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ヤクルトの「アットホーム」を作るもの 【11/15ヤクルト松山キャンプ】
い、生きてる・・・・・・・・・・!!!!!!!!
と、いうのが、真っ先に感じたことであった。
そう、目の前で、ヤクルトたちは動いていた。本物であった。生きていた。
ああ、私はこの人たちが好きなんだ・・・・・・・・・・・と、私はまたちょっと感慨に耽った。会えない時間は愛を育てるのだ。乳酸菌は生きて腸まで届くのだ。よろしく哀愁。
ヤクルト、生きてるよ!と言うと、息子がわけがわからないという顔をして私を見ていた。
◇
誰がが投げたボールが美しい軌道を描き、すっ、とミットに吸い込まれていく。とても、正確に。芸術的とすら言えるその軌道に、今日も私は新鮮に感動する。ずっと見ていられるな、と思う。
ただそれは、私が知っているヤクルトとは、少し違っていた。去年、当たり前のようにそこにいた小川さんや、みやさまや、タクローさんは、そこにはいない。罵声(失礼)は、1/50くらいに感じる。
あらゆるものは、移り変わってゆく。去年あったものが今年はなくて、去年なかったものが今年ここにある。
そこにいたはずの人たちをつい、思う。会いたいなあ、と思う。
だけど、変りゆくものを受け止めることもまた、愛だったりするのだろうな、と、少し思う。なんといったって、変わりゆくものに最もプレッシャーを感じるのは、それを背負う監督やコーチたちだ。
そこにじっと立ち、練習を見つめる高津さんと宮出さんを見ながら、新しくなるこのチームにまた、エールを送り続けたいな、と、なんとなく思う。
◇
夕方、マドンナ球場では、個別練習が行われていた。
古賀くんと松本くんが衣川さんのノックを受ける。どちらか一人がミスをするたび、二人でコサックスクワットをする、というルールになっているようだ。
ヤクルトのキャンプを見にきました。
— 虫明 麻衣 (mai mushiake) (@hannarry) November 15, 2019
捕手がコサックダンスをしていました。うん。#swallows pic.twitter.com/D0IYpNphHm
この日から合流したばかりの松本くんに、コーチたちは、「まっちゃん、遅れた分、今日からがんばりますって言ってたよなあ!」と、言いながら、容赦なくノックを浴びせていた。
昨年の厳しいあの雰囲気を勝手にちょっと懐かしんでしまっていた私は、そのノックについ、にやにやしてしまう。
古賀くんがボールをそらすと、松本くんは顔を歪めながら、一呼吸置き、「…ナイス、執念!!!!!」と、でかい声で叫んだ。お客さんは笑った。私も笑った。爆笑しながら、オットは息子に、「きっつい時に、前向きな声かけをすることって大事だよね」と言っている。息子は、「今度サッカーで誰かがミスしたら、『ナイス執念!』って言ってみる!」と、言い、オットが笑っている。
最後に松本くんと古賀くんの二人は、散らばったボールを、一つ一つ走って取りにいく、というトレーニングをしていた。
若い古賀くんはしんどそうにしながらもあっという間に片付ける。松本くんは、内野陣の練習が終わってからも、最後までボールを追う。
その様子を見ていたおっくんが、いつもの調子で、「ボールは減ってるよ!!!ボール減ってるよ!!!!」と、エールを送る。確かに、ボールは減っている。間違いない。
ボールが残り数個となった時、衣川さんは「ノブ!あと数個!まっちゃんになんか言ったって!」と、おっくんに叫んだ。
おっくんは「下半身でかくなってるよ!鍛えられてるよ!!!」と、また謎のエールを送る。
最後のボールを取り、倒れこむ松本くんに、お客さんから拍手があがる。
そこには去年見たものに似た景色が、少しだけあった。息子と私も、たくさん笑いながら、たくさん拍手を送る。
◇
片付けが終わってみんなが引き上げた後、衣川さんがおっくんに近づいて、そっと声をかけていた。
「ノブありがとうな、まっちゃん、ちょっと嬉しそうだったよ。」
おっくんは「いやいや、僕何もしてないですよ!」と、笑う。
こういうのが、ヤクルトの、いわゆるあの「アットホーム」な雰囲気を作っているのだろうな、と、思う。
みんなより遅く、その日から参加した松本くんは、それなりの気負いや緊張だってあっただろうと思う。もし私なら、それなりのプレッシャーも感じたかもしれない。
そこでトレーニングをして盛り上げることや、おっくんの声や、それを促すコーチの影の気遣いみたいなもの。それは、松本くんを救ったかもしれない。そして、おっくんにそっと「ありがとう」と伝える、その衣川さんの気遣いは、間違いなく、ヤクルトの良い雰囲気を作り出すものだと思うのだ。
ドラフト会議の場で誰がこのチームに来るのかは、わからない。ヤクルトというチームを作るのは、そこに入る人というよりはおそらく、ずっと受けつがれてきた、受け入れる側の空気なのだろう。だから今日だってそこには、小川さんやみやさまが作った空気だってきっと、流れている。その前からずっと流れるものと、同じように。
きつい練習の日も、笑いあう日も。
◇
「幸せな時間だったなあ」と、前に座った若者が、隣の人としみじみと話していた。「こうやって山が見えて、その中で一日中野球を見て入られて。いいですよね。」と。
ああ、本当にそうだなあ、と、私は思う。東京から松山に足を運び、朝から夕方までずっと、スタジアムに座ってただただ野球の練習を見ている。それだけでこんなに楽しく感じられるものがあるって、とても幸せなことだ。
ヤクルトはちゃんと生きていて、そして来シーズンに向かってしっかり準備をしている。変わりゆくものはあるけれど、失ってしまったものもあるけれど、でも変わらないものもきっとある。
そこにあるものをまるっと受け入れながら、この愛しいチームを、また来シーズンだって応援していこう、と、私はまた思う。
今年も良い時間をありがとう。
■罵声(失礼)が去年の1/50(体感)
— 虫明 麻衣 (mai mushiake) (@hannarry) November 16, 2019
■おっくんまじでいいやつ
■大松さんがヤクルトウェア着てくれてるのうれしい
■河田さんが変わらずいる言いようのない安心感
■衣川さんいい人
■中山くんでかい
■うっちーいけめん
■なおみちおかえり涙
■ヤクルトたち、生きてる…!!
以上、松山キャンプの所感 pic.twitter.com/8q34VIwpCZ
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