【臨床漢方医学】「陰陽」の使い方
はじめに
こんにちは、ムセキです。本記事を開いて頂いてありがとうございます。
私は普段、仕事で薬剤師をしつつ、プライベートで専門の漢方医学についてブログやnote、Twitterで発信しています。
今回は、noteで新しい記事を書こうと思い立ちました。題材は「陰陽」です。
「え?陰陽って漢方の基本でしょ?本なんかでも割かれているページ少ないし、一番最初に勉強したからもう必要無いんじゃないかな?」
「陰陽って理論だよね。臨床現場でそんな理論なんて要るの?」
と思われるかもしれません。
確かに陰陽の概念は一見簡単に見えます。ですが、それを十分に使いこなすにはコツと修練が必要です。
修練に関しては「やるorやらない」になりますので、私の力が及ぶ所では無いのかもしれません。
しかし、使い方の「コツ」に関しては、私も少しはお役に立てると思います。
陰陽理論は、漢方を扱う上では切っても切れないものですので、しっかりと身につけておくに越したことありません。
また、理論と臨床(実践)は地続きですので、リンクして扱えるようになっておいた方が良いです。
本記事は、私が15年以上漢方医学を学んだ中で身につけた「臨床上、陰陽について特に重要な部分」をまとめています。
隅々まで読んで頂ければ、その15年の時間をショートカット出来ます・・・とは言いませんが4,5年位は近道出来ます。
是非、ご活用下さい。
本記事は有料noteです
本記事は、有料note記事になります。
私の方針ですが、私の漢方の師匠先生に教えて頂いた事は「無料」としてブログやTwitterで公開、私オリジナルの考えを反映させたものは「有料」としています。
もし、本記事の無料部分を読まれて「やっぱこの記事は要らないかな。でも、漢方の勉強はしたい。」と思われた方は、私の無料のブログ「名古屋漢方」をご覧ください。
こちらは、私の漢方の師匠先生から教えて頂いた事をそのまま書いています。
ブログ記事だけでも、身につけて頂ければ漢方の中級者以上まで行けますので、手前味噌ですが・・・お勧めします。
本note記事と併せてご参考頂けると幸いです。
さて、本記事の価格ですが、色々と悩んだ末1500円としました。
最終的な理由は以下の4つです。
①勉強会の2分の1の値段
②ずっと使える
③オリジナルの考え
④記事ボリューム
それぞれご説明いたします。
①勉強会の2分の1の値段
漢方の勉強会の値段は、大体が一回3000程度です。高いものだと5000円や10000円のものがあります。
その割に内容が薄いものもたまにあり、コストパフォーマンスの面から見ると結構博打だったりします。
本記事は前半1/4程度を無料部分として公開します。最初の内容をお読み頂いて、ご判断下さい。
②ずっと使える
陰陽の概念は、漢方医学の基本となる考え方です。ですので、漢方に触れる時はいつでも本記事の内容を使う事になります。
③オリジナルの考え
上でも少し触れましたが、note記事では私自身のオリジナルの考え方も入れています。
私が漢方医学を学んでいく中で行き詰まった時、考え考え抜いて出た閃きも沢山あります。
ブログやTwitterではあえて発信していないそれらの情報も、出し惜しみなく書きました。
④記事ボリューム
ブログでもそうですが、私の記事はボリュームが多いです。
自分自身の感覚ですが、大体値段の3倍位の質を目安にしています。
教科書等には中々載っていないお話も色々ありますので、お気に召しましたらご購入お願い致します。
皆様の漢方医学の勉強のお役に立つことが出来ましたら、望外の喜びです。
一般的な陰陽の説明
さっそく、陰陽のお話に入っていきましょう。
まず、一般的な漢方の本に書かれているであろう陰陽の説明は、大体下記の様なものになるのではないでしょうか。
