◆DAY34 反転する世界


*2019年6月8日*

土曜日。午後から義母とピアノのコンサートへ出かけ、その流れでご一緒したご婦人方とお食事へ。年に何度かお会いする、鷹揚な気のいい人達だけど、心の接点を未だ見つけられない。一番若年の私は、正直かなり気を遣う。

会食がことのほか早く終わり、場所もLOCAから近かったので、少し寄って帰ろうとタクシーに乗った。気分をリセットしたかった。幸い、タンゴシューズは持っている。最近は用事があっても、ミロンガへ寄れる可能性が少しでもあればタンゴシューズを持ち歩くようにしているのだ。

いつもの階段を登り、赤い部屋へ入る。その瞬間、急激に心拍数が上がり、息切れがして、ソファに倒れるように座り込んだ。

何が起こったんだろう。息ができない……。

苦しい。わけもわからず涙が出る。

あまりにも心と体がバラバラで、意識がついていけない。

過呼吸の症状だった。
忘れていたくらいに久しぶりで、怖かった。

いきなり来て涙を流しながら喘いでいる女……まさに"LOCA(狂った女)"。

普通だったらかなり引くと思うけれど、LOCAには肝の座った人が多いから、いちいち騒いだりしない。何も聞かずに抱きしめてくれ、息を整えさせてくれた。

おかげですぐに落ち着いたけど、その後も茫然自失。

「いい奥様」モードからタンゴモードへと、いきなり世界が反転したから、心が順応できなかったのかもしれない。

思っている以上に、体は正直だ。

そんな不安定な状態じゃとてもタンゴなんて踊れない。自分すらコントロールできない人が、人と向き合えるはずないもの。

誰も誘わないでね。

と思っていたら、あえて壁を乗り越えてくる人っているんだよね。
Hくん……しかも断りづらい強引な誘い方。

しぶしぶ立ち上がり、動き始めてみると……彷徨っていた心が、タンゴの世界へと誘われた。
もしHくんが無理にでも声をかけてくれなかったら、この日はそのまま、心の整理がつかないまま帰っていただろう。

彼の強引さに救われた。

そのあとのたけし先生のリードも優しかった。
力が入らなくて、ふにゃふにゃでもちろん踊りは全然なってないんだけど、身を任せていることで、心が解きほぐされていった。

滞在時間1時間強。2タンダだけ踊って、23時前に退出。嵐のようにきて、空気を乱していくのは申し訳ないなと思いながら。

それにしても過呼吸になるなんて、よほど何かがストレスなんだろうか。

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