2010年代ベストフィルム100

テン年代が終わり2020年代が始まった。見ていない作品も数多いのでもう少し粘りたかったが、見ていないものは見ていないということで、寧ろ堂々とベスト100を出させてもらう。順位については一応考えたが意味のないもの。100本のリストとして見てほしい。ちなみに自分は現在20歳、つまり人生の半分をテン年代に過ごしたといえる。したがって今までリアルタイムで見てきた映画のほとんどがテン年代のもの、自分の今のところの映画人生のすべてとも言っていい。見ていないものもあるというのは前提としていったが、そうはいっても100本の選定にはかなり苦心し、漏れ出てしまったものも多数。ならば別に200とかのリストにしてもよいわけだが、そこをあえて100に絞ることによって、自分にとっての映画人生で最も大切な100本、自分の基準になっている100本を選ぶ行為にもなっている。前置きが長くなってしまったが以下そのリスト。ちなみにトップテンの10作品に関しては軽くコメントを添えている。



1.ソーシャル・ネットワーク

個人的2010年代ベストは、現代の映像技術を駆使して屈強に捉えられた、可笑しくインテリジェンスで、切なく孤高な青春映画。フィンチャーによる鬼のような演出とカッティング。神業的な情報量の乗せ方と切れ味。反復と最後の表情の切なさで、中学生の時狂ったように20回以上は見ていた。

2.インヒアレント・ヴァイス

ドラッグで沈むような夢想世界と、過去の恋愛の記憶、アメリカンカルチャーという、全てのエモーショナルな要素が集結したPTA作品。マリファナを求めて土砂降りを走る男女のシークエンスの歪なロマン。不可思議なピチョン世界のノワールも。あまりに訳が分からなく美しい傑作。

3.ムーンライト

ケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』やジョン・シングルトン『ボーイズ'ンザフッド』など、過去から現在までのブラックカルチャーの名作たちとの共通性と、それらの事実を飛び越えるあまりに普遍的な美しさに満ちた恋愛映画。食事、浜辺の映画的な反復は、そこらのアート映画よりも語るべき繊細な細部であり、この映画の豊かさを示しているようにも思う。

4.ドラッグウォー 毒戦

生死をかけ戦いで、儚く散る方を選択する男たちを撮り続けてきたジョニー・トーが、生き残ることに執着した男たちの凄惨でドライなアクションを撮った異色作。クライマックスの銃撃戦の視点の豊富さ、動線の演出は究極。凄まじくブラックなコメディでもあり、バレるかバレないかのノワールでもあり、面白くない瞬間が一つもない。

5.きみの鳥はうたえる

過言ではなくここ数年の日本映画で一番好き。個人的に好きな男2人+女1人青春映画の傑作なのは言わずもがな、この何でもない時間の多幸感は、どの日本映画を探しても見つからないだろう。この映画特有の時間の流れ方をしっかりと捉え、それに答えるかのように、気持ちよく収まる役者たち。函館のクラブシーンは今まで見た中で一番美しく素晴らしく、かつ納得できるクラブシーン。酒を飲みまくった夜を抜けた、朝の柔らかい光の気だるさ。このような日本映画こそもっと見たいと切実に願う。

6.アンストッパブル

究極の映画作家トニー・スコットの遺作、というだけで十分だが、『ジョーズ』まで遡るようなモンスター映画的スリルの継承、ショットで積み重ねられていく映画的ロジックとエモーションと、紛れもないテン年代活劇映画の傑作。全ての映画がこのくらい面白くあってほしいと望まざる終えない、問答無用の面白さ。

7.キラー・スナイパー(原題:killer joe)

衰え知らずのフリードキンによるキレッキレのコメディ。あまりに暴力的でありながら、殺人シーンを劇中ほとんど映さない、故にさらに生々しい生き地獄的暴力が展開される究極っぷり。役者のアンサンブルと、クライマックスの地獄の食卓と怒涛の修羅場シーンと見所しかない。あんまりな邦題と、セル無しのレンタルスルーのみという国内の待遇の酷さはいまだ許しがたい。

8.女っ気なし

この10年で最高のバカンス映画。素晴らしすぎて泣ける。喜劇と切なさの同居。主人公のディテールの描きこみの充実。バカンス映画というのはこうでなくてはと言わんばかりの、イベントの数々。不器用な男というのはどうしてこうも報われないものなのかと悶絶しながらも、あまりに美しく切ない展開の数々と、繊細な演出が実在感とドラマの間を彷徨う。

