フィジカルで聴く 90年代の邦楽 ⑤(バンド編 95年)
1995年は90年代の中でも自分にとっては特別な1年だった。日本のバンドで最も好きなバンドとなったGreat3がデビューし、渋谷系のムーブメントに少し疲れを感じていたところに、サニーディサービスが邦楽からの影響を全面に押し出した「若者たち」をシーンにぶつけてきたり、その渋谷系からは、主たるところに位置していたラブ・タンバリンズがネオ・ソウルのような素晴らしいアルバムをリリースしたというのに、突如解散してしまったり・・・。極めつけは、自分の聴く音楽の選択にはなかったアイドルグループのSmapが、世界の頂点とも言えるミュージシャンたちを起用してアルバムを作成したことだった。このアルバムのトラックの格好良さは半端じゃない! ドラム好きの自分のとっては、ヴィニー・カリウタ、オマー・ハキム、バーナード・パーディー、デニス・チェンバーと聞いて心ざわつかないわけがない。このアルバムには日本のバンドたちはかなり参ったんじゃないだろうか。そんな95年は、単年で「フィジカルで聴く 90年代邦楽」をお送りいたします。またお付き合いくださいませ。
①
Great3
Richmondo High
日本のバンドでこれほどハマったバンドは無い。
ライブに行った回数もおそらくGreat3かフィッシュマンズが一番多いだろう。この1stアルバム出たときはロッテンハッツが分裂して出来たバンドとは思いもよらず、ただただその様々なジャンルを取り入れたオルタナ感覚やPOPセンスに魅了されていた。今でも日本のバンドで一番好きだろうな。
1st名曲揃いなのだけれども、時が経てば立つほど好きになった曲はこれ。「Summer`s Gone」
②
サニーデイ・サービス
若者たち
邦楽においては、洋楽要素が色濃く出ているバンドや、極めて邦楽臭がしないバンドばかりを聴いていた。それが格好良く、邦楽を聴くにあたっての最初のフィルターとなっていた。そんな頃に登場したアルバム、「若者たち」の邦楽ど真ん中っぷりにかなり衝撃を受けた。邦楽格好いいやんけと。サニーデイのこのアルバム聴いてからはっぴいえんども聴いたし。
ビーチボーイズから引っ張ってきたのだろう、同タイトルのこの曲がサニーディとの出会い。
「素敵じゃないか」
③
N.G.3
the magic garden of sweet N.G.3 music
すごく好きだったバンドで、下北でライブも観ていたはずなのにずっと忘れてしまっていた。持っていたCDもサブスク未解禁なのに、音楽のリスニング環境を一度サブスクに全面移行したときに手放してしまったせいで完全に存在を失念してしまっていた。不本意だが、ハードオフのジャンクコーナーで未開封のアルバムを発見。突然音が頭の中で鳴り、記憶が蘇り大興奮。いやぁ、やっぱ大好きだわ。
※サブスク未解禁。
「Suzanne」
④
スパイラル・ライフ
FLOURISH
理由は何だったか知らないのだけれども、当時スパイラル・ライフを堂々と好きだと言うのが若干憚れる空気があったようだ(なんでだろう)。そういうのにとても鈍い自分は「フローリッシュ聴いた?ねぇ、聴いた? やばいで」と知人に言いまくっていて空気読めない奴だったー。とかなり後に友人と飲んでいるときに笑いながら言われた。
ドクター・ストレンジ・ラブの根岸さん(ベース)、古田さん(ドラム・脱退してしまったが)がバックを支えるPOPな曲。イントロはワンダー・スタッフの「Caught in my Shadow」そのままだが、このあたりもフリッパーズ方式なのだろう。でもポップでとても良い曲。いや、やっぱスパイラルは日本のシューゲイザーバンドとして評価されるべきバンドだと思うな。
「Maybe true」
⑤
ザ・チャン
DAY OFF
チャンについては、別途The Changの全アルバムをフィジカルで聴くでアルバムの魅力について綴っているので、そちらも見ていただけると嬉しいです。このアルバムの素朴感は派手な90年代において特別だと思う。
