ドラクエ考察「天空シリーズのドラゴラム」



天空シリーズのドラゴラムについて

ドラクエシリーズにおいてはドラクエ3から登場した使用者をドラゴンの身体に変える「ドラゴラム」の呪文。
その「ドラゴラム」であるが天空シリーズのドラクエ4のドラゴラムで発動するブレスは「はげしいほのお」を発動し、FC版ではメタル系にダメージを与える事ができる。
またドラクエ5では同様の効果であるがそもそもの「はげしいほのお」の効果自体が「80~100」から「65~85」と低くなってしまった。
またSFC版ではメタル系にダメージは与えられるものの確定ではなくなっている。

天空シリーズの最後に発売されたドラクエ6のドラゴラムは基本職の魔物使いのマスター時に習得できる呪文だが過去作に比べるとどうしようもなく弱体化されている。
「火炎の息」でダメージは「30~40」。
「氷の息」で「50~60」。
ドラゴラムで変身後は時期を考えると攻撃力が上回っていることが多いため通常攻撃をしてくれればボス戦で使えなくはないがドラゴラム状態ではAI戦闘となり、命令を聞いてくれない。
作品を追うごとにかなりつかいどころの難しい呪文になったと言える。

ドラクエ6のドラゴラム


ドラクエ6において過去作より弱体化しているとはいえ「MP消費なしで全体攻撃ができる」というのはダメージ的にも物語中盤あたりなら本来なら十分使える呪文だ。
しかし転職システムの関係で強力な攻撃手段が増え、特に同じく基本職である武道家の「回し蹴り」や「せいけんづき」もあるし、魔法ではあるが魔法使いで一度戦闘をさせるだけで覚える「メラミ」もある。
上級職に目を向ければ「しんくうは」や「がんせきおとし」などもある。

攻撃手段が限られていたムドー戦前に覚えることができれば活躍できたかもしれないが転職が可能になってからわざわざドラゴラムを唱える必要性というのは通常プレイではほとんどない。
ましてや物語後半になればより強力なブレスを習得できる「ドラゴンのさとり」やそもそも最初からドラゴンの職業についている「ドランゴ」を仲間にできる。

プレイヤーからすると難易度調整を食らってだんだん使いづらくなっていってるという印象を受けるドラゴラムではある。
しかし実際の所は天空シリーズにおいて一番新しい作品ではあるが一番時系列的に古い作品という事。
つまりそこに単なるゲーム的な「難易度調整」ではなく「天空シリーズ」の歴史においてはドラクエ6で「ドラゴラム」という呪文の基本が確立され、ドラクエ4でドラゴラムはパワーアップした、という事になる。
そしてドラクエ5では「ドラゴラムが弱体化」したのではなく「はげしいほのお」が弱体化した。
これについて考察したい。

何故ドラクエ6のドラゴラムは「はげしいほのお」が吐けないのか


天空シリーズの世界においてはドラクエ6でドラゴラムという呪文の概念が誕生した。
何故ドラクエ6のドラゴラムは弱いのか。
結論を先に行ってしまえば「人々はそれが最強の息攻撃だと思っているから」だ。

プレイヤーからすると味方側がドラゴンに転職できるし、魔王を含めた様々なボスと戦うからメタ的な視点で「ブレス系は4段階」である事を知ることはできる。
ところがこのドラクエ6のメインの舞台となる「上の世界」と「下の世界」。
ざっと調べる限り、「上の世界」と「下の世界」に登場する「ボス以外の雑魚モンスター」で「かえんのいき」「こおりのいき」をを超える上のランクのブレスを吐く者はいない。
「はげしいほのお」「しゃくねつ」「こごえるふぶき」「かがやくいき」を使用するモンスターは「はざまの世界」、もしくは「裏ダンジョン」に出現する雑魚モンスター、もしくはボスとなっている。

ドラクエ6の世界の人間からすれば「ブレス系は2段階」まで存在しない事になっている。
「炎系ブレス」は「ひのいき」か「かえんのいき」
「氷系ブレス」は「つめたいいき」か「こおりのいき」。
その二種しか二つの世界には存在しない話になっているのである。
そしてドラゴラムはあくまで「ドラゴンになる呪文」であり、「ブレスをはけるようになる呪文」ではない。
そのためドラクエ6におけるドラゴラムというのは「上の世界」「下の世界」ともに存在し、一般的な人々の認識できる上で最上級のブレスである。

何故ドラクエ4、5のドラゴラムは「はげしいほのお」を使用できるのか。

ドラクエ4においてはドラゴラムの吐く息は「はげしいほのお」になっている。
コレも上記と同様にドラクエ6の事を考えると「はざまの世界」に出現するのは「はげしいほのお」を使うモンスターとして「じごくのほのお」しか存在しない。

デスタムーアを倒し、はざまの世界から元の世界に戻った人間達により「最強のブレス」として「はげしいほのお」の概念が現実世界、そして夢の世界にも持ち込まれた。
「狭間の世界」という異世界に誘拐された事、そこに存在する現実世界にも夢の世界にも存在しない強力なモンスター。
その恐怖が強烈な「悪夢」となり、その「悪夢」の「夢の力」によってドラクエ4になるまでの間に「ブレス」の概念に加えられ、ドラゴラムで吐くブレスは「はげしいほのお」となったと解釈ができる。