9.ベイビー・ドライバー

ポップな現代映画でありながら、根底にはウォルター・ヒルやマイケル・マンへの、エドガー・ライトからの愛が溢れたクライムムービー。現代版『トゥルーロマンス』の趣もある。MTV演出の映画でいられる限界であり究極系。ボーイミーツガールものとしても完璧であり、非の打ち所のない楽しさがある。クライマックス30分の怒涛のバイオレンスと疾走、落下の堂々たるアクション活劇っぷりに興奮しすぎて泣くなど。

10.ア・ゴースト・ストーリー

デヴィッド・ロウリーという化け物のような才能。ここ数年でも屈指のロングショットや編集。時間と土地、人々の記憶の物語。彼が残した音楽を聴いているルーニー・マーラと、2人の記憶のクロスカッティングにはボロボロ泣く。確かに自分は生きていた、彼女の隣に存在していた、という証を求めて。幽霊映画として見ても、ある種のSFとして見ても、凄味しか感じない。

11.サウダージ
12.007 スカイフォール
13.アンダーザシルバーレイク
14.ガーディアンズオブギャラクシー
15.ロストシティz
16.トゥルーグリット
17.her
18.レゴムービー
19.悪の法則
20.マッドマックス フューリーロード

21.エンドオブウォッチ
22.ヘレディタリー 継承
23.世界に一つのプレイブック
24.建築学概論
25.ミッションインポッシブル ゴーストプロトコル
26.ファミリー・ツリー
27.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
28.クロニクル
29.ブルーバレンタイン
30.ペイン&ゲイン

31.ゴーンガール
32.スティーブジョブス
33.コンテイジョン
34.ウルフオブウォールストリート
35.ヒーローショー
36.イットフォローズ
37.スターウォーズ フォースの覚醒
38.インセプション
39,パーソナルショッパー
40.横道世之介

41.小悪魔はなぜモテる(原題:easy a)
42.フォードVSフェラーリ
43.スーパー8
44.21ジャンプストリート
45.6歳の僕が大人になるまで
46.フライト
47.ブンミおじさんの森
48.セブンスコード
49.サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者
50.ドラゴンタトゥーの女

51.奇跡
52.君が生きた証
53.ラブアゲイン
54.桐島部活やめるってよ
55.ヴィジット
56.アウトレイジビヨンド
57.スパイダーバース
58.ドライヴ
59.パラサイト 半地下の家族
60.冷たい熱帯魚

61.溺れるナイフ
62.コックピット
63.ブラックハット
64.凶悪
65.ワイルドスピード スカイミッション
66.裏切りのサーカス
67.ボーダーライン
68.サニー永遠の仲間たち
69.ブリッジオブスパイ
70.バンコクナイツ

71.タンジェリン
72.最後まで行く
73.ラッシュ
74.ジャージーボーイズ
75.13時間
76.エヴリバディウォンツサム
77.ヴィクトリア
78.パラノーマン ブライスホローの謎
79.ランオールナイト     
80.新しき世界

81.人生はローリングストーン
82.クリーピー
83.海にかかる霧
84.アノマリサ
85.葛城事件
86.最後の追跡
87.コクソン
88.マイヤーウィッツ家の人々
89.FRANK
90.ジェーンドゥの解剖

91.スーパー!
92.フルートベル駅で
93.アリー スター誕生
94.死の谷間
95.ヘイトフル・エイト
96.オールユーニードイズキル
97.オキュラス 怨霊鏡
98.ルーパー
99.世界一キライなあなたへ
100.ビーストオブノーネーション 


このような感じになったが、並べてみると比較的ポップなリストになった感も。全体的に青春映画、ホラー映画多め。この辺は好み。多分ほかの識者たちがあまり挙げなさそうなJ・J・エイブラムス作品を2本と、ハリウッドメジャー大作もできる限り入れた。100本も選んだ挙句に漏らした次点としてはコーエン兄弟『インサイドルーウィンデイヴィス』、ウェス・アンダーソン『グランドブダペストホテル』、ジェフ・ニコルズ『ミッドナイトスペシャル』、ナット・ファクソン&ジム・ラッシュ『プールサイドデイズ』、ジェームズ・ワン『死霊館 エンフィールド事件』、ライアン・クーグラー『クリード』、ロバート・エガース『ウィッチ』、中川龍太郎『四月の永い夢』などなど挙げればきりがない。が、現状挙げるとするならばこの100本。自分が生まれてから今の時点で人生の半分を過ごした10年間の代表としたい100本である。

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