ネットリンチについて
ネットリンチについて思う事がある。インターネットが普及してから私は、北条かや氏の炎上事件やスマイリーキクチ中傷被害事件、石橋建設のデモ拡散、その他......ect、様々なネットリンチを見てきた。
特に北条かや氏の炎上事件はリアルタイムで観ていたのだが、いじめの構造が匿名集団によって創り上げられていく様は、側から観ていて非常に不快で嫌悪感を催すものであった。
当時の私は、わざと北条かや氏を貶めようとM氏は図ったのではないかと感じていた(純粋な優しさと正義感からなのだろうと今では思っている。)
どうしてM氏の行動にそのような心象を抱いてしまったのかと言うと、ツイッター内で力のある人が揚げ足を取るように対象の批判をすれば、その後ろ側にいる人たちが流れに乗って、批判された対象を一斉に攻撃するという構図が、私にとって極めて明白に予測できたからだ。
北条かや氏は容姿も美しく、若く、学歴、家柄も良い。そのような属性の人間が《普通》に社会分析をすれば、上から目線のナルシズム、対象をメタ視点で分析する事による対象と分析主体の切り分け、相対的な格付け(対象の格下げもしくは主体の格上げ)、要するにマウントと他者の目には映りやすい。
その為、自分自身を脱価値化する、もしくは圧倒的な第三者として君臨するなどの《工夫》が必要だったのであるが、そういった狡賢い計算を北条氏はする事ができなかった。とても純粋だったのである。
これは完全に私の主観ではあるが、実際に北条氏は一部の第三者に嫉妬と厄介の対象として映っていたと思う。
M氏と北条氏のtwitter上でのやり取りは、結果として、匿名集団に北条氏を攻撃させる為の餌を撒いてしまう事になった。集団はM氏と北条氏のやり取りを媒介として、社会の秩序を乱す《ルール破りの者》《被害者ぶった加害者》というスティグマを北条氏に対して形成した。
先にも述べた通り、北条氏は第三者から排除の対象として認識される為の土壌を、既に持っていたように思う。もちろんその土壌は北条氏自身の問題によって出来あがったというよりかは、北条氏に負の感情を抱く第三者の心の問題によってで出来あがったものである。
その後はあれやこれやで2chで暴言、中傷を匿名集団に書き込まれ、twitter内でも眉をしかめるような酷い中傷が羅列していた。また、炎上以降(正確には炎上以前もそうなのだが......)の北条氏の発言は嫌に歪曲して解釈されるようになった。
例えば、北条氏のツイッターでのこの発言
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この前、出版関係でない知人が「北条さんって、なんであんなにネットで批判されてるの?」と聞いてきたので、存在自体がムカつく女っているじゃないですかと答えようと思ったけどやめた。「存在自体がムカつく女」
北条かや『インターネットで死ぬということ(@kaya_hojo)2017年3月15日
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に対して「同性に嫌われている事を強調している」「嫌われたがっている」「悲劇のヒロインぶっている」というような内容のエアリプが多く返されていた。
まず北条氏の「存在自体がムカつく女」からは決して「同性からムカつかれている」と北条氏が認識している事を表していない。ムカついている主体の性別を北条氏は書いていないのである。このようなエアリプは逆説的に、北条氏を批判している集団の属性が女性であると、エアリプを書いた人間が頭の中で認知している事を表現している。
「嫌われたがっている」について。2chのアンチスレを見れば自分が嫌われていると北条氏が感じる事は合理的である。「悲劇のヒロインぶっている」については、私は北条氏ではないので実際にヒロインぶっているのかどうかは分からない(北条氏は本当にもがき苦しんでいるように私には見えた)。
いじめの構造は怖い。加害者側はいじめの対象の落ち度(加害者側の主観的落ち度)を盾に、好き放題どこまでも冷酷に攻撃する。SNSを使って匿名で攻撃できるのなら、その攻撃は対面時よりも鋭角に被害者を抉りにいく。
もちろん北条氏の弁護をする者も現れたが、匿名の加害者たちは北条氏の弁護をする者を「お〇〇ぽ騎士団」と大変下品な呼び名で罵り、封じ込めようとした。これは果たして正当な批判なのであろうか。
また、北条氏に対していじめの構造を創り上げれてしまえば、M氏を批判者から加害者に引き摺り下ろしてしまうかもしれないという可能性を、匿名の集団は考えなかったのであろうか。
考えなかったであろうと思う。否、もし考えていたとしても匿名の集団にとってはどうでも良い事であったように思う。集団はただ単に日常の鬱憤をネット上で晴らしたいだけなのだ。正当に他者を批判したいのであれば「お〇〇ぽ騎士団」などという言葉は使わない。弁護に対して論理的な返しをする。
悪口を言うとドーパミンが分泌される。とても気持ちの良い行為である。依存性もある。ネットリンチは気持ち良いものなのだ。
私はネットによる私刑もそうでない私刑にも反対だ。犯罪者であっても無罪であってもだ。その理由の一つとして、私たち人間が扱っている情報のほとんどは真偽が不明であり、嘘の情報を信じ込んでしまっている可能性が大いにありうるからである。
最近では準強姦性行として逮捕されたミスター慶應に関する匿名者からの情報がネット上で飛び交っている。
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ミスター慶応逮捕で有名な渡辺陽太さん。
渡辺陽太さん含め、5人の男性に渋谷のカラオケで未成年と伝えたにもかかわらず、無理やり酒を大量に飲まされたあげく、トイレに行ってる隙に財布から現金3万円ほど盗まれ、逃げられ、証拠がないため、泣き寝入りした今年の6月。本当にざまあみろとしか言い様が
ura1016aka(@ura1016aka) 2018年10月16日
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このような真偽不明の情報を信じて、その内容に扇動されて中傷行為に勤しむ人間が沢山いるという事実に、私は驚いている。情報リテラシーとはどこへ行ったのか。
万人に通用する正しさ、正義はそもそも存在しない。私刑を許せば各々の尺度や偏見、先入観(対象の性的・人物的魅力度や社会的地位、経歴)によって刑の重さが変化する。公平から遠ざかる。だからミスター慶應の件についても検察官と司法に委ねるべきである。
犯した罪は裁かれなければならない。だけどそれは司法によって。
それでも納得がいかないと言うのなら、ネット上で匿名で中傷するのではなく、法学者になるなり、検察官になるなり、ジャーナリストになるなりしてリアルの世界で、ルールにそった行動を起こすべきだ。
北条かや氏にいたってはそもそも犯罪を犯していない。そして、批判という皮を被った中傷が当たり前のように行われている事に、私はずっと首を傾げていた。
偉そうな事をつらつらと書き連ねたが、匿名の批判者たちは特定できる個人を批判する時には一度胸に手を当てて、そもそも自分は人を裁けるほど綺麗で真っ当な人間であったのかどうか、考えてみて欲しい。
案外自分の中の嫌な部分を相手に投影していただけであったり、ただのルサンチマンだったなんて事もある。