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それぞれの1本には、黙々とバットを振り続けた時間がある【8/13横浜戦◯】

ツーアウトからランナーをためる、相手のためたランナーはもれなく返す、それはいつものことだ、今さら驚くことでもない。と、思いつつ、大きなため息とともにビールを飲む。上田はピッチャーの登板前にもちゅーした方がいいんじゃないのと思う。それくらいのことしかもう考えられない。

サヨナラの余韻が残る中、迎えた試合だった。だけどまあ、そうなのだ、なんだってそううまく行くわけじゃない。だけど一つのミスからなかなか立ち直れないピッチャーを見るのは、なかなかに辛い。

なっしーが5失点をした後、ほしくんは4回のマウンドに上がった。神宮でほしくんの登場曲を聴くのは久々だ。むすめはまた、双眼鏡を取り出した。ほしくんは三振を二つ奪い、最後に乙坂をライトフライに打ち取り、三者凡退でそそくさと帰って行った。

こういう風に一つずつ、積み重ねていくしかないんだよな、と思う。うまくいく時も、いかない時も。悪い残像を引きずる最中でも、そこに立つことがこわくなるような、そんな時でも。いつだってうまく行くわけじゃない。だからうまくいかなかった時、その次にどうするかが何より大切だ。ほしくんは、その姿を今日見せてくれた。そしてむすめは、そういうほしくんの姿をずっと見ていた。

ほしくんが、さっさと帰って行った後だった。エイオキ兄さんはまた、元気にホームランを打った。この人のこの、ここぞというところで、流れを変える、諦めないぞと見せ付けてくれる、集中力を切らさないこの仕事は一体何なんだろう。

いつもはここで終わる攻撃が、今日は何と、途切れなかった。てっぱちがツーベースを打ち、雄平はタイムリーを(なんと、タイムリーを)打ち、村上くんがヒットでつなぎ、そして、あきおがタイムリーを打った。ほしくんの代打で出てきた慎吾もタイムリーを打ち、太田くんはだめ押しの3ベースを打った。終わってみれば、6点を取っていた。みんな上田にチューしてもらったのだろう。(点、足りないけど)

みんなが、いろんな思いを抱えている。一軍に上がれないシーズンがあり、打っても打っても勝てない時期があり、とんでもないプレッシャーと戦い、スタメンを外れて代打で成績を残さなきゃいけない時期があり、怪我で思うようにプレーできない時期があり、トレードで慣れない環境に身を置かなきゃいけないことがある。その苦しさが、報われる保証はどこにもない。それでも、そこで戦い続けるのだ。華やかなその舞台に立ち、ヒットを放つその裏には、誰も見ていないところで、黙々とバットを振り続けた時間がある。

たぶんその目に見えない膨大な時間があるから、私たちは、この満員のスタンドで、こんなにも熱狂するのだろう。

バッターは、3割打てればむちゃくちゃ優秀だ。打てたその1本が、得点につながるとはもちろん限らない。そしてそれが、勝ちにつながるかどうかもわからない。

ピッチャーは、6回を投げて3失点であれば優秀だ。それでも、勝ちがつくかどうかはわからない。チームがそれで勝てる保証はない。

そこには、打てなかった時間や、打たれた時間が必ず存在する。そして勝てなかった試合が、山のようにある。

だけどその時も、選手は戦い続ける。打てない日も、打っても打っても勝てない日も。打たれる日も、打ち取っても打ち取っても勝てない日も。どれだけの痛みを抱えた日々も。

全てが報われるわけじゃない。痛みの数だけ必ず強くなれるわけでもない。だけど、勝つ日も負ける日も選手がそこで戦い続けるのなら、私はここで、応援し続けるだけだ。勝つ日も、負ける日も、どれだけ胃が痛い試合でも。(もう帰りたいって5回くらい言ったけど)

だから今日打たれたピッチャーも、打てなかったバッターも、バント失敗したたいしも(お前が打たなきゃ誰が打つ)、また次のチャンスに何かをつかみますように。夏はもう少し、続いてゆくから。

・・・あと次はもう少し、胃に優しい展開が待っていますように。


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虫明 麻衣(Mai Mushiake)
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