北から目線で失礼いたします。
顔を刺すような鋭い冷気で目が覚める。
手のひらでそっと鼻先に触れると、氷のような冷たさに身震いが起こる。
薄目を開けて見た時計は午前4時を指していた。
もう一眠りしたい。私は頭ごとすっぽりと毛布にくるまった。
12月に入り、北海道が本格的な冬に突入したことを実感する。
初雪が降り、最高気温が零度を下回ると行うこと、といえば、秋口から着続けたトレンチコートをクローゼットの奥へと仕舞い、ウールのコートと手袋を居間のコートハンガーへと掛け替えること。
一軍二軍の入れ替え作業である。
あくまでも私の主観ではあるが、北海道民はギリギリまで冬のコートを着ない。
ギリギリの「ライン」には個人差があるが、私の場合は「最高気温が氷点下」が目安になっている。
「さぁ、そろそろ着てもいい頃か」となるわけだ。
実際、巷のファッションを見てみても、11月中はトレンチやジャケットで行き交う人々がほとんどである。
決してやせ我慢とかそういった類のものではなく、5℃とか10℃でコートを着るのが単純に暑くて耐えられないだけなのである。
朝のニュース番組でお天気キャスターが「今日の都心の気温は12月並みの13℃。暖かい冬のコートでお出かけしましょう。」と話しているのを聞くと、「本当?ねぇ、本当に?暑くないの?」と不思議な気持ちになる。
ちなみに、本当なんですか?
さて。
「北から目線」という言葉をご存知だろうか。
一体どこから目線なのかというと、「数センチの雪で交通が麻痺したり、テレビが『雪対策』一色になったり、そこまで寒くないのに『寒い寒い』と言っている非雪国の様子を見た北国の人々が『大したことないじゃん、そんなのこっちでは…』と雪国マウントを取る上から目線」をこういうらしい。
まぁ、正直その気持ちはゼロではないが「またこの時期が来たか」くらいにしか思ってはいない。
むしろ、東京の街を歩いていると「この素材の道、階段に雪がうっすらとでも降ったらそりゃ転ぶわな。第一こっちとは靴が違うんだ、靴が。皆様どうぞお気をつけください。」といつも思う。
北国では、靴底の材質や溝の深さを確認する必要があるので、冬靴の購入にはかなり神経を使う。
デザインが気に入っても靴底で泣く泣く諦めたブーツが過去いくつあっただろうか。
ここ数年は、デザインよりも機能で選ぶようにしている。
背に腹は代えられない。
今履いているのは、columbiaの「SAPLAND(サップランド)」シリーズ。
普通のブーツを履いて外で数時間過ごすと、足先の感覚がなくなり、終いにはジーンと痛みだすのだが、これを履いているとポカポカ過ごすことができる。
滑らないので氷の上でもダッシュできる。
そしてなにより、この動画が購入の決め手になった。
女の子の滑り方がちょっとわざとらしいけど、いい、実にいい雰囲気だ。
過去に遠距離(日本↔韓国間)での恋愛を7年経験している私には、彼らの気持ちがよく分かる。
再会したときの喜び、別れるときの切なさ、会えない間の気持ちの高ぶり。
それが遠距離の醍醐味。
こんなトキメキ私も味わいたい。
このドキドキを私にください。
なんのはなしですか
北の女の妄想目線のはなし。
そうして明朝もまた、顔を刺すような鋭い冷気でそんな夢から覚めるに違いない。