卵円孔早期閉鎖についてわかりやすく解説 〜②文献レビュー編〜
この記事では
「卵円孔早期閉鎖」について
なるべくわかりやすく解説しています。
私の娘、むしゃ美は
お腹の中にいる時から
この「卵円孔早期閉鎖」
という心臓の病気がありました。
あまりない病気であるからこそ
情報が少ない状態なので
同じ疾患の子を持つ親がいらっしゃったら
力になりたい。
そのような気持ちで書きます。
(むしゃ子(筆者)は作業療法士
むしゃ夫(筆者の夫)は診療放射線技師。
二人で一生懸命まとめました。
書き手が医療職であるからこそ、読者様にとって
かなり難しく感じるかもしれません。
また、2人とも医療職とはいえ専門外の分野なので、もしかしたら認識に相違があるかもしれません。その点はご了承ください。)
記事は3つに分かれてます。
前回の記事から読むとわかりやすいです。
今回は
②文献レビュー編です。
正直、かなり難しいです。
本当に必要な人だけが
読むことをお勧めします。
では、どうぞ!
症例数が少なく文献が限られていた
卵円孔早期閉鎖とは、
通常はお腹の中にいる赤ちゃんは
卵円孔が
空いた状態で生まれてくるはずが、
何らかの原因で、
すでに閉じた状態(閉鎖)で
生まれてくることです。
「卵円孔早期閉鎖」について
文献を検索しましたが
症例数が少なく
文献数も限られていました。
限られた中で得た情報を、
解説と合わせて
以下にまとめてみました。
医療用語が多々あり
難しく感じると思いますが
ご了承ください。
まれな病気。左心低形成や胎児水腫の原因に
ひぇーー、難しいですね 汗
わかりやすく説明すると
お腹の中にいる赤ちゃんの
卵円孔が
狭まっている(狭小化)、
もしくは
完全に閉じてしまっている(閉鎖)は
「まれな病気」であるとされています。
しかし、
卵円孔早期閉鎖があることによって
「左心低形成症候群」や
「胎児水腫」
の原因になるといわれています。
「左心低形成症候群」は指定難病であり
難病情報センターや国立循環器病研究センターなどのホームページで詳しく解説されていますので、ここでは記載は控えます。
「胎児水腫」とは、
胎児の胸やお腹に水がたまり、
全身がむくんだ状態となる重篤な病気です。
左心室が成長できていないことでの影響が大きい
何が何だか、さっぱりわからねー!
と、思ったかもしれません 泣
難しいですよね。
卵円孔の役割として、
前回の記事でも述べたように、
「酸素を豊富に含まれた血液が
肺へ移動するのを最小限にし
卵円孔により
その大部分を右心房→左心房→左心室へ
移動することで、
速やかに全身に送り出すことが可能」
とすることでした。
卵円孔が
早期に閉鎖することによって
酸素を豊富に含まれた血液が
右心房→左心房、さらには左心室への流れが
減少するため
左心室が成長することができません。
左心室の役割は
「血液を全身へ送る」ことです。
そんな左心室が成長していない状態なので
役割である「全身へ血液を送る」力が
十分に備わっていない状態となります。
左心室が小さく、
かつ多くの血液を取り入れて、
全身に送り出すことができないため、
肺から左心系(左心房・左心室)への
血液の流れが悪くなるのです。
「血液の流れが滞る」みたいな感じ
滞ってしまうと
肺から血液が送り出されないので
肺は血液が溜まった状態になります。
肺は
右心室からの血液が流れるところですが
右心室から送り出された血液は
肺に入り切らなくなるので
その分が動脈管をという管を通って
大動脈に流れます。
こうした正常な経路以外で
右心系(右心房・右心室)から
左心系(左心房・左心室)に流れのある状態を
新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)と
呼びます。
新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)では、
チアノーゼと呼ばれる、
酸素不足により皮膚が青くなったり、
呼吸が速くなる症状が出ます。
これは
肺から酸素を豊富に取り入れた血液(動脈血)が
小さな左心室の力では
十分に全身に送り出されないこと。
全身を巡って酸素が乏しくなった血液(静脈血)のうち、
肺に入りきらない分が
動脈管を通って大動脈に流れ、
再び全身の巡ることになるためです。
診断は簡単では無い
超音波検査の普及と装置性能の向上により
お腹の中にいるときから
先天性心疾患(CHD)の診断が
以前より可能となり
生まれた後の重症化を
予防できるようになったものの
お腹の中にいる赤ちゃんの卵円孔が
狭くなっている状態や
完全に閉じてしまった状態の診断は
簡単ではなく
患者さんの数の少なさから
どれくらい重い状態なのか
という重症度評価も
まだ確立されていないのが現実のようです。
まとめ
今回の記事では、卵円孔早期閉鎖についての
文献レビューについて書きました。
が!!
か、か、か、かなり難しかったと思います。
難しいながらも、読み解こうと
ここまで読んでくださって
ありがとうございます。
次の記事では、
いよいよむしゃ美の場合、実際はどのような状態だったのかについて書きました。
こちらも是非、読んでみてくださいね。
今回はここまで。
最後まで読んでくださって
ありがとうございます。
参考文献
・病気がみえる vol.10 産科 第2版 2009 井上裕美、竹内正人ほか MEDIC MEDIA社
・稲村昇(近畿大学医学部小児科学教室) 題名:胎児循環生理 日本小児循環器学会雑誌 Vol.32-No.6 発行日2016年11月1日
・原田智哉,大橋啓介ら(三重大学大学院医学系研究科小児科学) 題名:孤立性卵円孔早期狭小化/閉鎖の重症度診断:出生後診断例も含めた検討 日本小児循環器学会 総会・学術集会 ポスター発表(I-P2-3) 2022年7月21日
・河津由紀子ら(大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科) 題名:異なった臨床経過を呈した胎児卵円孔狭小化および閉鎖の2例 日本小児科循環器学会雑誌 第22巻 第6号
・Bharati S,Patel AG,Varga P,et al:In utero echocardiographic diagnosis of premature closure of the foramen ovale with mitral regurgitation and large left atrium.Am Heart J 1991:122:597-600
・Schall SA,Dalldorf FG:Premature closure of the foramen ovale and hypoplasia of the left heart. Int J Cardiol 1984:5:103-107
・Coulson CC,Kuller JA:Nonimmune hydrops fetalis secondary to premature closure of the foramen ovale.Am J Perinatol 1994:11:439-440
・林亜紀、森根幹生ら(国立四国こどもとおとなの医療センター) 題名:診断に苦慮した胎児卵円孔早期閉鎖の一例 日本産科婦人科学会雑誌 学術講演会抄録集 2022年第74回