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NOT3行日記 23/12/15「おしゃれになりたい」

今日支援センターで会ったママさんがとても素敵な方で、ツヤのある栗色のショートカットで、シンプルなニットと細身のパンツがよく似合っていた。

自分らしさ?自分の好きな雰囲気の装い?がよく分かっていらっしゃるような感じで、印象的だった。服装もそうだけれど、そのママさんの柔らかくにこやかな話し方や優しい笑顔が素敵だったのもあるかもしれない。

いいなあ、自分も周りから見たらあんな風に、自分によく似合う服装ができて、にこやかでありたいなあ、と思う。
好きな服、ブランド、髪型などについて考えてみると、これまでかなり(地味よりの)無難を選んできた。
似合っていると思うしそう言われたこともあるし、それはそれでいいのだけど、どうしてもおしゃれに関しては冒険できなかった。
というか、冒険してはイタイ結果で終わってしまった、というのが一番大きいかもしれない。

あとは、昔からおしゃれに余裕を割けなかった経済的事情や、節約しなくてはいけない、いっときのファッションにお金をかけてはもったいないという思い込みもあった。そしてファッションセンスのなさも相まって、なるほど相当のおしゃれをしてこなかったな、というのが今の自分への見解である。

小さい時はお下がりが多く、物心ついた時からも自分の好きな服を選んでもらうことが少なかったなと思う。
小4の時、茶一色の薄手の長袖をきて街のお祭りに出かけたら、クラスメイトから「ださww」と笑われた。まあ、お祭りというと小中学生にとっては友達と楽しむレジャーの一つだから、気合いを入れて遊ぶ場でもあるだろう。みんなフリルが付いていたり、ピンク色のもこもこを着ていたりしてそれはそれはかわいい格好だった。それに比べて自分は、まあ惨めな気持ちになった。
それ以来地元の祭りには一切参加していない。

小6の夏、たまたま持っていた半袖が小さくなってしまったので、一着だけ買ってもらえることになった。母と一緒に衣料量販店に行ったが、その時私は少女漫画誌「りぼん」を読んでいて、強く優しくかっこいいギャルが出てくる漫画を好んで読んでいた。
渋谷系のスタイルというのに少し憧れもあって、その影響でスポーツ風ハイビスカス模様が入ったピンクのカットソーを選んだ。母親は、こういうのが好きになったのねという感じでとりあえず購入してくれた。
ほとんど自由に服を選んだことのなかった私はそれはもう浮かれた。夏休みの子ども会かプールでそれを一度だけ着て出かけた。
クラスメイトに会った。ピンクのハイビスカスの私を見て「うわ…そんなん着てるの?しかもピチピチじゃんww」と明らかにおかしいものを見るような感じで言ってきた。
それでもう私は自分のチョイスに全く自信をなくしてしまい、二度とそのカットソーを着ることはなくなった。

そのうち思春期に入り、腕や顎に肉がつき、太ってみえる自分が嫌で嫌でたまらなくなり、わざとメンズの大きめのTシャツを買って着たり、ボーイッシュな服装を心がけたり、とにかく黄色やオレンジ、ピンクや赤などの服は一切着なくなった。
よく食べ物をこぼす(と親に言われてきた)ので、高校に上がるまでほとんど白も着たことがなかった。
髪型も変だったと思う。前髪だけワンレンぽく分けて伸ばし、あとは後ろで髪を一つ結びにして、もうそれでいいと思っていた。(漫画のキャラっぽいなと思っていたのだ)
母親が何か別の事柄にブチギレて私のワンレン前髪を左右ともハサミでジョキッと切り、「今あんたがどれだけ無様な髪型か分かるか?」と言われ、何となく変に見えていた娘の髪型にいい加減嫌気がさしていたことにはまあ納得ができたが、これが私なりのおしゃれの表現方法だったんだしこれまで私の装いに構ってこなかったくせに何いきなりキレてんだこの人、くらいには自我があって心の中でずっと反発していた。口下手なので口答えはできなかったけれど。一言ったら十返ってくるし。うるさいし。
一応、思えば確かに変というか、全然かわいくない髪型ではあったよね、と省み、後にヘアスタイルの変化をもたらしてくれたことには感謝している。

(後日成人してから、その頃の服装について母親と話す機会があったが、◯◯(私の妹)はファッションセンスがあるけど、あんたはないねーと言われた。ものすごくショックだった。明らかに私よりも妹との服の買い物の回数が多かったのに。私は選ぶ機会はほとんどなかったのに。悲しすぎてお祭りなどでの一件を話し、トラウマがあるんだよ、と伝えた。母親はそれにびっくりしていた。比べて言うくらいならもっと似合う服について一緒に考えて欲しかった、勝手に私を諦めていたくせに…)

