【コラム】息子が野球じゃなくてサッカーをやる理由
すべての時間を習い事に割くことができない
一言で言えば「時間が合わない」ということになるのかもしれない。でもそこにはもう少し、色んな思いがある。
私が知る限り、近所の野球チームは(そんなに強豪チームが揃っている地域ではないと思うのだけれど)基本は土日、毎週練習がある。半日から一日かけてやるところも多いし、平日も練習だ、というところもある。
ママたちの「コーチへのお茶汲み当番」があるというのもよく聞く。(本当なのかなこれ。都市伝説じゃなかろうか。)
我が家はオットも私も仕事をしていて、私はまあかなり融通のきく仕事ではあるけれども、それでも平日の練習にずっと付き添うのは難しい。何より、土日が全部野球の練習となると、ヤクルトの試合を観に行くことができないではないか。おいそこか、と思われるかと思いますが、そこめっちゃ大事。
自分が楽しんでいないと、笑っていられないから
基本的に、私には私の人生があると思って子育てをしている人間なので、子どもに全ての時間と労力を割くことがどうしてもできない。
「誰かのため」という見せかけで、自分を少しずつ削っていって、それをいつかその誰かにぶつけることが一番怖いな、と、個人的には思っている。だから、100%を注ぐことはできないけれど、でも子どもたちがいて、自分がいるこの人生を、母さんは心底大変楽しんでいるよ、という姿を見せていきたいなと思いながら子育てをしている。
もちろん、それでもどうしても絶対に野球がやりたい!と、息子が言えば、いくらこれだけ自分勝手な母さんでも(すみません)、さすがにやらせてあげる方法を考えはしたと思う。でも息子は元からサッカー観戦も好きで、サッカーでもいい!と言っていたので、それなら週一回でゆるく楽しめるサッカーでどうぞ、という気持ちでサッカーを始めた。そしてまあとにかく楽しそうに夢中にやっているので、大変よろしいと、(かなり遠くから)私は見つめている。
デンマークサッカー協会に学ぶ
で、実はオットは昔から子どもとスポーツをするのが好きで(なのにどうしてあんなに太ってしまったのだろう)誘われるがままになんとコーチまで引き受けてきた。
そんなオットが、別にコーチも何にもしていない時からよく見ていたサイトがあると教えてくれたのが、こちら。(本当に誰にも頼まれていないのに勝手に子どものスポーツ教育について考えていたらしい。稀有な人だ。)
ここに書かれている「デンマークサッカー協会 少年指導10ヵ条」というのが素晴らしくて。
子どもたちはあなたのモノではない。
子どもたちはサッカーに夢中だ。
子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
子どもたちから求められることはあってもあなたから求めてはいけない。
あなたの欲望を子どもたちを介して満たしてはならない。
アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない。
子どもの体を守ること。しかし子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
コーチは子どもの心になること。しかし子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
コーチは子どもを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ。
そう、まさにこれ。と、私は思った。キッズサッカーはこういう考え方がある程度浸透してるからいいよね、と、オットは言っていた。
もちろん少年野球にもいろんなチームがあって、こういう考え方が浸透しているチームもあると思う。だけどまだまだ、私が見た限りでは、野球の世界はこういう考えとは遠いところにあるんじゃないか、という気がしている。
子どもには子どもの世界があり、価値観がある。子どもは誰かの持ち物じゃなくて、一人の個人だ。スポーツだってなんだって、こういう考えの中で、子どもを育てていきたいなと思っている。
「恐怖」からは何も生まれないから
何事もある程度の厳しさというのは必要かもしれない。でもそれを「恐怖」にして子どもたちを押さえつけることには何の意味もない。何の意味もないというか悪い側面しかないと私は思っている。
それは子どもだけでなく、中学生になっても、高校生になっても、そして大人になってからも同じで、「誰かに怒られるから」という視点で過ごすことほど、不健康なことはない。
そして「時間をかければかけるほど正義だ」という考えがもしあるとしたら、それはいつか、ただいっぱい残業することが正義だということにつながっていくかもしれない。それはちょっと。ちょっと、ちょっとなあ、と、思う。
まあさすがにプロにもなると、(ヤクルトの選手を見ている限り)えらい人の顔色だけをうかがって、窮屈にプレーすることはそうそうないとは思う。(そういうチームももしかしたらあるのかもしれないけれど)(みやさまの顔色は見ているかもしれないけれど)。
でもそれはやっぱり、プロになれたから、という部分もある。多くの人は、プロにはならず、そのまま社会に出てゆくのだ。その時、誰かの顔色を見ながら、「長い練習が正義だ」という考えのまま、仕事をするようになっては欲しくないなと思う。
大好きな野球の環境が、子どもたちにとっても素晴らしいものになりますように
別に改めて宣言するまでもないけれど、私はすごくすごくすごく野球が好きだ。見ればみるほど、それはスポーツとして、ゲームとして、ものすごくよくできているし、何なら少し哲学的ですらあるよなと思うにいたっている。だから、子どもにとってももちろん、素晴らしいスポーツだと思うのだ。実際、息子は野球から学んだことが山ほどあると思う。(漢字だって選手の名前で覚えていった)
だから、もっともっと、子どもにとって野球をする環境が、本当の意味で良いものになっていくといいなと思っている。長い時間をかけることだけが素晴らしいわけじゃない、監督の言うことを聞くことだけが正しいわけじゃない、大人がみんな正しいわけじゃない。それをきちんと知って、野球をのびのび楽しんでできる環境が、もっともっと広がっていくといいなと思っています。
まあヤクルトのみなさまにおかれましてはみやさまにしっかり怒られてくださいと思うこともあるけれども、それはまた別途書きます。(がんばってくださいね)
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