NAOKINO: LIFE is PLAY (1)

NAOKINOというシンガーソングライターがいる。
歌詞、メロディ、歌唱、演奏。
どこをとっても優れており、誰に聴かせても普通に聴けると思う。
僕は、彼に出逢った12年ほど前、あまりにもスムーズなJ-POPだと感じて、あまり好ましく思わたなかった記憶がある。
だが、CDをiPodに取り込んでくりかえし聴いているうちに、
「あ、今、NAOKINO、聴きたいな」
と感じる時間が出てきた。
気付いたら、NAOKINOの歌が生活の一部になっていたのである。

NAOKINOが2023年12月にアルバムをリリースした。
旧作の再録を含む全11曲。(僕の一番好きな歌は、再録されていないのが残念。)
このアルバムについては、NAOKINOのスーパーファンである「まりこ」さんが、すでに素敵なレビューを書いている。
彼女は全身全霊でNAOKINOファンをやっているので、そこに付け加えられるような何かなどありはしないのですが、じょりこなりの聴き方を紹介できたらと思います。

総評

僕の理解では、このアルバムは「すべての音」がNAOKINOによって作られている。旧作は、バンド形態であったり、ギターデュオ形態であったりしたのだが、本作は1人宅録の形態である。しかし、音は全然さびしくない。多重録音を駆使して、バンドサウンドに劣らない豊かな音が流れている。逆に言えば、これこそ、NAOKINOの頭の中で鳴っていた音なのかもしれない。
全体的に言うと、切なさ成分は控えめであって、聴く人をやさしくハグするような印象である。ときどき、NAOKINOの決意表明のように感じる。
「自分は、出会う人、それぞれをやさしく抱き締め、サポートするぞ」と。

4曲目「金木犀」


順不同で、印象に残った歌を紹介してみる。
まずは「金木犀」

日暮れが随分 早くなったから
迎えにいくよ 駅で待ってて

僕を見つけて 嬉しそうに
駆けてくる 君を抱きしめたくなる

騒がしい大通りは避けて 紺色に染まる夜へ 溶けてしまおう

2023年秋のライブでは毎回演奏されていた歌である。NAOKINOの旧作の中では「あいづち」という歌も、こういうとても具象的な歌詞であった。しかし、僕は、この「金木犀」は、表現は具象的であるけれど、どこか理想化された思い出を、金木犀の香りをトリガーにして思い出しているものと感じるのである。

金木犀が香る歩道で 突然のキス
時が止まればいいのに

もちろんこれは僕の解釈であって、NAOKINOは「みなさんが自由に想像してもらえばよくって、それぞれが全部正解なんです」みたいに言うだろうけど…
僕も自分の恋愛遍歴の中で、あまりにも美しい瞬間があり、このまま時間が止まればいいのに…と思ったことは何度もある。
しかし、現実には、刹那は刹那であって、永遠ではない。
僕は、この歌の主人公は、金木犀と素敵な瞬間が関連づけられた思い出として心にしまっていたものと思ってしまう。

NAOKINOはクラシックギターを学んでいるので、この歌のギターはそれを楽しむことができる。ピアノの伴奏をそれに重ねている。
歌唱を再確認すると、NAOKINOは嬉しさをコップにひたひたに湛えて、ギリギリのところでこぼれないようにしているように感じる。
(まだまだ続くので、一旦休憩。)



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