自分の服装にやっと自由さを持ち始めたのは、大学生になってからだろうか。
私の頭の中は少女漫画寄りだったので、割とフリルを好んで着ていた。
ファストファッションなら、少ない生活費の中から費用を出して購入することができるようになった。アクシーズファームが大好きだった。今思えば大学生の頃のファッションはだいぶ少女趣味というか、ブリブリじゃね?とも思う。今ではちょっと着られないな(笑)、と思えるエレガントぶりだったが、ちょっとだけお姫様のような気分を味わえたし、かわいいデザインのお洋服だったし、値段も安い方だし、何より「かわいい」「似合っている」と友達に言われることが嬉しかった。

しかしその頃はどうしても、簡単に言うと引き算ができなくて、無地とかだともったいない気がして主張の強いアイテムばかり買っていたので、組み合わせが悪かった。柄×柄でとんでもない下半身になったり、服の色同士がケンカしていたりした。
だから相変わらず、自分のファッションセンスは信じられないままだったけれど。

そんなこんなで社会人に。いよいよアクシーズファームも着られなくなるなということで、この頃からOLのコスプレができそうなお店(もちろんファストファッション)から、白・灰・黒・茶・深緑のアイテムのみを買うようになった。
まあ〜〜〜、当たり前だけど無難なスタイルになる。そして私は腕と腹とお尻と太ももによ〜くお肉が付いている中肉中背を超えた体型なので、さながら小学校のおばちゃん先生みたいなスタイルに落ち着いた。今も実はこうである。
ただ、これは誰からもほぼ非難がなく、値段も安く抑えられるし、良いことも多いのだ。
ちょっとパールなんかついていようものなら上品なおばちゃん先生にもなれちゃうのだ。
うん、これでいい。と思っていたのだけど。

27で結婚して引っ越しをした際、美容室を変えた。個人でやっているお店で、これまでのカット代よりも2000円ほど高くなった。けれどいい加減クーポンだの駐車場料金だのをただ美容室に行くだけで考えなくてはならないのが億劫で、歩いて5分のところにあるその店でしばらくヘアカットをしてもらうことにしたのだ。

たまたまその美容師さんとの相性が良かっただけなのかもしれない。
これまでの美容師さんともよく話して、上手く接してヘアカットしてもらってはいた。
けれど、自分が「これだ!」と思う髪型にしてくれる美容師さんは、それまでに出会えなかった。
私の要望に応えるだけでなく、髪質の悩みに合わせてスタイルを整えてくれ、想像以上に自分がかわいくなれるヘアカットを提供してくれたのだ。5500円以上の価値があった。
初めて、美容において値段と質は直結しているのだと感じた。その美容師さんの技術はこの値段の価値がある、と。
その頃くらいから、やっと、これまで本当に値段相当のファッションしか身につけられていなかったのだなと悟った。安っぽく、心から価値を感じることのできない服装ばかりだったかもしれない。
もちろん、これが好き!と選んで購入したものはたくさんあったが、どれも「値段が安い店」の範疇を超えなかった。何を買うにしても、値段が一番重要だった。だから新しい自分の一面など見つけようがなかった。安い服で、自分を安っぽく着飾っていたのは否めない。
でも、やっと、ここで「私ってもっと楽しく好きな格好できるんじゃない?私の知らないかわいい私いるんじゃない?」と思えるようになったのだ。

今だったら。
多少値段が張っても自分がかわいいと感じ、かわいく見える、いやらしさのない、ずっと着ていたいと思える服装をすることが一番いいと思う。
ピンクも着たいし、茶色も好きだし、似合うならターコイズブルーとかだって挑戦してみたい。ちゃんと試着して熟慮するけど、モード系な服装とかも似合うならしてみたい。
その時の体型や気分や状態に合わせて、楽でいられる服にも、お金を出せると思える。(マタニティ用品とか)
子どもの頃よりはお金にも心にも余裕をもてるようになったから、本当の意味でフィットするファッションを選べるようになれたのかなと、振り返ると思う。
まあ、今でもそんなに余裕があるわけではないので、ヘアカラーのタイミングとか考えるし、靴も3年ほど粘るし、数年着倒した古参のワンピースとか、結構ある。
でも、もうだいぶ役割果たしたなと思えたら、ようやっとバッサリ捨てられるように、ここ数年でなってこられた。やっと。
変なもったいなさからようやく這い出せるようになった。

私はファッションを楽しめていただろうか?振り返るとなんともいえない。
私は今ファッションを楽しめているだろうか?即答できない。もっと着てみたい服やしてみたいヘアスタイルはあるのだ。でも一歩踏み出すのが怖い。非難されたら?自分が嫌いになったら?

とどのつまりは自信がなかったのだ。そして分からなかった、何が自分に似合って、素敵で、自分を好きになれるのか。
これからちょっとは分かっていけるだろうか?子どもの頃には聞けなかった、心の中の自分の声に耳を傾けていきたい。

支援センターでのママさんは、ブランドでゴテゴテしているわけでもなく、本当にさっぱりとした雰囲気だった。それでもキラキラ輝いてみえた。全てが似合っていた。同じように私もいつか、なりたい。
笑顔で、堂々と自分らしさを楽しみたい。

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