と最新のパーツによって歪感やノイズを感じさせません。

トーンコントロールの使用方法にこれといった規則はありません。実際に音を聴きながら自由に調整していただいて良いと思います。 例えば、リスニングルームの音響補正に有効です。 フーローリングの部屋では床からの反射によって中域が盛り上がる傾向にありますし、 畳や厚手のカーペットの部屋では中域から高域にかけて音が吸われてしまいます。 ソファーやカーテンは高域を吸収し減衰させてしまいます。 こういったものをトーンコントロールで完全に補正することはできませんが、その症状をかなり軽減させることが可能です。 スピーカーの補正にもまた有効です。小形のブックシェルフ型スピーカーでは低域が不足する場合がありますし、 大型のフロアー型スピーカーでは低域がブーミーになることがあります。 スピーカーが設置されている向きや高さが耳の位置に合っていないと直線的に音が伝播する高域は減衰してしまいます。 さらに、古いジャズを聴くときに録音特性上、中域だけが盛り上がって聴こえることがあります。また、モノラル時代のオーケストラの曲では 高域が物足りないものもありますが、これらを聴きやすく調整するのは悪い事ではありません。

『トーンコントールを使用するのは良くない』という雑誌の記事にとらわれて、バランスの悪い音で我慢するのはまったくナンセンスです。