何故ドラクエ4~ドラクエ5で「はげしいほのお」が弱体化したか。


ドラクエ4からドラゴラムの吐くブレスはドラクエ5で弱体化した。とはいえこれはドラゴラムが弱体化したと言うより、ドラゴラムで使用されるブレスそのものダメージが弱体化している。
そこで重要なのは4の世界で登場した最強クラスの剣「はぐれメタルの剣」の存在だ。
はぐれメタルの剣は攻撃力120。しかも「メタル系に確定2ダメージ」。
一点物の剣である。

「はぐれメタルの剣」の製造法には
・死んだはぐれメタルが特殊な金属の塊となる。
・この特殊な金属を集めドラゴラムのブレスを三日三晩拭き続ける
・そして魔法のハンマーで一か月鍛え続ける。

勿論、最強クラスの剣は皆が欲しい。
プレイヤーだって装備可能なキャラ全員にはぐれメタルの剣を持たせたい、思ったことがあるだろう。

しかもドラクエ4の装備可能キャラを見る限り、はぐれメタルの剣と同様に最強クラスの武器と比較すると明らかに戦闘向きではない「太った中年男の商人トルネコ」「細身の女の占い師ミネア」でも装備できると性別、体型問わずでかなり制限が緩い。
つまりはドラクエの世界のキャラなら子供や老人を除けばほぼ「誰でも装備できる」と言っていいのだ。
だからそれをつくるために多くの者がドラゴラムを習得しようし、そしてその結果はぐれメタルの乱獲された、という事は察しがつく。

結果としてドラクエ4から5の間にドラゴラムのブレス系特技に耐性を持った特別変異、はぐれメタルだけが生き残った。
加えて言えばドラゴラムははぐれメタルだけに限らず他のモンスターにも使用される事も含めるとはぐれメタル同様に耐性をもたないモンスターが淘汰された。
これは現実の世界でも似たような事が起きている。
農作物の栽培において散布して病気や害虫を殺す殺菌、殺虫の農薬。
それに対して耐性を持たない者は淘汰され、耐性を持つ厄介な病気や害虫だけが生き残る、というような物だと考えれば別におかしな話ではない。

そうしてはぐれメタルの剣を作るために多くの者がドラゴラムを取得するようになり、はぐれメタルの乱獲と自然淘汰によってブレスへの耐性をもった特別変異が生まれた事により4→5でドラゴラムは弱体化したのではないか、と考えられる。

またドラクエ5ではドラゴラムは人間では「女の子」のみが習得可能、そしてアイテムで「ドラゴンの杖」とかなり限られている。
ドラクエ5の主人公は歴代ドラクエでも異色の「魔物使い」でありプレイヤー視点からは仲間モンスターの「ブレス系」があるからさほどドラゴラムの必要性や希少性を感じないかもしれない。
しかしドラクエ4では「導かれしもの」とはいえ、特別な血筋を持たない「踊り子マーニャ」が取得できた呪文であるのに対して「天空人」と「エルヘブン」の血筋を引き継いだ「女の子」のみが習得可能となっている。
そのためもしかすると「ドラゴラムによるはぐれメタルの乱獲」という生態系の変化を重く見たマスタードラゴンが習得条件に制限を掛けた、というのがドラクエ5で使用者が限られる理由かもしれない。

何故ドラクエ4、5のドラゴラムは「凍える吹雪」が使えないのか。

ドラクエ6におけるブレス系特技は「炎」とそしてその対になる「氷」の二種類ある。
そして実は「はざまの世界」には「こごえるふぶき」を使う存在としてブースカが存在する。
同じ狭間の世界にいるのに何故「はげしいほのお」だけが現実世界に渡ったのか。

その理由は簡単でブースカが登場するのは狭間の世界でもラストダンジョンである「ムーアの城」のみ。
しかしラストダンジョンとなると「狭間の世界」でも最奥。
実質的にブースカを見た者の中で生きて帰れた者は主人公達だけと言っていい。
主人公、ハッサン、ミレーユ、バーバラ、チャモロ、テリー、(あとアモス)
はたしてたった6人(7人)の目撃情報で二つの世界に跨る呪文である「ドラゴラム」の呪文の概念を変更できるか、と言えば難しい話だ。

余談

行ってしまえば今回の考察は小ネタであるが天空シリーズでは時系列で最古となるドラクエ6に「夢の世界」と「現実の世界」が存在する以上、単に難易度調整というプレイヤー側の視点だけでなく、こうした経緯が呪文や特技一つとっても弱体化、あるいは強化された歴史がゲームシリーズに存在すると考えられる。

つまりコレはドラクエ6、そして天空シリーズにおいては「夢の力」において「元々あった概念」すら上書きされる。
「ホイミン」という「モンスター」が「人間」になったように、「呪文」や「特技」さえその対象という事。
そして「空飛ぶベッド」や「魔法のじゅうたん」が存在し、「勇者」という職業すら「人々の夢と希望の結晶」というような解釈がある。
つまりドラクエ6で考えるとそれは「生物」に限らず「アイテム」や「職業」も例外ではない。

そんな風に考えてみる事で面白い考察ができるのではないだろうか、と思って現在色々考察中。

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