無期限休講 Day66「王者の風格」
こんにちは。田中素子です。
近所の公園を通りかかったら、大好きなアナベルが咲いていました。レースの様な白く繊細な紫陽花。スタジオのお庭にも植えたいです。
昨夜は、自粛期間中、毎晩楽しみにしていた、小曽根真さんと神野三鈴さんのライブ配信「Welcome to our livingroom 」53回目にして最終回でした。
三鈴さんの優しい声で「おかえりなさい」と迎えてくださった場所は、小曽根邸ではなく、オーチャードホールでした。
毎年、1年のご褒美に欠かさず通っている「小曽根真クリスマス・ジャズ・ナイト」の会場です。
「クリスマス・ジャズ・ナイト」に初めて行った時、私は三鈴さんの斜め後ろの席に座っていて、三鈴さんが小曽根さんのピアノに合わせて身体を揺らし、本当に嬉しそうに楽しく聴いていらしている姿を見て、なんて素敵な女性だろうと思ったのをよく覚えています。
フィナーレにステージから飛んでくる小曽根さんからのクリスマスカードがキャッチできなくて、残念な気持ちで会場の階段を降りていたら、たまたま1枚落ちていて、喜んで拾い上げた時、バチッと三鈴さんと目があって、あの満面の笑みと可愛い声で「もらえたぁ?よかったねぇ。」と言っていただき、ドキドキしたのを覚えています。
それ以来、三鈴さんのファンにもなって、三鈴さんの舞台や映画も欠かさず観に行くようになっていました。
そんな大好きなお2人の自然体で楽しいやり取りと、言うまでもない小曽根さんの素晴らしい演奏を毎晩聴けるのは奇跡以外何ものでもない時間でした。
きっとお2人だって、お仕事がたくさんなくなっていらっしゃる中で、53日間、無料配信をされるというだけで圧倒的な存在だったのに、大ホールを借り切って、人も雇って、恐らく多額の経費を使って最終日を締め括られた、その表現者やメッセンジャーとしてのスケールの大きさにもひたすら涙が止まりませんでした。
お2人からのメッセージは「今度はホールやシアターに帰ってきてね。」と「芸術やアートに関わる全ての人のところに帰ってきてね。」と業界全体を代表されたものでした。それはもう、個人の視点を遥かに超えて、完全に王者の風格でした。
毎晩8000人以上、昨夜は倍の16000人以上の人達が一緒にライブ配信を聴いていたので、私と同じ様に一気にロスになる人が増えるでしょう。
でも、もう帰ることができない「小曽根邸のリビングルーム」よりも、帰ることができる「コンサートホール」で「またね」と言い合う事で、未来への扉が開かれた気がします。
今日から日常が戻ってる人も多いですね。この期間に得たものを大切に、一歩ずつ踏み出していきます。
田中素子