DVを克服するために
「自分は被害者である」と認める
これは非常に勇気のいる行動です。
誰しも自分が向き合いたくない現実からは逃げたくなってしまうものです。
私も被害者であることを認めるのには1年ほどかかりました。
付き合っていた1年間を美化し、これは自分の成長に必要なものだったんだ、などと自分の苦しかった過去に蓋をし、誰にも真実を話していませんでした。
何より問題だったのは、この時まで「私は彼を愛していた」と彼から受けた洗脳の愛を信じていた、信じなければ自分の精神を保つことができなかったことです。
私のこの自分への嘘に気づいたのは、その頃付き合いだした現主人です。
一緒にいるうちに、言動から何か違和感を感じたようです。
元彼に未練があるのかな、と最初は思っていたようですが、おかしな点があまりにもたくさんあったため、改めて元彼がどんな人だったのか問われました。
すると私は質問されたことに怒ったり、泣いたり、時には過呼吸になったり、普通ではない精神状態であることが分かったのでした。
これは一般的に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ばれるものです。
命の安全が脅かされるような出来事(戦争、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害と考えられています。
この治療には薬物療法と認知行動療法(心理療法)があります。
今思うとDVのトラウマが原因だったと思いますが、当初は原因もわからずただただ不安にかられ不眠が続いていたので、心療内科へ通院し双極性障害(躁うつ病)だと診断されました。
心的外傷後ストレス障害の治療に使用される薬は私が元から処方されている双極性障害の薬とほとんど同じでしたので、特に新しく何か服薬することはありませんでした。
元彼の洗脳から解放されたかったので、医師に認知行動療法はどうかと相談してみましたが、これはセラピストとの会話を通じて心的外傷に慣れていく必要があり、技法に精通していなければストレス症状を強めるため注意が必要である諸刃の剣だと言われました。
「日常生活が送れないほどひどいものでなければ、自分の辛い過去と一から向き合わなければいけないので辛い治療になってしまうよ」という医師からの言葉に躊躇し、こちらの療法は試さないことにしました。
しかし、主人は違いました。私のことを本来の自分へ戻そうとしてくれました。
付き合った当初の私は過去の話をすればすぐ怯え、癇癪を起こし、自分が元彼にこき使われていた衝動から、主人に家事等を全て任せっきりにしていました。
主人は自分で認知行動療法を私へ実践し、私の過去を少しずつ軽くしていってくれました。
最初は私も「なぜあなたに過去の話をしなくてはいけないのか」と反抗し、何も答えなかったり美化したり、主人にも自分にも嘘をついていました。
「人の過去に土足で入ってくるなんて頭がおかしい」と暴言を吐いてしまったこともありました。
それでも主人は粘り強く私の話を聞き、私も少しずつ過去と向き合うことができました。
その結果、1年かけてやっと過去を乗り越えることができました。
主人の行動が正しかったのかはわかりません。
ただ私を愛し大切に思っていてくれたからこその行動だったと心から感謝しています。
余談ですが、私も主人もアドラー心理学の考え方に強く共感しています。
その中に「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない。」という言葉があります。
主人は嫌がる私を辛抱強く幻想のオアシスから引き離し、本当の水辺へと連れていってくれました。
次第に信頼し、心を開き、全てを打ち明け水を飲むことができました。
これからは、自分に嘘をつかない健やかな人生を新しい気持ちで送りたいと思っています。