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それは山田哲人の夢を応援できる場所、なのかもしれない


「てっぱち今、どんな気持ちなんだろう…自分に打席が回ってくるなって思ってるのか、よし自分に回ってこいって思ってるのか、どっちなんだろう。」

そわそわした様子で、息子が言う。ネクストバッターズサークルでは、なんだかいつもよりも精悍な顔つきのてっぱちが、グラウンドをじっと見つめながら、バットを振っていた。

2-2で迎えた8回裏、2死1,2塁で打席には甲斐が立つ。ここで甲斐が出塁すれば、大きなチャンスでてっぱちに打席が回ってくるのだ。

「どちらにしても満塁でてっぱちとか…ママの心臓が持たない…」と、私はなんだかつい弱気になって言う。ぶつぶつ言っていたら、甲斐はしっかり四球を選んだ。

「ワイルドピッチとか押し出しとかきーひんかな…」と、なんとも後ろ向きなことをまた、私は口にする。

と、そう言った次の瞬間だった。

相手が投げた初球のストレートをあっという間に打ち返し、快音を響かせたその打球は、ホームランかというような軌道を描き、フェンスにぶつかった。

続々と帰るランナーを見ながら、息子と二人で飛び上がってハイタッチをする。私はまた、好きな四文字熟語を聞かれたら迷わず「走者一掃」と答えよう、と思う。

セカンドベースの上で、てっぱちは見たこともないような笑顔で、にこにこガッツポーズをした。


山田哲人はいつだって、ポーカーフェイスだ。

満塁ホームランを打っても、サイクルヒットを達成しても、笑顔がない日だってあった。チームが苦しいことが多かったから、というのもあるのだろう。そのホームランが勝ちにはなかなかつながらないという日だって続いた。

だけどこのオリンピックで、てっぱちはなんとも楽しそうに、うれしそうに野球をしている。

シーズン中から、稲葉さんが視察に来るたびにてっぱちは打ちまくっていた。その原動力はわたしにはわからないけれど(アスリートにとってのオリンピック、野球選手にとってのオリンピックの重さって、きっとわたしが想像する以上のなにかがあるのだろう、と思う)、てっぱちがほんとにほんとにほんとうに、オリンピックに出たかったんだろうなということは、ひしひしと伝わってきた。

だからその舞台で、世界との戦いで、普段大きすぎる重圧(と年俸)を背負ったてっぱちが生き生きと野球をしているのは、見ていてとてもうれしい。


でも私はいつだって、その世界の舞台でなくたって、どれだけ負けている試合でだって、てっぱちが打つ1本に、何度も何度も救われてきた。

夏の暑い日、どんなに負けた試合だって、夏休みの子どもたちの前で打ってくれるその一本は、いつだって間違いなく、「夢へと続く道」だった。

それは、ファンの「夢へと続く道」だったのだ、と今ふと思う。

そしてこの世界の舞台に立つことは、そこで活躍することは、てっぱち自身の夢のひとつだったのかもしれない。

これがてっぱちにとっての夢の一つなら、私はそれを見届けられることをただ、うれしく思う。いつも私たちに夢を見せてくれるてっぱちのその大きな夢を、ここで応援できることを。

オリンピックというのはもしかしたら、そういう舞台なのかもしれない。

「勇気をもらう」とか、そういうものじゃなくて、アスリートの夢を、応援できる場所。

ニコニコと最高の笑顔を見せるてっぱちの姿を画面越しにみながら、私はそんなふうに思う。


スタンド超えて打球は、はるかな夢へと続く。

そしてその打球は、この一本は、まだまだ夢の途中なのだと、そう思いたい。山田哲人の夢は、これからまだずっと、続くのだ、と。

私たちはそれを、この目でしっかり見届けることができる。その幸せを今、もう一度かみしめる。

ありがとうてっぱち、いつも大きな夢を、見せてくれてありがとう。

てっぱちがこの先もできるだけ長く、そこに立ち続けてくれますように。そしてできることならてっぱちが「野球が楽しい」とそう思える時間が、これからもたくさん訪れますように。

こんなに偉大な選手を応援していられることを、心からうれしく思います。

それにしてもてっぱちがどれだけ世界の舞台で活躍しても7年はヤクルトにいてくれるとかまじで最高でほんと泣きそうですありがとう!!(本音!!)

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