Wikipediaには、陰陽について以下の特徴が書かれています。
Wikipediaの説明は難しく書いてありますので、もう少し簡単に書いてみます。
①陰陽互根(いんようごこん)
陰と陽は陰だけ、陽だけでは存在できず、必ず相手が居て成り立つ。
例えば、「明るい」という概念は「暗い」という概念があって成り立つ、長いという概念は、短いという概念があって成り立つ等です。
陰陽は基本的に互いの「比較」で成り立っているという事です。
②陰陽制約(いんようせいやく)
陰陽は互いにバランスを取る様に動きます。
これは難しいのですが、例えば、病気が治って元気が出て食欲が出ると、身体の組織自体の充実してきます。
気(陽)が充実して、後から血(陰)が充足する動きになります。逆に、元気が無くなり(陽の虚)食欲が無くなると、身体も栄養不良になり痩せてきます(陰の虚)。
③陰陽消長(いんようしょうちょう)
陰陽の偏りについての説明です。「陰>陽」なら陰実即ち陽虚、「陰<陽」なら陰虚即ち陽実となります。
ここのポイントは、どちらかが増えて偏りが出るだけでなく、どちらかが減って偏りが出る場合もあるという事です。
例えば、「陰=陽」となって調和している状態で、陽が減ったら「陰>陽」になります。逆も同じです。
また、陰陽制約の「バランスを取る」と矛盾していると取られるかもしれませんが、これは時間を偏りがある時を切り取った「瞬間」の話です。
時間が経つと、また陰陽のバランスは変わってきます。
④陰陽転化(いんようてんか)
これは、陰陽の変化の話です。「陰極まれば陽生ず、陽極まれば陰生ず。」という有名な言葉がある通り、陰陽どちらかに極端に振れた時、その逆が生まれ成長していくという話です。
例えば、冬至は陰極まる日ですが、その日を境に夏に向かって動き出します。有名な「塞翁が馬」という故事がありますが、それも陰陽転化の話ですね。
⑤陰陽可分(いんようかぶん)
これは、陰陽がそれぞれ分けられますよ・・・というのではなく、陰陽それぞれの中にも陰陽が存在するという話です。
銀河系の中の太陽系、太陽系の中の地球、地球の中の人間、人間の中の臓器、臓器の中の細胞。マトリョーシカ人形みたいに、入れ子構造になっているという訳です。
ここまで、陰陽の特徴について①~⑤まで説明して見ましたが、どうでしょうか。
「多いなあ。一杯覚える事あるよなあ。」って思いませんでしたか?
実はこれが罠で、陰陽の①~⑤の特徴についてはあまり細かく覚えてなくても大丈夫です。「確かこんな事あったよなあ」位で十分です。
逆にこれらの特徴をカッチリ覚えようとして、陰陽に囚われてしまうケースが後を絶ちません。
そういう人を見ると「あー・・・、陰陽に振り回されておられるなあ。」と思ってしまいます。
少し話が逸れました。では、陰陽との付き合い方はどうすれば良いでしょうか?
道「タオ」を身につける
答えは、「道(タオ)を身につける。」という事です。
これは、私自身が言っている訳ではなく、黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)の中の冒頭部に書かれている内容でもあります。
基本的に陰陽というのは比較の上でしか成り立たない概念ですので、それを軸にするとブレてしまいます(余談ですが、修行中、漢方の師匠先生に「ムセキ先生、ブレとんとちゃうん?」とよく言われました。。。)。
ブレない為に、「道」を身につける訳です。
元々、「道」は老子道徳経に出てくる概念で、仏教的に言うと「悟り」、キリスト教的に言うと「愛」という単語に落ち着きます。
「えー!?でも、どうやって「道」にたどり着くかなんて解らない」と思われるかもしれません。
陰陽から「道」にたどり着くにはどうしたら良いのでしょうか?
