◆DAY6 癒しのタンゴ
*2019年3月11日*
月曜夜プラクティカへ。今日はひたすらバルドッサ→21時過ぎからオーチョの練習。先生と組んで踊っていたら、急に心が決壊して、涙が止まらなくなった。
「もう少し心を解放して」と先生に言われたのが引き金だった。
先生は、今の私の踊り方と、こうして欲しい、という踊り方を比べて、「わかる?」と実演してくれた。
見ているだけだと「うっとり感の違い?」と思うくらいだけど、組んでみるとよくわかる。
心を解放していないときは、機械と踊っている感じ。後者の時は、ふわっと柔らかい空気感に包まれて、気持ちよくてうっとりする。ぜんぜん違う。
でも32年間ずっと、他人に心を閉ざすことを基本姿勢としてきた私が、いきなり心を解放せよ、と言われても難しい。
もちろん先生も、すぐにはできないことがわかって言っている。「でも、意識はしていないと、ずっと変わらない」から指摘してくれる。
「解放するコツは?」と聞いたら、「開き直り(マリア・ニエベス先生のレッスンで、アブラッソを教えるために縄で縛られた話をしてくれた)」と言っていたけど……緊張しても動揺を見せず、悟らせず、というのはわかる……けど、心の解放とは??……わからない。
タンゴ=コミュニケーションとすると、心を解放していないということは、相手とのコミュニケーションを最初から諦めること。意識がパートナーでなく、「あちら」にいっていて、パートナーからしてみれば「誰と踊っているんだかわからない」状態。
人とのコミュニケーションがうまくできない……自分の内面の痛い部分を突かれて、涙腺が崩壊したんだと思う。
そんな私を見て、ハルティーナさん(一緒にレッスンを習っている女性)が「おどろ?」とニコッ。今は踊れない、というと、「動くだけでいいから」とフロアに連れ出してくれた。
最初の1曲目はほんとうにアブラッソだけ。音楽で揺れるだけ。でもなんてあたたかくて大きくて優しいんだろう。
どんな言葉よりも、急速に心があたたかいもので満たされていくのわかる。
次の3曲はハルティーナさんのリードでバルドッサのみで踊った。
クローズドで、ほとんど鼻をくっつけるようにして踊った。私の涙が彼女の顔に、彼女の頬が私の顔に触れて、二人の境界線がなくなったかのような感覚。彼女から、「生」が直接流れこんでくる。
1タンダ終わったときは心のもやが晴れてすっきりした気分だった。
タンゴは愛と癒しでもあるんだ、と知った。
ハルティーナさんとは顔を合わせるのは数回目で、お互いのプライベートの話も、そこまでしたこともない。よく知らない私を、愛で包んでくれる。とにかく大きい人。
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その後、少し持ち直してから、呼吸のレクチャー。いまだに呼吸がうまくできず「スーハー」が不自然に、スターウォーズのR2D2みたいになる。
先生は、アブラッソして、動かずに、胸の動きだけで音楽に合わせてリードしてくれた。胸のリードだけでも色々な表現ができることを教わる。
今はまだリードされるがままだけど、それを将来的に自分の動きで表現できるようになれば、「単にステップを踏むだけの機械」ではなく、「いいタンゴを踊る」ということなのかな。そんな風に踊れるようになりたい。
落涙後のタンゴはあまり何も考えられず、踊るのも怖いくらいだった……。そしたら「まかせておきなさい」とたけし先生。
まかせろ、その言葉に安心する。
これだけ男女平等が進んだ今の時代でも、タンゴの世界は「男がリードする」のがルール。女は従うけど、それは従属ではなく、心地よく身を任せながら、その中で自分をいかに表現できるかということなんだろう。
タンゴではきっと、男も女も素直に「男(女)でよかった」と思えるような気がする。
今日の練習は、「いやでも自分に向き合う必要がある」タンゴの怖さを思い知らされたレッスンだった。