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レゲトンに収まらない!プエルトリコの音楽カルチャーを背負ったバッド・バニーの新作を聴いてみよう!

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 こんにちは。

 2025年も10日ほど経過しましたが、今年は年始から優れた音楽作品のリリースが続いていますね。筆者も日々それらの作品を楽しんでいますけど、ここ数日、特に熱を上げているアーティストが…

バッド・バニー!

 カリブ海に浮かぶアメリカの自治連邦区、プエルトリコ出身のアーティストで、近年のレゲトンブーム最大の立役者ですよね。そんな彼が日本時間の6日未明にリリースした最新アルバムが『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』。直訳すると「もっと写真を撮っておけばよかった」と題された本作は、彼が非英語圏から生まれた最大のスーパースターである所以を示した素晴らしいアルバムで、筆者もリリース直後から何度も聴き返すほど愛聴しています!


 本作は批評筋からの評価も上々で、彼の最高傑作との呼び声もあります。筆者も「ラテンミュージックの金字塔とされる前々作『Un Verano Sin Ti』と並ぶか、それ以上」だと思っていて、彼の作品でもトップクラスのアルバムであることは間違いないでしょう。

 では、本作の何が素晴らしいか?それは…

流行りのレゲトンに留まらず、
故郷のルーツミュージックをも包含し、
プエルトリコの多様な音楽カルチャーを
全世界へ向けて発信した作品だから!


 バッド・バニーの生まれたプエルトリコは、カリブ海に浮かぶ人口約300万人の小さな島国。アメリカの自治連邦区にあたるものの、住民の大半はスペイン語を話し、また文化面においては、本国アメリカより周辺のカリブ海の国々の影響を色濃く受けています。そのためプエルトリコは、カリブの国々と相互に影響を与えながら、多様な音楽カルチャーが発展していきます。00年代以降に世界へ波及したレゲトンは、その代表格というわけです。

 多様なプエルトリコの音楽シーンに対し、彼は深い造詣とリスペクトを持って、最新作に余すとこなく反映させました。もちろん全編スペイン語。流行りのレゲトンを軸に据えながらも、プレーナ、ボンバ、ヒバロのようなプエルトリコの伝統音楽に、ニューヨークのプエルトリコ移民が発展させたサルサなど、この1枚でプエルトリコの音楽カルチャーの入門書にもなり得る充実した内容です。実際、筆者もプレーナやボンバについて、本作を聴いて、「深く調べてみたい!」と思うようになりましたからね。


 アルバム冒頭の「NUEVAYoL」から、このアルバムの良さが凝縮されているんですよね。サルサの名曲「Un Verano en Nueva York」のサンプルを、デンボウのビートで現代風に再構築していて、いきなりグッと掴まされるんですよ。

 また歌詞においても、ウィリー・コローン(サルサアーティスト)、フリーダ・カーロ(画家)、フアン・ソト(野球選手)など、ラテンアメリカの偉人達への言及があり、バニー自身もそこに名を連ねるスターである誇りと自覚が感じられますね。


 アルバムの中でも指折りの人気楽曲となっている「BAILE INoLVIDABLE」なんて、もろにサルサですからね。サルサマナーに倣いつつ、現代的なアレンジとメロディーセンスでかなり聴きやすく仕上げています。

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