答えは、3つあります。
①陰陽の変化を冷静に受け止め観察する
②陰陽二つの概念を同一のものとして見る
③何事にも感謝
それぞれ説明していきますね。
①陰陽の変化を冷静に受け止め観察する
これは、上でご紹介しました「塞翁が馬」の翁が行った方法です。悪い事が起こったら「次は良い事が起こるさ。」良い事が起こったら「悪い事の前触れかもしれない」と考えます。
とにかく、生活していて起こった良い事悪い事に気持ちを左右されず、冷静に受け止め方策を考える事が大切です。
大人気アニメに「ソードアートオンライン」というのがありますが、主人公キリトが操る「アインクラッド流剣術」の奥義が「Stay cool.」です。
とにかく「冷静に。」を日頃から心がけて行く事で、漢方の研鑽が自然と出来る様になります。
②陰陽二つの概念を超える
これは少々難しいのですが、出来る様になると漢方の実力が一気に伸びますのでお勧めです。
例えば、美醜という概念を出してみましょう。「美しい」と「醜い」は比較によって成り立つ概念です。
「AさんよりBさんの方が美人だ。」となっていても、「BさんよりCさんの方が美人」となれば陰陽は逆転します。
その様なあやふやな概念に縛られず、「AさんBさんCさんみんなが今生きている事が素晴らしい。美醜なんて些細な事だよ。」と美醜の概念のワンランク上の概念を見つけていく事で、美醜という概念から解き放たれる事が出来ます。
若しくは、「美醜」の対立する概念に共通する事に対し、フォーカスを当てるという手もあります。
例えば、美醜という事は、それぞれがお互いが存在する事で成り立っています。
なので、美醜という概念自体が「存在する」事に意識を集中させるという方法です。
いずれの方法も、とにかく陰陽どちらかの事象に囚われないという事を目的としています。
③何事にも感謝
これは力づくの方法になります。生活していて起こった事が良い事でも悪い事でも、どちらに振れても感謝をします。
そして、周りの人や物事に対して優しく接していきます。
一歩引かないと、感謝も行動も出来ません。この方法でも、陰陽を冷静に捉える事が出来る様になります。
これら①~③のどの方法でも、道を身につける事が出来る様になります。
ですが、正直な事を申しますとこれらの方法どれも少しずつしか効果がありません。ポイントは、これら3つの道を身につける方法をやり続ける事です。
立ち止まるか、少しでも前に進むかで、その後の状態が全然違ってきます。ゆっくりとで良いので、道を身につけて行きましょう。
気付いたら、以前より道が身に着いている事が実感できますよ。
道については、以下の記事にも書いていますので、ご参考下さい。
とにかく、「陰陽に囚われず、陰陽を使いこなす。」これに尽きます。その為に「道」を是非身につけて下さい。陰陽が根底ではなく、「道」が根底です。
陰陽の概念に振り回されず、冷静に対処できる様になることが大切です。
それでは、次から陰陽の使い方を説明していきます。
陰陽の観察
私の漢方の師匠先生が仰っていた言葉の一つに、「漢方上達の近道は、日常のつまらない事を漢方理論で説明する事。」というのがあります。
これはとても大事な事なのですが、いきなりやろうとしても上手く出来ません。私も実際そうでした。
ではどうすれば良いのでしょうか?
答えは、「段階を踏む」という事です。
本記事は陰陽をテーマにしていますので、陰陽に慣れ、分類する事から始めていきます。
上で例に出した美醜の他に、一般的に挙げられるものとして善悪、上下、表裏、左右、明暗等々、様々なものがあります。
その様な概念的なものはすぐに出てきますが、私が大切と思っているのは、もっと身近なものです。
例えば、「ごはんとおかず」です。
これはどちらが陰でどちらが陽でしょうか?
状況に応じて陰陽は入れ替わる事もありますが、この例の場合はご飯が陽でおかずが陰で良いでしょう。
理由は、ごはんを食べるのがメインで、おかずはそれを助けるサブの位置になるからです。
人によってはおかずがメインという方も見えると思います。その場合は逆転します。
要は、どちらが陰でどちらが陽でも良いのですが、明確な理由が説明できるかという所がポイントです。
もう一つ例を出しましょう。一般的な例で上に挙げた「明暗」です。
そのまま「明るいから陽、暗いから陰」でも良いのですが、陰陽を扱う為にはもう少し掘り下げた方が良いです。
高校の化学で熱力学をやったと思います。それと同じ考え方で見てみましょう。
そうしますと、「明」は光を出している(=系自体はエネルギーを失っている)、「暗」は光を吸っている(=系自体はエネルギーを得ている)と捉える事が出来ます。
漢方医学の言葉に、「陰はのぼり、陽は下る。」という言葉があります。これは「陰は陽に向かい、陽は陰に向かう。」という事を言い換えたものです。
実際、夜は朝を経て昼に向かい、昼は夕方を経て夜に向かいます。
その面から見てみても、明暗どちらを陰陽にするかを決めますと、「明」が陽、「暗」が陰という事になります。
「陰はのぼり、陽は下る。」という考え方は非常に、非常に重要なので、ここで覚えておいて下さい。
あともう一つ、例を出します。「左右」です。
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