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新・オーディオ入門58 パワーアンプ編 真空管の仕組み
『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。
増幅作用をもつ真空管は1906年に発明され、1914年に量産化されました。100年以上の歴史のある電子パーツですが、その構造は当時も現在も大きくは変わっていません。 人気があるのは直熱3極管(2A3やWE300B等)ですが、ここでは構造が判りやすい傍熱型3極管を例に書いてみたいと思います。
真空管の回路図は上図のようになります。カソードにマイナス、プレートにプラスの電源を接続します。カソードとプレートは離れたところにある金属板ですので、このままでは電流は流れません。 カソードの下にヒーターがあります。これは暖房機のヒーターと同じ意味でカソードを温めています。動作中の真空管が熱いのはそのためで、このときヒーターは電球のように光ります。 この光が外に漏れだしたのが真空管特有の橙色の光です。中学生の理科に出てきたと思いますが、『電流が流れる』というのは回路図を理解するための便宜的な考え方で、実は電子の移動です。 気をつけなくてはいけないのは、電流はプラス極からマイナス極へ流れますが、電子はマイナス極からプラス極へ移動すると考えられています。 真空管内部ではプレートからカソードへ電流が流れると表現されますが、実はカソードからプレートへと電子が飛んでいるのです。 カソードから電子が飛び出すためにはエネルギーが必要です。その熱エネルギーを供給しているのがヒーターということになります。
ここまでを整理すると真空管の動作状態は温められたカソードからプレートに向かって電子が飛んでいる状態・・・なのですが、回路図をよくみるとプレートカソードの間にグリッドという電極があります。 グリッドはその名の通り金属の網です。電子はこの網をすり抜けてプレートへ飛んでいきます。 しかし、グリッドに僅かにプラスの電位を加えると、カソードからプレートへ飛んでいく電子が大幅に減ってしまうのです。 つまりグリッドに僅かな音楽信号を入力するとプレート電流が大幅に変化する・・・これを増幅作用といいます。