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フィジカルで聴く 90年代の邦楽 ③(ソロシンガー・女性編)
90年代は自分にとっての青春時代。
その頃の音楽は自分にとって色々と思い出深いものが多い。懐かしみながら聴いていると、ふとその時の情景や感情や色や匂いまで思い出すことがある。時には具体的な出来事は思い出せないのに、その時のつらかったり切なかった記憶だけが蘇り、胸が苦しくなることもある。音楽というのは驚くほど記憶の奥底に潜り込んでいるものだ。
その青春時代であった90年代の邦楽をフィジカルで聴いて楽しむ、という企画をやってみようと始めたのだが、あれやこれやとカテゴリーを考えてみたのだけれどもまとまらず。悩みすぎた結果、大雑把にええいっとソロシンガーの男女それぞれ特集しちゃおうと。第2弾は男性編でしたが、今回第3弾は「ソロシンガー・女性編」。またあれ入ってない、これはいっていない!というものが多数あるかと思いますが、どうぞお許しください。
①
GAO
Roi Roi(92年)
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とにかくこのハスキーな声にやられた。
30年経った今聴いても揺るぎない名曲
流れる季節に 君だけ足りない
この歌い出しの歌詞とGAOのハスキーヴォイスがたまらなく良い。いろいろな想いを胸に抱きつつも、”サヨナラ”という一言に想いを込め全てを手放す、そんな感情がGAOの歌声やギターのバッキングから伝わる。そして何よりこのスネアの音。シンプルに突き抜ける高くて硬い音が、この前を向いた”サヨナラ”という歌に本当にマッチしている。J-POP史に残る名曲(と個人的には思っている…)。
「サヨナラ」
②
Chara
Soul Kiss(92)
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紙ケース付き!
Chara がデビューした91年に、彼女のようなウィスパーヴォイスで歌うヴォーカリストはいたのだろうか? 何れにせよ、最初のインパクトは衝撃だった。僕がCharaを知ったのはベストアルバムに収録されていたこの曲から。浅田祐介のグルーヴセンス、ローリー寺西のハイトーン・ヴォイス、そしてCharaのオンリーワンの歌。なんという化学反応だろうか。これまた30年経っても格好いいままだ。
「愛の自爆装置」
ちなみに、ここ数年はChara の息子さん HIMI にハマっています。
末恐ろしい才能です。
③
橘いずみ
どんなに打ちのめされても(93年)
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ブックレットで参加ミュージシャン知れるのはやっぱりフィジカルの良いところ。
橘いずみといえば、「失格」や「永遠のパズル」など売れた曲、力強い曲のイメージが強いのかもしれないが、僕にとってはこの「富良野」。
失恋の痛みを分かち合い、慰め合う友へ向けての曲だろうか。優しくストレートな歌が心に沁みる。
「富良野」
④
小島麻由美
セシルのブルース(95)
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このアルバムが出る少し前、サニーディ・サービスが「若者たち」という、ある種この時代へのカウンターカルチャーとなる凄いアルバムでデビューした。聴いた瞬間、今までの自分の洋楽主体の音楽趣向は一気にブレた。その感覚がまだ冷めない中、この小島麻由美の『セシルのブルース』が発売。追い打ちをかけるように、どんどん自分の中での音楽感が変わり幅が広がった。これはジャズ? 昭和歌謡? いやぁ、邦楽って格好いいなとあらためて気付かせてくれた1枚、1曲。
「恋の極楽特急」
⑤
Bonnie Pink
Heaven`s Kitchen(97)
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外資系CDショップでこの曲を初めて聴いた時の衝撃は忘れない。極めて洋的なサウンド&メロディなのに日本語の歌詞が乗り、聴いていると途中からはほぼ英語。そのあまりの不統一っぷりが格好良くて強烈に耳に残った。そしてさすがはトーレ。ボニー・ピンクの魅力を最大限に引き出して、音がこれでもかというくらい太く粗い力強いアルバムに仕上げている。
「Heaven`s Kitchen」
⑥
Ellie「I`ll Be Anything」
Bitch In Zion(96)
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正直に言えばやっぱりラヴ・タンバリンズのほうがソロよりも好きだ。でも成功したバンドでのサウンドを踏襲せず、一気に本場のR&Bに寄せた、やりたいことをやろうとしたそのパイオニア的な挑戦心が格好いいと思った。純粋に曲としても「24hours」とか他にもすごく好きな曲があるんだよね。
*サブスク未解禁。
「I`ll Be Anything」
⑦
浜田真理子
mariko(98)
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最初は「あなたへ」という曲を知り、そこから遡って聴いたアルバムに収録されていたのがこの「のこされし者のうた」。大切な人を亡くした経験を持った人には刺さる曲だろうな。実際自分がそうだったように。
*サブスク未解禁。
「のこされし者のうた」
⑧
朝日美穂
ONION(98年)
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最初はこの癖のある歌い方に若干抵抗があったのだが、気がつけばどっぷりとハマっていた。なんて歌なんだろう。どうやったらこんな不思議な曲をかけるのだろう。鹿島達也の太くて丸いベースラインと朝日美穂の独特の歌が絡む変わったグルーヴを醸し出す曲。
「Momotie」
⑨
Aco
absolute ego(99年)
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アルバム全体どれほど聴いたことか。1曲目の「Prologue」からラストの「太陽」まで隙のない全13曲。恐ろしいほど高いクオリティのアルバム。Acoのソングライティングと唄が炸裂し、それを電気グルーヴを脱退した直後のマリンこと砂原良徳がアルバムの最初と最後、そしてヒット曲のシングル「悦びに咲く花」などをプロデュースしたことが大きいのかもしれない。それでも「SPLEEN」や「哀愁とバラード」などプロデュースが他の人でも、アルバム全体を纏う空気に統一感があることも大きい。
そして、クレジット見るとバイオリンでHONZIやギターでKJ、古川昌義など豪華メンバーが参加している。
「喜びに咲く花」
⑩
宇多田ヒカル
First Love(99)
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オートマティックはレコードでも所有。
凄すぎて言う事何も無い(笑)。「Automatic」の衝撃的なデビューはもちろん、2ndシングルのこの曲聴いたとき、いやぁ、とんでもない日本人が出てきた!と思った。あれからはや25年。全アルバムを聴き続けているが、常にキャリア最高を築き上げる才能にはただただ脱帽です。特に現段階での最新アルバム、BADモードには1stに近い衝撃を受けました。
それにしてもこの曲のサビのヴォーカリゼーション、すごいですね。
「Movin`on without you」
さて、今回は「フィジカルで聴く 90年代邦楽」第3弾(ソロ・シンガー 女性編)をお送りしました。まだまだ他にもこの時代に素敵なソロシンガーたくさんいるかと思います。おすすめアーティストいたらまた教えて下さい!では、次回はいよいよバンド編をやってみたいと思います。
読んでいただきありがとうございました!