『越後奥三面-山に生かされた日々』デジタルリマスター版を見た感想
昨日『越後奥三面-山に生かされた日々』デジタルリマスター版を映画館で鑑賞してきました。
この作品は、新潟県北部にある朝日村(現村上市)奥三面がダム建設によって消滅する直前の暮らし1980年からの4年間を記録したドキュメンタリー映画です。
村人たちは山からの恩恵を受けながら生活し、自然との共生が描かれています。作品はナレーションや説明を極力省き、リアルな生活が記録されています。
なぜこの作品に興味を持ったかというと、大前提として私が農村部の暮らしや文化に興味があることもなのですが、この奥三面が私の出身地ととても近かったのです。
私の出身地は新潟県朝日村(現村上市)で、この映画の舞台となった奥三面から車で30分ほどの距離にあります。
私が生まれた時にはすでに奥三面はダムに沈んでしまっていましたが、祖母や両親、また小学校教育の中でも奥三面の集落について話を聞くことが何回もありました。
話を聞くだけでは、実際にどのような生活をしていたかイメージが湧かないもの。実際に見てみようと思った次第です。
実際に映画を見た感想
1.ありのままの農村部の生活が春夏秋冬に渡って記録されている
この作品では、小さな農村部の四季ごとの行事が映されています。
奥三面の人々が季節の変わり目や狩猟・収穫の後などに神様にお祈りや捧げ物をするシーンが出てきます。自然の恵みに感謝しながら、四季の季節の移り変わりを体で感じながら生きていく。稲穂の収穫前に、神様に小さな稲をお供えしている場面、雪が降ったあとにお団子を家の最寄りの辻に刺していく場面、足を悪くして農作ができなくなったおばあちゃんが神社へのお参りだけは自分で行くと言い、杖をつきながら歩いていった場面。どのシーンも「集落の人が行なっている慣習や行事にはそれまで培ってきた地域の歴史や文化、思想が関連しているんだろうな。集落の人が大切にしていることは何だろう」と考えさせられるシーンばかりで、とても印象的でした。
さらに奥三面の歴史を遡ってみたい、と思いましたね。
2.春の風物詩、ぜんまい小屋への移住
ぜんまいを採るためにぜんまい小屋を建てる、その小屋に家族で移住する、小中学校にぜんまい休みという特別休暇がある、など今では見られないことばかりですね。
ぜんまい採取で一年の収入の半分を賄っているというのですから、驚きです。
昔は煮物にぜんまいをよく入れたものですが、今では登場する頻度も少なくなっているのではないでしょうか。
昔は、山菜やきのこはもっと身近にある食材で、食卓によく並ぶ一品でした。しかし、現代では農村地に旅行に行った際に食べるものや、スーパーで買う季節の高級品というような認識の方が多いかもしれませんね。
3. 消えゆく暮らしへの思い
奥三面の集落は、ダム建設の影響で現在は水底に沈んでいます。この作品が記録したのは、もはや失われた生活の記憶です。最後に出ていた「やっぱり山は、山はいいなあ。山、山、山、山、山。俺だなって感じ。」の言葉。すごく心に残っています。山、と繰り返し発する姿。山での暮らしへの思いが、表情や声色から溢れていました。ここのシーンでは思わず涙が溢れてしまいました。春夏秋冬の彼らの生活を見た後ですから、余計に。
4.まとめ
懐古的で、エモーショナルな作品でした。方言が同じであったり、行事も似ているものもあったりで、自分の出身地や今は亡き祖母のことを思い出してしまいました。
劇場を後にして、現代に生きる自分との対比に思いを馳せながら帰路につきました。
「自然とどうやって共存していくべきか」「自分はどのように生きていったらいいのか」とか、答えが見つからないようなテーマについて考えだしてみたりしました。そのくらい、自分にとっては大きな影響力をもつ作品でした。
機会があったら、この作品の続きである『越後奥三面・第二部 -ふるさとは消えたか-』を見たいなぁと思います。