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ぐっちがいつも「自分」と向き合いながら打ち続けた、1500本分のヒットに思うこと【10/19阪神戦△】
1500本のヒットを打つまでに、それまでの1499本分のヒットの積み重ねがある。
ぐっちは今日、1500本目のヒットを打った。記念パネルを持ったお姉さんが間違って村上くんの方へ走ってから自分のところへ来るのを、笑って待っていた。
そこで笑ってくれる日が来て、本当に良かった。と、私は思った。とてもとても、良い笑顔だった。(間違えてくれたお姉さん、ありがとう。)
去年、死球による骨折のあと、状態が上がらず、一軍の試合出場は22試合だけだった。シーズンのほとんどを、二軍で過ごした。そして私は初めて、何度も何度も二軍球場に足を運ぶ一年を過ごした。
ぐっちは、いつも若ヤクルトたちに声をかけながら、冗談を言いながら、笑っていた。そこには競争があり、悔しさやふがいなさがあり、そして痛みがあったはずだ。でもとにかくぐっちは、そこで笑いながら、バットを振り続けていた。私は戸田や浦和や鎌ヶ谷や川崎の球場で、その表情をずっと見ながら、どうか神宮にまた戻れますように、と願った。その痛みがどうか、和らぎますように、と。
ファンにできることなんて結局、祈ることだけなのだ、と、何度も思い知りながら。
ぐっちは今年の春キャンプから、また一軍に呼ばれた。そして開幕のスタメンを勝ち取った。また一つのシーズンが始まるのだ、と私は思った。
それでも、不安がなかったといえば嘘になる。また怪我をするかもしれない。痛みは手を、足を、止めてしまうかもしれない。
実際、「今でも、痛め止めを飲まない日はない。」という。
それでもぐっちは、コツコツと、1本1本、ヒットを打ち続ける。積み重ねていく。そして、去年達成できなかった1500安打という記録を達成する。
誰もがきっと、いろんな痛みを抱えながら、戦うのだろう。ぐっちを見ていて、そう思う。
打てる日も、打てない日もある。チャンスでゲッツーを打つこともあれば、守備でエラーすることもある。こんな時代だから、誰かの心ない言葉が聞こえる日だってあると思う。傷口がどうしても痛む時もある。でもぐっちはいつも、「自分」と向き合い続ける。「チーム」に目を向け続ける。自分にできることをし続ける。トレーニングと練習をし続ける。「また一から」と、壁にぶつかるたび、そう口にしながら。
大切なのは、目を向けるべき対象を見誤らず、本当に大事なことを見失わず、できることをコツコツ積み重ねることだ。ぐっちを見ていると、それに気付かされる。
ぐっちはいつも「下手くそなんで」と言う。「僕なんかが」と、口にする。「すごい選手じゃないんで」と、謙遜する。でもそれを、言い訳には絶対にしない。「下手くそなんで、練習するしかないです」と言う。
1500安打という数字はその「練習」の積み重ねの結果で、そして経過だ。
積み重ねはこれからも、明日からも、また続いていく。1501本目を、1502本目を、打ち続けていく。物語はここからもまだ、続くのだ。
私もがんばろう、と思う。それはまだまだ経過に過ぎないのだと、そう信じて、できるところまで、積み重ねていこう、と。1本のヒットも、積み重ねていけば1500本になる。内野安打もポテンヒットも長打もホームランも、得点につながってもつながらなくても、そのどれもが、大切な1本だ。
ぐっちおめでとう。ヤクルトに来てくれてありがとう。その大きな記録を、届けてくれて、応援させてくれて、ありがとう。これからも1日でも長く、その姿を応援していけますように。
ヤクルトに来てくれてありがとう。ほんとうにありがとう。応援させてくれてありがとう。
— 虫明 麻衣 (mai mushiake) (@hannarry) October 19, 2020
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