「春一番が吹いた日」
⑥
Tokyo No.1 Soul Set
TRIPLE BRREL
アイズレーの70年代のアルバムが好きなので、初めて聴いたときは正直違和感があり、戸惑った。なにせこの曲のバックは「Love the One You`re With」そのままだからね。これはパクリとかいうレベルじゃなくて、やっていいことなのか?と。
まだまだヒップホップの文化も手法も知らなかった当時の僕は、とてもドキドキしながらも次第にこの曲の沼にハマっていった。そしてビッケのフロウと呼んでいいのかわからない文学的で独特な語りも、Tokyo No.1 Soul Setにハマった大きな理由の一つだ。
余談だが、東京の豪徳寺にあったビデオレンタル店でアルバイトをしていたとき、ビッケがお客さんとして来店して握手してもらったのはいい思い出。「黄昏’95~太陽の季節」
⑦
Love Tambourines
Alive(95)
ラブ・タンバリンズデビューフルアルバムにして唯一のアルバム。ずっとマキシで素晴らしい曲がリリースされ、当時アルバムはまだか~と待ち続けていた。やっとアルバムが出て聴き込んでいたら、まさかの解散。いやぁ、そりゃないぜ。
※サブスク未解禁
「marry me baby」
⑧
スマイル
SMILE-GO-ROUND
かなり過小評価されているバンドだと思う。1stのジャケ(オアシスもどきみたいなヤツ!)やバンド名(デビューに合わせて変えた)、バンドの打ち出し方などから誤解を受けたと個人的には思っている。音の本質を捉えるとこの時代の日本のバンドでゼペット・ストアと並んでUK的な音を出していると思うし、決してウレセンを狙った軽い音ではない。かなりコアことをやっている。アルバム1曲目の「And We Go」から「Loser」の流れは見事だし、サウンドのこだわり、メロディ等どれも本当は玄人好みじゃないだろうか。今でもアルバム4枚全てめちゃくちゃ好きだ。
そして長期にわたり売れたこの1stシングル「明日の行方」。
単純にめちゃくちゃ良い曲だと思う。メロディも歌詞もすごくいい。もう30年近く飽きることなく聴き続けている。
⑨
レピッシュ
ポルノ ポルノ
レピッシュといえば「パヤパヤ」なんだろうけれども、恥ずかしながら僕はこのアルバムしか知らない…。このアルバムは実に不思議なアルバムで28曲もクレジットにあるのだが、数秒しかない曲なども多々ありバラエティ豊かで面白い。その中でも最初に知ったこの「プレゼント」はミドルテンポのオルタナチューンで格好いい良い曲だ。スカバンドだと思っていたのだが、これほどロック色が強いとは思わず驚いた。
⑩
ザ・ハイロウズ
↑The HIGH-LOWS↓
ブルーハーツは初期3枚で聴き込むのはストップしていた(一応全てフィジカルで持ち、聴いているけれども)。そんな中、ヒロトとマーシーの新しいバンド、ということで一応聴いた。正直言っておお!!という衝撃はなかったが、このロックへの初期衝動的な音を鳴らし続けられる凄さにやられた。これを続けるピュアな感覚がホント凄いなと。そして、元ネタはあれども、この日曜日感は最高だ。
※サブスク未解禁
「日曜日よりの使者」
振り返ると95年の時代の音、みたいなものが特別にあるわけではない。90年代の中で、95年にリリースされたをアルバムがたまたま好みのものが多かった、というだけのことだと思う。それでも、こうして見るとやはり大好きなアルバムばかり。今回は90年代の中で95年1年だけを切り取って「フィジカルで聴く90年代の邦楽」をお送りしました。次回は96~97年の回をお送りしたいと思います。またよかったら読んでもらえると嬉しいです!
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