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スーパー歌舞伎Ⅱ「鬼滅の刃」2024年上演決定によせて

「四代目よ!私の創った物のその上を超えよ!」

これはスーパー歌舞伎Ⅱの一作目「空ヲ刻ム者」パンフレットにある猿翁さんの言葉です。

スーパー歌舞伎は、猿翁さんが三代目猿之助時代に創造し1986年に誕生しました。一作目は「ヤマトタケル」。古典歌舞伎と明治以降に創られた新歌舞伎、両方の良いところを取り入れた「新・新歌舞伎」を創造すべきだ、という考えから始まったそう。

私は三代目の歌舞伎を生で観ていません。初めて観たスーパー歌舞伎は、2012年、当代猿之助さんの四代目襲名興行「ヤマトタケル」でした。私はてっきり、その後の四代目はスーバー歌舞伎シリーズを再構築して上演していくのかと妄想していました。

しかし再構築どころか、2014年に「スーパー歌舞伎Ⅱ」という新たな四代目ワールドを創り出してしまったのです(’スーパー歌舞伎セカンド’と読みます)。

澤瀉屋の精神とは傾く心

あの四代目がお家芸全てをそのままの形で継承していくことはないとは想像してはいました。けれど予想を遥かに超えた’セカンド’という発想に驚き、また、スーパー歌舞伎の精神を継ぎ、進化版として創作をしていく決意に感動したのです。

「空ヲ刻ム者」は作演出に前川知大さん、現代劇から佐々木蔵之介さん浅野和之さん福士誠治さんらを迎え、幕開きは出演者揃って口上という驚きの演出でした。初日のざわつきは忘れられません。

前川氏のことはよく知りませんが、スーパー歌舞伎に寄せた作品作りをなさったのではないかという印象でした。また、主人公が仏師というのは四代目猿之助さんらしいなと。決して派手ではありませんでしたが、希望を見出していく姿は猿之助さんに重なりました。

翌年2015年。二作目「ワンピース」は想像の遥か彼方でした。不安しかない(笑)なんでいきなり漫画のワンピース!?と混乱しました。正直この気持ちは初日まで続き、何だか私まで緊張の日々でした。

初日は着物の方も多く、いつもの歌舞伎ファンの客席だったように記憶しています。空席もありました。一作目の時のような客席のワクワク感もほぼなく(笑)緊張感が漂っていたのが印象的です。予想以上に幕開きから面白かったのですが、お客の気持ちを解放したのが’ゆず’が作った主題歌「TETOTE」にのり、猿之助ルフィが宙乗りをした時でした。

このシーンは、お客がスタンディングでタンバリンを叩いて一緒に歌うまでに進化します。曲を初めて聞く初演初日はそんなことは全くなく。。でも自然と手拍子が起きたのです。

歌舞伎公演では手拍子することはほぼありませんので、自然発生するのは珍しいのです。初演時は女性ヴォーカリストが歌っていました。明るくポップな曲と手拍子、猿之助さんの宙乗りが自然にマッチしたのです。

後日談ですが、この時の手拍子に、猿之助さんは「イケる!」と思ったとか。そのカンは当たり、みるみるうちにチケット入手困難になっていきました。

猿之助さんの演出の手腕は多いに発揮されました。お客の反応で大胆にシーンのカット、演出の変更など。上演時間がかなり短くなり、幻となった場面がいくつもありました。役者さんのSNSの力も大きくて、宙乗りがスタンディングできる場面へと進化していきました。お客も猿之助さんと一緒に歌って大合唱になりました。初めてでもスタンディングして楽しめちゃうのがワンピースだったのです。

大成功で初演の新橋演舞場が幕になり、地方公演が始まると、またびっくり。出演者の変更や、役を増やしたり、Wキャストにしたり。また、劇場が変われば演出も変わる。←これは猿之助あるある。初演を観たからといって安心できないのが猿之助さん。結局、大阪や博多も行きました。

評判が評判を呼び再演になりました。いろんなことが進化しても、ブレなかったのが猿之助ルフィの存在です。自然とルフィには人が集まり仲間ができる。いつしか猿之助さん自身が重なっていました。


三作目は「新版オグリ」疫病が流行る境目で上演していました。三代目のスーパー歌舞伎「オグリ」を新版として上演。隼人さんとWキャストでした。エンディングで出演者と一緒に手踊りをする「歓喜の舞」の演出もあり、これがまた楽しくてクセになりました。

疫病禍になり、南座公演が中止になりました。猿之助さんは、作り手、ファンが残念に思った気持ちを今年8月歌舞伎座の「弥次喜多」で晴らしてくださいました。ラストで突然の「歓喜の舞」!千穐楽ではオグリの劇場で販売していたリストバンドをしているファンも多く、猿之助さん方と踊ることができました。


歌舞伎が大事にしている要素の一つ「音楽」を猿之助流に最大限に拘っているのもスーバー歌舞伎の特徴だと思っています。曲を聞けば、シーンが思い浮かび、その時の感情も心に甦ってきます。また、通常の歌舞伎に比べるとスピーディで、現代語なので芝居のリズムも軽快。そして、猿之助さんはお客に喜んでもらうには何をしたらいいかを常に考えている人。私はいつも驚かされる。驚くけど、変わらない安心もある。根底には歌舞伎を愛する心を感じます。


そして、再来年!
「鬼滅の刃」がスーパー歌舞伎Ⅱとして上演されることが発表になりました。猿之助さんは総合演出&出演。しかも高麗屋の幸四郎さん染五郎さんもご出演です。澤瀉屋からは團子くんも。

歌舞伎化するなら猿之助さんが関わるかな。。とは思っていました。でもスーパー歌舞伎Ⅱとして。。というのはびっくりです。澤瀉屋のお家芸ということになりますし。猿翁さんがスーパーバイザー、脚本は横内謙介さん。いつもの澤瀉屋公演です。

今までは若手の歌舞伎役者さんに囲まれた猿之助さんというイメージ。でも今回は幸四郎さんという同年代、というか相思相愛で弥次喜多コンビが一緒。ひと味違ったテイストになるに違いありません。ただ、主役は團子&染五郎になりそうな雰囲気。私的には猿之助さんに主役をしてほしいのですけど。。セカンドにもいよいよ次世代が到来のようです。

歌舞伎を観たことがない鬼滅ファンの友人たちに「大丈夫なのか?」と聞かれました。自信を持って言えます!「絶対に面白い」。ワンピースの頃より私も成長しました(笑)

今から楽しみです。猿之助さんが創り出すセカンドが大好きです。先代を超えなくてもいい。私にとっては唯一無二。信じる道を応援します。


aya


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